映画レビュー0617 『ロング・グッドバイ』

BS録画より。結構古い映画ですが、なんとなく録画して、なんとなく観てみました。

ロング・グッドバイ

The Long Goodbye
監督
脚本
原作
『長いお別れ』
レイモンド・チャンドラー
出演
ニーナ・ヴァン・パラント
マーク・ライデル
ヘンリー・ギブソン
ジム・バウトン
音楽
公開
1973年3月7日 アメリカ
上映時間
112分
製作国
アメリカ

ロング・グッドバイ

ある日の夜中、探偵のフィリップ・マーロウの元に、友人のテリーがやってくる。今すぐメキシコへ送っていってくれないか、と頼まれたマーロウは、頼まれるまま彼を送り届けるが、その後警察がやってきて、テリーが妻殺しの容疑者であることを告げられ、彼を匿った容疑で連行されてしまう。数日の取り調べの後、「テリーが自殺したから釈放だ」と告げられたマーロウは、釈然としないまま、とある女性から、夫である小説家の捜索を頼まれる。

雰囲気探偵もの。話はともかく、なんかイイ。

7.5

レイモンド・チャンドラーの同名小説(長いお別れ)が原作の映画。

この主人公、フィリップ・マーロウはかなり有名なキャラクターらしいんですが、当然ながら無学の自分は知らず、また当然ながら原作は未読なわけです。が、鑑賞後に調べて「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」のセリフの人、と聞いてハッとしました。このセリフは知ってます。なんかカッコイイぜ、と記憶にとどめていました。なるほど、その人でしたか…。

このセリフほど…なんというかキザな感じではないんですが、しかしどうして、決して二枚目とは言えない若かりし頃のエリオット・グールドが演じるこのキャラクター、なーんかカッコイイんですよね。見た目以上にカッコイイ。少し達観した雰囲気がありつつ、少し力の抜けた、イキっていない佇まい。それがなーんか惹かれるという。この雰囲気、今の役者さんではあんまり観ない気がするなぁ…としみじみ見入ってしまいました。

エリオット・グールドと言えば、やっぱり僕の年代では「オーシャンズ」シリーズのルーベンなわけですよ。カジノ経営者のお金持ち、「13」で倒れちゃったあの人。僕が観た古い映画だと「カプリコン・1」にも出ていましたね。ぜーんぜんかっこいいイメージがなかったんですが、しかしどうしてこの映画での彼はなんかカッコイイ。シブい。不思議な魅力を持った人でしたねぇ。

そんな彼を主人公に、イメージ的にはハードでボイルドな探偵映画なんですが、まず最初に思ったのが「探偵物語っぽいな」というふわっとしたイメージ。そもそも探偵物語自体リアルタイムで観ていたわけでもないので、本当に断片的に記憶している印象がなんとなく近い、っていうだけだったんですが、実際松田優作はこの映画から影響を受けて探偵物語を作ったらしい、という話も鑑賞後に知り、なかなかやるじゃん俺、みたいな。

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んで、ですね。

正直、サスペンス的にはイマイチというか…話の流れがあんまりピンと来なかったんですよね。少しの手がかりを元に段々と真相に近づいていく…という感じではなく、なんとなく流れで幾つかの要素がつながっていく感じ、というんでしょうか。

描かれる内容も、事件云々よりも人物描写が主で、もっと言えばマーロウの日常を観てるだけ、みたいな感じで。事件とは直接関係のない猫とか隣人の話が印象的だったり、絡んでくるチンピラもどこかお人好しっぽさがあってイマイチ深刻さがなかったり、そういう諸々の世界観を観ていると、これはやっぱり事件よりも「フィリップ・マーロウその人とその世界を味わう」感じが主なのかな、という気がして。

で、途中でふと思ったのが、「インヒアレント・ヴァイス」の元に位置する映画なんじゃないかな、ということ。

あの映画で感じた「雰囲気探偵映画」の元祖、みたいな感覚。主人公がすごく敏腕というわけでもないし、物語の中心に事件が位置するわけでもない。ただ主人公が日常を送っていく中で、少しずつ話が進んでいく物語という感じ。

となるとあんまり良くない…かと思いきや、「インヒアレント・ヴァイス」と比べると僕は断然こっちの方が好きでしたね。なんだろう…70年代のかっこよさ、みたいなものもあるとは思うんです。オープニングに出てくるクラシックカーがもうすでにかっこいい、みたいな。

マーロウが住むペントハウスもなーんか味があってよかったし、エレベーターまで雰囲気あるし。「インヒアレント・ヴァイス」も舞台は70年代でしたが、こっちのリアル70年代とはやっぱり違うのかな、と。

そして何より、ただのヤク中だったあっちの主人公と違って、とにかくマーロウはカッコイイ。脱力したかっこよさみたいなものがすごく良かったんですよね。そこが大きかったのかなぁ、という気がしました。古い映画の割に、オープニングから一貫して観ていたくなる魅力があったというか。猫もかわいかったし。ことごとくかかる「ロング・グッドバイ」の曲も良かったし。

結局大したことは書いていないわけですが、雰囲気映画なのでそれもまたやむなしじゃないですかね、ということで。ただつまらないわけではない、むしろ面白かった方なので、結構不思議な感覚の映画ではありました。こういう雰囲気の映画に惹かれる人、少なく無いんじゃないかなぁと思いますが、ただなんとなく…女性向きではない気はします。多分、この映画のかっこよさって男の自己満足的なかっこよさな気がする。

そもそもこのマーロウがかっこいい、って思う時点でオッサンな気もするし、なんだか複雑な気持ちでもありますが、でもまあ…はっきり言えるのは、今の時代ではどうがんばってもこの70年代っぽい大らかさと味わいは出せないと思うので、この頃の映画が好きであれば多分何かしらグッとくるものがあるんじゃないでしょうか。

僕は好きでしたね。「面白い」というより、「好き」な映画。

このシーンがイイ!

エンディングが良かったですね~。まさにこの映画で描かれるフィリップ・マーロウの集大成、って感じで。

あとはオープニングの一連の猫シーンは全部良かった。かわいい。ああいうの観てると猫も飼ってみたくなりますね~。結局あの猫はどこに行ったのか…気になります。

ココが○

雰囲気映画だけに雰囲気は抜群に良かったですね。監視のチンピラとの絡みとか最高。良い意味でも悪い意味でも、エリオット・グールドで保ってる映画でしょう。

ココが×

事件のつながり方、真相が(個人的に)イマイチバチッとハマらなかった点。

理由付けも弱い気がするし、終盤は「うーん、そうなのか…」と“そういう話だから受け入れなさい”感が強くて、もう少し引き締まったお話が観たかったなぁ、という気がしました。

MVA

ひどいんだけどなーんか憎めないチンピラボスも良かったんですが、しかしこの映画はこの人以外に無いでしょう。

エリオット・グールド(フィリップ・マーロウ役)

さすがに超有名キャラだけあって過去にもたくさんの方が演じてきたそうですが、一発目にしてこの人以上のマーロウっていたの? と思えるほど、なんか良かった。かっこよかった。

原作者の方はケーリー・グラントのフィリップ・マーロウが一番イメージに近いと言っていたそうなんですが、ケーリー・グラントだとなんか普通のオッサンになりそうでなぁ…。また横分けなんでしょ? どうせ。かっこよかったけどなぁ、エリオット・グールド。まあ他を観ていないのですごくいい加減な評価ですが。

でもエリオット・グールドのフィリップ・マーロウでなかったら、多分こんなしっかり観られなかっただろうなとは思います。最近この方も見ませんが、また出てきてくれるんでしょうか。

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