映画レビュー1004 『ザ・ギフト』
今回はネトフリ配信終了シリーズですが、これもずっと観たかった一本。
僕の中では完全に「キンキーブーツのダメ若社長」イメージであるジョエル・エドガートンが初めて監督・脚本を担当(と同時に出演)した映画なので興味がありました。果たして…。
ザ・ギフト
ジェイソン・ベイトマン
レベッカ・ホール
ジョエル・エドガートン
2015年8月7日 アメリカ
108分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

思ったのとちょっと違った…けどその分リアルでこれはこれで良い。
- 幸せ夫婦の引っ越し先で旦那が同級生と再会、交流が始まる
- 少し変わった人間ながら悪いやつではなさそうなものの、やっぱりちょっと気持ち悪い
- 彼の怪しさが徐々に高まるにつれ、明らかになる事実が…!
- 地味だけどよく出来てます
あらすじ
ということでジョエル・エドガートン初監督作品。脚本も書きつつ当然自分も出演しているという多芸ぶりを発揮しております。世間的な評判も上々のようで、このあとの監督・脚本・出演作(ある少年の告白)もまたかなり評判がいいそうなのでおそらく才能がある方なんでしょうね。今後も期待です。
この映画は僕としてはやや地味でもう一つ盛り上がりに欠けるかなという気がしたんですが、ただ内容自体は良く出来てるし良い意味で想像を裏切られた面もあり、観て損はしない映画だとは思います。
主人公のサイモン(ジェイソン・ベイトマン)は物語開始時点でセキュリティ関係の企業に転職しまして、それに伴い奥さんのロビン(レベッカ・ホール)とともにとある家に引っ越してきたところから物語が始まりますよと。
元々サイモンはこの辺に住んでいたようで、Uターン転職的な感じでしょうか。都内に引っ越して働いてたけど転職で地元に帰ってきたよ、みたいな。
引っ越し=いろいろ買い揃えないと、ってことで買い出しに行っていたところ、ある男性から「…サイモンだよね?」と声をかけられます。最初は思い出せなかったサイモンも、「ゴードンだよ」と名前を告げられ記憶を取り戻したようで、「おー久しぶりだなー! 今度遊びに来いよ!」ってな感じでお家にご招待するわけです。学生時代のお友達だったようで。
それ以降ちょくちょくと玄関先にちょっとした贈り物が置かれていたり、いきなり池に鯉が放流されていたりと「ありがたいけど気持ち悪い」プレゼント攻勢を受けるサイモン夫婦。ロビンは「いい人よ?」とゴードンをかばうように振る舞いますが、サイモンは「絶対なにか企んでる。避けるべきだ」と次第に嫌悪感を顕に。
こうしてギクシャクし始めたサイモン夫婦とゴードン。それでも続くザ・ギフト…! 果たしてゴードンの目的は、そしてサイモン夫婦の命運やいかに…!
予想に反してホラー感薄め
みなさん「お前の予想なんて知らねーよ」とお思いでしょうが、きっと予告編やジャケットを観た人たちはもっと不気味でホラーみの強い映画なんだろうと予想してたと思うんですよ。なんなら僕はもしかしたらグロ映画なんじゃないかと思って事前に「グロくない??」って聞いてましたからね。
ところがグロさは皆無で、精神的な怖さはもちろんあるものの、ホラーというよりはリアルご近所さんトラブル的な至って生々しいお話でした。
むしろ(贈り物に生首入っててイヤー! 的な)ただのホラーよりも全然あり得そうな話なのでそこが良いなと思いつつ、ただリアルが故に大きな衝撃もなく、じわじわと「なるほど…こういう話ありそうだな…嫌だな…」と染みてくるような感じが良くも悪くも地味なので、今ひとつピークがなかったかなぁという印象です。良く出来てるんだけど面白いかと言われると微妙だな、みたいな。
いやまあ面白かったんですけどね。ただ後でじわじわ来る系の映画なので、わかりやすく目立った面白さみたいなものは薄く、「初監督・脚本作品なのに随分と渋い映画作ってきたね」というような。いや渋いっていうのもちょっと違うか…。でもそんな感じ。(どんな)
まあでもよく自分の役柄を「クラスに1人はいそうなちょっと気持ち悪いタイプ」にしたなって話ですよ。これ役を(ジェイソン・ベイトマンと)逆にしてたらだいぶ印象が違うし、その辺良い意味で変でいいなと思います。ジョエル君。
良く出来てるけどもう一つ盛り上がりが欲しい
中盤まではおそらく誰もが「まあ確かに気持ち悪いけどさぁ、かと言ってサイモンはちょっと当たり強すぎるし彼は彼でどうなの」と感じるんじゃないかと思うんですよ。
その辺の種明かしというか、なぜサイモンはゴードンを毛嫌いしているのか…要は過去の話がキーになってくるわけですが、その辺の見せ方、展開の仕方はなかなかお上手で、そこから一気に最後の「そう言う話なのね」と理解するまでの脚本はなかなか良く出来ているんじゃないかと思います。
最後まで観れば「再会」からのゴードンの動きの理由がわかってくるし、それに対してのサイモン夫婦の反応についてもいろいろと思うところが出てくるので、「後からわかったことで全体の理解が深まる」作りも良いですね。…と振り返れば振り返るほどよく出来てるなと思うんですが、いかんせん今ひとつ盛り上がりに欠けたのは…やはり初監督作ということもあるんでしょうか。詳しいところはわかりませんが。
とは言え逆に言えば初監督(おまけに脚本まで書いて)これだけのものを作ったんだからやっぱりジョエル君すごいよなとも思うわけです。見た目の派手さに頼らず、実力勝負な感じの内容だし。
ぶっちゃけジョエル・エドガートンという人は(常に主役を張るような)一線級の俳優とは言えない微妙なポジションの人だと思うんですが、そろそろ性格俳優的に脇役としての重みを増していくのかそれとも…的な状況の中、制作側で実績を積んで生き残っていくというのはなかなかしたたかでおまけによく出来てるしとなると、これはもしかするともしかするんじゃないか、第二のベンアフ的なポジションに行くんじゃないかという気もします。もしかすると。ベンアフはもっと主役よりの人ですけどね。
脚本も書くとなるとさすがにクリント・イーストウッドのようにザクザク撮ることも出来ないとは思いますが、脚本も書くからこそひょっとしたら今後すごく重要な作家の一人となる可能性も感じる、そんな一本でもあるかなと。
前から観ている俳優さんが活躍の幅を広げるのは嬉しいし、楽しみが増えて良いですね。僕も期待したいと思います。
このシーンがイイ!
終盤のネタばらしのシークエンスは見事だと思います。
ココが○
こういう話、どっかにあってもおかしくない気がする…というぐらいに生々しいお話な点。いろいろ言っちゃうとネタバレになるので言えませんが、やっぱり“生き方”って大事だな、と…教訓を感じるような話だと思います。
あと細かい部分ですが、昼のシーンが多いのが良いなと思いましたね。煽り気味なシーンでも昼っていうのが。夜で怖がらせるのは安易だぜと。
ココが×
やっぱり思っていたよりも地味な映画ではあるので、もう一歩盛り上がりに欠けるのは否めないかなと。決定打に欠ける的な。
MVA
ほぼメイン3人のお芝居で…どなたも良かったんですが…うーん、この人かなぁ。
ジョエル・エドガートン(ゴードン役)
怪しさ満点の同級生。
まあ本当に上にも書きましたが、初監督作品でようこんな怪しい役をやったよねという点で良いんじゃないかなと。
役者としてもこっち路線に舵を切るんでしょうか。その方が幅が広くなりそうな気はする。
いずれにしてもいい感じに気弱そうだけど怪しい人柄が感じられる良い演技だったと思います。