映画レビュー1003 『深夜の告白』

今回はネトフリではなくBSプレミアムより。

僕の中でビリー・ワイルダーはトップクラスに「外さない」監督なので、放送がわかった時点で狂喜乱舞しましたよ。裸で。

深夜の告白

Double Indemnity
監督
脚本

レイモンド・チャンドラー
ビリー・ワイルダー

原作

『倍額保険(殺人保険)』
ジェームズ・M・ケイン

出演

バーバラ・スタンウィック
フレッド・マクマレイ
エドワード・G・ロビンソン
トム・パワーズ
ジーン・ヘザー
バイロン・バー
ポーター・ホール

音楽
公開

1944年9月6日 アメリカ

上映時間

107分

製作国

アメリカ

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

深夜の告白

ファム・ファタールものの大傑作では!

9.0
保険金詐欺に手を染めた保険外交員の独白
  • 敏腕保険外交員が一人の人妻に出会い、罪を犯す
  • オープニングで自らの犯罪を語り始め、それを振り返っていくスタイル
  • 犯人がわかってるから面白くないんじゃないの、と思いきや…!
  • 見応え満点大満足

あらすじ

今となっては珍しくない、いわゆる「倒叙型」と言われる「最初に犯人がわかっている」ミステリーの古典的名作だそうです。古畑任三郎なんかもそうですね。

深夜、蛇行しながらのひどい運転でやってきた車があるビルの前で停まり、男一人が中に入っていきます。

どうやら彼はここに勤務する人間らしく、顔見知りの警備員に言葉をかけつつ、自らが働くオフィスへ。

彼はオフィスの一室で録音機に向け、語り始めます。「君はどんな不正も見抜く優秀な人間だが、あの保険金詐欺の犯人の見立てについてはミスを犯した。あの犯人は私だ」

彼はその保険金詐欺の実際を語りつつ、保険金の受取人であった一人の人妻との出会いの話を始めるんですが…まああとは観て頂いて系で。

難航した脚本でも傑作になる不思議

監督としてのビリー・ワイルダーとしては3作目、初期の映画ですね。ちなみにモノクロです。

ビリー・ワイルダーは脚本も兼ねていますが、もう一人脚本家として名を連ねているのが「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」でおなじみのレイモンド・チャンドラー。

なんでもレイモンド・チャンドラーは原作者であるジェームズ・M・ケインの作品が大嫌いでやたらこき下ろしていたそうですが、結局は報酬のために請け負ったとか。

さらに当時初老だった彼とまだ若かったビリー・ワイルダーは正反対のタイプで共同執筆もいろいろと難航したそうですが、結果これだけの傑作が出来上がるんだから世の中はわかりません。

いつもワイルダーの映画はセリフがおしゃれだなぁと思うんですが、今回もそのおしゃれさを感じさせつつ、緻密な展開にレイモンド・チャンドラーの功績が見て取れる…のかもしれませんがよくわかりません。面白かったからいいじゃない。

犯人がわかってても面白い

話としては、今となっては珍しくない「妻が旦那に保険をかけて殺害、保険金をせしめる」犯罪がベース。そこに保険を知り尽くした外交員が彼女に惚れてしまって共犯になる、という形で、オープニングに「深夜の告白」をしていたのがその共犯者である外交員、ウォルター・ネフです。

もう本当に構図としては(当時は珍しかったとは言え)ありきたりだし、おまけにオープニングで「自分がやったよ」と言っているのでドキドキもしない…はずなんですが、展開の秀逸さもあってかなり見応えのある傑作でしたねぇ〜。

ちなみに「深夜の告白」は邦題で、原題の「Double Indemnity」は訳すと原作の「倍額保険」という意味になります。

「倍額保険」とは、この物語内の保険(実際この頃そういうものがあったのかはわかりません)において「危険性が低い鉄道での死亡事故の場合、保険金が倍額支払われる」といういわゆる特約みたいなもののことで、これを利用した二人が描かれるということになります。要は欲張っちゃったわけですね。

「深夜の告白」は本当にまんまなタイトルではありますが、ただその文言自体に何やらただならぬ雰囲気が感じ取れる面もあって僕は結構好きですね。むしろ原題の方が味気がない気がする。

これぞファム・ファタール

とかく犯人の二人の関係や真実へ至る過程に注目しがちな話ではありますが、ネフとその上司にあたるキーズの信頼関係、友情関係のようなものもなかなかいいスパイスになっていて、「ありがち設定かつ犯人がわかっている話」という入り口から想像もできないような奥行きのある見応え満点映画という素晴らしさ。

歴史的にもフィルム・ノワールの古典的傑作として評価されているそうで、もっと言えば「一人の女性によって身を滅ぼす」ファム・ファタール映画としても同様に古典的傑作と言っていいと思います。1粒で2度美味しい的な。

古い映画らしく登場人物も少ないので理解しやすいし、モノクロ故に映像面でも情報量が少ない、至ってシンプルな映画と言っていいはずなんですが…ここまでの見応えを感じるのはある意味衝撃で、相変わらず「ビリー・ワイルダーすげぇ」と感嘆せざるを得ません。

なお、この映画が面白かった人はぜひ「ミルドレッド・ピアース」も観て欲しいなと思います。同じモノクロ古典サスペンスの傑作として、古い映画の良さを知るいい2作になると思いますよ!

深夜のネタバレ

大した話じゃないですが、一応ネタバレになるのでここに。

ご多分に漏れず僕は序盤に二人がお互いを求め始めたのを見て「は? なんでこの段階でいい感じになってんの?」って引っかかったんですよね。

僕は男なので、相手の女性が好みなのであれば、ある程度向こうからモーションがかかってきた時点で“その気”になっちゃうのはよくわかるんですよ。ここに奥さんがいたり彼女がいたり、っていう条件が加わればまた別だと思いますが、ネフは独り身だったし「夫と別れて一緒になりたい」って雰囲気を出されちゃったら(自分がそうするかは別として)そっちに転がっていっちゃうのも無理はないかなと。だから理解はできるなと。

ただフィリスの方はまったく納得できなかったわけです。いくら虐げられているとは言え、いくらなんでも火がつくの早すぎない?? って。最近知り合った保険外交員にいきなり「一緒になろう」ってなるか?? って。

それが最後まで観れば納得ですよ。最初から利用するつもりだったのであれば、「惚れた」感が早いのも頷ける。

普通に考えれば当たり前なんですけどね。「利用するために近づいてきたんだろ」って。でもそう思わずに飲まれていっちゃうのが男の悲しいサガですよ。

何が言いたいのかと言うと、これでもし「最初から本気で一緒になりたかった」みたいなロマンスっぽい話になっていったら多分クソだなと言ってたと思うんですよね。そうではなく、利用するつもりが(ついに)フィリスにも情が湧いた、であれば許せるなと。

その割に段々悪女の面を隠さなくなってきたじゃねーかとか思う部分もあるんですが、ただ「吊り橋効果」でもないけど、一緒に殺人を犯した人間として…どこか離れがたい感情を持ってしまったのも確かなんでしょう。

その辺りの感情の機微が伺えるシナリオだったのも良かったと思います。

ところで…フィリスとニーノは浮気関係だったのか…そこが少し気になりました。でもそうでもなければそんな頻繁に家に来ないよなぁ…。

このシーンがイイ!

陰影のあるシーンはどれも印象的で、改めてモノクロ映画もいいなぁと思ったわけですが…。一つ挙げるならキーズがウォルターの自宅を訪ねるシーンかなぁ。

これまたありきたりなシチュエーションではありましたが、緊張感が良かったです。

ココが○

全体的にすごくレベルの高い映画だと思いますが、特に脚本はさすがですね。セリフの良さは今どきなかなかお目にかかれないものだと思います。

ココが×

今となっては使い古された内容というのが、観る人によっては引っかかるかもしれないとは思います。

それでも僕は面白いと思ったので、そうヤワな脚本ではないとも思うんですが。

MVA

キーズ役のエドワード・G・ロビンソンがさすがの名演でとても良かったと思いますが、それでもやっぱりこの人かなぁと。

バーバラ・スタンウィック(フィリス・ディートリクスン役)

犯行の「動機」を作った人妻。

あんまり書くとネタバレになっちゃうので書きませんが、この役を見事に体現した演技力がとても良かったですね。

ちなみにご本人はとても性格の良い方だったそうで、その辺と演技との云々含めて素晴らしいなと。

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