映画レビュー1221 『哀しき獣』

韓国ノワールっつーことでね。観たいぞと観ました。

哀しき獣

The Yellow Sea
監督
脚本

ナ・ホンジン

出演

ハ・ジョンウ
キム・ユンソク
チョ・ソンハ
クァク・ドウォン
イ・チョルミン
ソン・ビョンスク
チョン・マンシク

音楽

チャン・ヨンギュ
イ・ビョンフン

公開

2010年12月22日 韓国

上映時間

140分

製作国

韓国

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

哀しき獣

もう少しすっきりしたい。

7.5
借金返済のため殺人を請け負った男、しかしすんなりと事は運ばず…
  • 借金返済と帰ってこない妻の捜索を兼ね、殺人依頼を引き受け韓国に渡る男
  • なかなか実行に移せないまま期日が迫り、ついにやってきたその日に事件は起こる
  • 終始漂う“うまくいかなさ”が切ない
  • 全体的に暗くスッキリしないリアルさが人を選びそう

あらすじ

なんだかんだ惹きつけられて面白くはありましたが、終盤の展開については(好み的に)やや消化不良感があり、もう一歩かなぁという印象。

地理的によくわかりませんが「延辺朝鮮族自治州」という中国にある朝鮮族中心の地域に暮らすグナム(ハ・ジョンウ)。

タクシードライバーとして生計を立ててはいるものの、借金に追われその返済のために賭け麻雀に興じ、そして負けるというダメ人間まっしぐらな生活を送っております。

ある日、地下社会の大物として知られるミョン(キム・ユンソク)に借金返済のための嘱託殺人を持ちかけられ、一度は断ったものの、韓国に出稼ぎに出たまま音信不通になってしまった妻のこともあって承諾、韓国へ向かいます。

決められた日に一度だけ帰りの船が出ることを告げられ、その期日に向けターゲットの調査に乗り出し、無事突き止めてシミュレーションしたりと準備を進めますがなかなか実行に移せないグナム。

そうこうしているうちに期限ギリギリの日の夜、張り込んでいたグナムの目の前で別の男たちがターゲットの元へ向かい、“事件”が起こります。

急いで現地へ向かったグナム、果たして彼の運命やいかに…。

物悲しくも痛そう

チェイサー」の監督による作品ということで、アレがなかなか面白かったので観てみたんですが結果的にはあっちの方が(グロかったけど)良かったなと思います。すごく煮詰まった物語だったなと。

こちらは「チェイサー」同様にやるせなさを感じさせるシナリオでこれまた悪くはないものの、いろいろとモヤモヤするポイントがあった気がしてどうにもスッキリしない映画でしたね…。そこが良いんだとも思うんですが。

邦題は完全にオリジナルでつけられたものですが、なかなかこの「哀しき獣」というタイトルは秀逸だなと思います。普通に生きていたタクシードライバーが、嘱託殺人を請け負ったことでどんどんと堕ちていき、うまくいかない日々を過ごすことになる悲しさを見事に言い表したタイトルで。

もう本当に月並ですがしんどくても一発逆転を狙わずに地道に生きるのが一番だなと思わされますね…もう何回目なんだよその思い、と感じつつね…。

いわゆる“堕ちていく”系のお話ではあるんですが、ハードさとたまに顔を覗かせるおかしさがいかにも韓国映画らしい雰囲気。テーマは嘱託殺人だししんどい話ながらところどころに妙なコミカルさが入ってくるのが改めてすごいなーと思います。

警戒していたグロレベルはさほど気にするほどのものではなかったんですが、その代わりかなりバイオレンスな内容なのでそっち方面が苦手な人はしんどいと思います。とにかく痛そう。血だらけ。

僕はこっち方面はまだマシなので大丈夫でしたが、それでもこの映画を観た後はちいかわ以外観られない気分になってしまったぐらい“(物理的に)痛い”映画でした。

いやちいかわもアレなんだけどさ…。

自分と近いものを感じた何かが嫌だったのかもしれない

かなり暗く濃厚な物語なんですが、後半の展開を書くわけにも行かず他に特に書くこともなく。例によって薄い内容で終了の運びとなります。

搾取する側とされる側、自分は明らかに後者に属するだけに…もしかしたら少しだけそこに直視したくない現実のようなものを垣間見て、同族嫌悪的にあまり好きになれない面もあったのかもしれません。

いずれにせよ、万が一自分に嘱託殺人の話があったとしてもこの映画を観ていたおかげで判断に迷うことは無いでしょう。そうやって少しずつ自分の価値観を固めていけるのが映画の良いところですね。

哀しきネタバレ

一点だけネタバレになるのでここに書きます。

やっぱり“直接復讐を遂げられない”のが一番のモヤモヤポイントで、本人の元にたどり着いたころにはもうすでに事切れていた…っていうのは本当にしんどいと思うんですよ。主人公の気持ちとして。だからこそ「哀しき獣」なんでしょうが。

そこが良い、と思う人もいると思うんですが、やっぱり僕としては一言でも言葉をかわす機会があって欲しかったんですよね。てめえのせいで俺の人生全部壊れたんだぞ、って。そんな陳腐なセリフではないにしても。

このシーンがイイ!

とあるカチコミ的なシーン。

メインウェポンが斧なのがたまりませんね。斧で応戦って怖すぎる。

ココが○

スッキリはしないんですがそれだけリアルということなんでしょう。

ココが×

映像的にも話的にも終始暗いので結構闇に囚われそうになる感じはあります。あとは書いた通りものすごくバイオレンス。

MVA

主演の二人が「チェイサー」と一緒、っていうのをあとから知ってかなりびっくりしました。どっちも全然印象が違う。

攻守入れ替え的な主人公と悪役の入れ替わりとなったわけですが、今回はこちらの方にしましょうか。

ハ・ジュンウ(キム・グナム役)

主人公のタクシードライバー

まー哀しい人ですよ本当に。それをきっちり演じた彼もとても良かった。

Wikipediaのメガネかけた画像ではめちゃくちゃ普通の良い人っぽいのに「チェイサー」でもこの映画でもかなり印象が違って役者すごい、と安っぽい感想を吐くわけです。すごい。

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