映画レビュー1345 『東京流れ者』

JAIHO配信終了間際から今回は古い邦画を。

最近の邦画はよほど評判が良くない限りはあんまり観ようと思わないんですが、古い邦画は結構手を出したくなります。

東京流れ者

Tokyo Drifter
監督

鈴木清順

脚本

川内康範

原作

川内康範

出演

渡哲也
松原智恵子
川地民夫
二谷英明
江角英明
北竜二

音楽

鏑木創

主題歌

『東京流れ者』
渡哲也

公開

1966年4月10日 日本

上映時間

83分

製作国

日本

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

東京流れ者

渡哲也売出し中!

6.5
カタギになってもつきまとうヤクザな世界
  • カタギになった不動産会社にかねてから対立していたヤクザがビル乗っ取りを画策
  • 元組長への義理で“不死鳥の哲”が罪をかぶって放浪の旅へ
  • セットが豪華で昔の日本の街並みが見られるのが嬉しい
  • 主題歌めっちゃ歌うじゃん

あらすじ

途中眠くなったりして結構微妙ではあったんですが、かと言ってつまらなかったわけでもなくなんとも評価が難しい映画ではありました。ちょっと今とは映画の文脈が違う感じがして、そこが良さでもあり違和感にもつながったような印象です。

解散してカタギとなり、不動産会社になった旧倉田組。

かねてより彼らと対立していたヤクザの大塚組は、旧倉田組が持つ「倉田ビル」に狙いを定め、元組長で社長(?)の倉田(北竜二)が融資してもらっていた金融業者の吉井を騙して殺害、権利書を奪い取ります。

さらには双方顔を合わせてやいのやいの言ってるところに倉田が発砲したことで漫画読んで爆笑してるだけの事務員、睦子(浜川智子)が流れ弾に当たって死亡。

倉田の部下で拳銃の名手、サイキョーの「不死鳥の哲」こと本堂哲也(渡哲也)は倉田の罪を被って抗争を回避するべく、流れの旅に出ることに。

しかし行く先には大塚組の殺し屋、蝮の辰こと辰造(川地民夫)が姿を見せるのであった…! どうなる哲!

2曲ゴリ押しムービー

ちょっと序盤のアレコレがわかりづらく(眠かった)、いい加減に書いてますが話としては特段難しいものでもありません。簡単に言えば「足を洗ったけど洗ってないやつらが粘着してきて大変だぜ」みたいな。

渡哲也演じる主人公の「不死鳥の哲」は拳銃の名手でとにかく強いんですが、ただカタギとなった以上は「絶対に手を出すな」との倉田の指示を守り、最初は一切抵抗しません。最初は。

ただ流れた先で頼られてしまい、やむなく…的に銃に手をかけてからはもうバンバン撃ちまくりよと。そんな映画です。

この映画、ちょっと変わってるのがやたら渡哲也が主題歌を歌うんですよね。もうプロモーションじゃないのか、ってぐらいやたら歌うんですよ。折に触れては歌う、っていう。完全に覚えました。歌。

彼には千春というショーパブ的なところで歌っている恋人がいるんですが、こちらは「♪なんたら〜赤坂〜」ばっかり歌ってます。この2曲をとにかくゴリ押ししてくる映画です。

基本的にはアクションノワールっぽいヤクザ映画なんですが、あまりにも頻繁に歌ってくるのでちょっとミュージカルっぽい…と言われてますがミュージカルというよりプロモーションにしか見えないぐらい「渡哲也、売出し中です」みたいな映画でした。すごく。

ということからもわかる通り(勝手にそう言ってるだけなんだけど)、まー渡哲也が若い! こんな若い渡哲也初めて見ました。ほっぺたもぷくぷくですよ。当時20代半ば。

劇中で「哲の兄貴」とか言われてるんですが全然兄貴感が無い。一番下っ端っぽい。その辺からもそこはかとなく渡哲也プロモーション感が漂っていますが、別にそれが悪いわけでもなく、やっぱりこの頃からこの人はスターだったんだな、と妙な納得感もありました。薄めの銀シャリみたいな水色のスーツは全然似合ってなかったけど。ただ歳を取ってからの方が断然渋くてかっこいいとは思いました。

そんな渡哲也がサイキョーの男として、大量の敵が待ち構える屋敷に主題歌を口ずさみながらご登場したりする映画です。奇襲をかける気とかサラサラ無い。もう真っ向勝負ですよ。そして(当然)勝利するわけです。

そしてまた流れに戻り、バックには主題歌「東京流れ者」が流れ…またかよ! っていうね。その繰り返しです。段々面白くなってきちゃった。

後で知って「マジカヨ」と思ったんですが、なんでもデイミアン・チャゼルが「ラ・ラ・ランド」はこの映画をオマージュしていると語ったそうです。マジカヨ!(2回目)

話としては当然全然違いますが、確かにちょっと原色強めの当時としては鮮やかな色彩の映像だったり、「ミュージカルっぽい」歌のシーンだったり、言われてみればそんな気もする…けど全然違うやっぱり。チャゼルが好きだったとしてもオマージュは日本に来たときのリップサービスのような気がしますがどうなんでしょうか。

他にもニコラス・ウィンディング・レフンだったりタランティーノだったりが好きな映画に挙げているそうで、僕がピンときていないだけでかなり後続に影響を与えた映画だったのかもしれませんね。

映像が良い

そんな渡哲也兄貴のさらに兄貴分的な兄貴として二谷英明(こちらも当然若い)が出てくるんですが、彼もなかなかいいキャラクターをしていて渡・二谷の二枚看板的な感じもありました。ちなみに彼の役名は「流れ星の健」ですよ。「流れ星の◯◯」とか言われてみてー!(言われたくない)

話としては特段今観るべきところもないんですが、やっぱり僕ぐらいの世代だと「あの人たちの若い頃」が観られるのは新鮮だし貴重だなと思った次第。

それとリマスター版なので映像が非常に綺麗なのもとても良かったですね。セットも今では作れなそうな豪華なものだし、街並みも昔の日本が伺える街並みで興味深く、味もあって。

今は画一的になってしまったので、便利ではありますがこの頃の方が風景としては個性的で良いよな…と思ったりしますがそれもちょっとした懐古主義が含まれているのかもしれません。

映画(物語)としてはすごく評価が難しいなと思うんですが、ただそれ以外の文脈がいろいろと面白い映画だなとも思います。主題歌こすり過ぎだけどね…。

このシーンがイイ!

佐世保のクラブ(?)の乱闘シーンがめちゃくちゃで面白かったですね。店壊れるだろ! っていう。

フィルマークスのレビューに「ここで当時のアメリカに対するコンプレックスを発散させたんだろう」ってあってなるほどなーと。今じゃいろんな意味で絶対に作られないシーンでしょうね…。

あとはもう「やったか!?」からの主題歌口笛シーンで爆笑ですよ。煽りスキル高すぎる。

ココが○

鈴木清順ワールド炸裂らしいんですが初清順なのでよくわからず、それでもなんとなく他にない味は感じたので「なるほどこれが清順ワールド」とわかったフリをしています。

結構話の筋よりこれを見ろ感が強い気がして、その意味ではすごくパワフルな映画だなと思います。

ココが×

振り返ると単純な話なんですが、観ているといまいちわかりづらいところが多く、もうちょっとうまくまとめられたのでは…という気がしないでもない。

それでも上映時間90分切ってますからね。スッキリさせちゃうともっと短くなっちゃうのかもしれません。

MVA

やっぱりこの人かなぁ。

二谷英明(“流れ星の健”こと相沢健二役)

一匹狼の兄貴。

ひたすら仁義を大事にする哲のカウンター的な人物で、とは言え彼も義に厚いところが渋い。いいキャラクターでした。

それと小春役の松原智恵子がまあかわいい。びっくりしました。めちゃくちゃかわいい。

哲はいかにも昔の男らしく割と冷たく接するんですが、こんな女子にすがられて揺るがない男ってマジで男なの…? と疑問を感じるぐらいにかわいかったです。はい。

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