映画レビュー0744 『ラストタンゴ・イン・パリ』

レンタル4本目はオススメされたこちらの映画。少し前にいろいろ物議をかもした映画だというのは覚えていたんですが…さて。

ラストタンゴ・イン・パリ

Ultimo tango a Parigi
監督
脚本
ベルナルド・ベルトルッチ
フランコ・アルカッリ
アニエス・ヴァルダ
出演
マリア・シュナイダー
ジャン=ピエール・レオ
音楽
ガトー・バルビエリ
公開
1972年12月15日 フランス
上映時間
136分
129分
250分(オリジナル)
製作国
イタリア・フランス

ラストタンゴ・イン・パリ

パリで共に住む部屋を探していた中年男と若い娘が、たまたま同じ部屋にやってきて出会い、交わる。それからお互いこの部屋に来てはセックスをする日々だったが、若い娘には恋人がいて、中年男はつい最近妻を自殺で失ったばかりだった…。

感情移入しにくいものの、独特の味わいがある。

7.0

なんでも当時は「ポルノじゃねーのか」的に糾弾され、本国イタリアでは公開後4日で上映禁止になったという曰く付きの映画。

確かにセックス多めだしこの当時の性描写としてはかなり過激だったんだろうことは推測できますが、今の時代から見るとそこまで過激でもない気もする(もっと過激な映画はたくさんある…はず)ので、その辺の心配はあんまりいらないかもしれない映画ではありますが、ただこの映画が最近物議をかもしたのは「レイプシーンで女優(マリア・シュナイダー)の同意を得ていなかった」というお話なので、そういう事前知識もありつつ観ると…なかなか胸クソ悪いお話ではありました。

ただその分、男のエゴみたいなものもしっかり描かれている気もするし、実際のところがどうだったのか(監督が言うにはレイプシーンも脚本にはあったものの細部を知らせていなかっただけで騙したわけではないらしい)はひとまず置いておいて、映画の表現としては他にない迫力のようなものは感じましたね。

とは言え当然ながらその手法については気分のいいものではないし、許容できるものではないとも思うので…なかなか評価するには難しいところ。その上、この映画で評価されたマリア・シュナイダーはその後波乱万丈の人生を送ったらしく、彼女自身もそのことでこの映画に対して思うところがあったんだろうとは思います。

ということでそういう前段を踏まえると素直に評価しにくい部分があるので、そこはひとまず置いておいて「純粋に映画として観て」どうだったのかということで7.0ぐらいかなぁ、と。

舞台はパリ。あるアパートの一室で偶然出会った中年男(ポール)と若い娘(ジャンヌ)が流れでセックスをした結果、その背徳感みたいなものが良かったのか…同じ鍵を持って何度も逢引を重ね、その度セックスしまくっちゃうよと。まあ早い話が中年男と若い女子の不倫話みたいな感じでしょうか。出会ったアパートは「偶然」という舞台を整えた意味を除けば、そっくりそのままラブホみたいなものなので…今で言えばそんなに珍しくもないかもしれない男女のお話です。

ジャンヌには付き合っている彼氏がいて、早々にプロポーズを申し込まれます。それでもズルズルとポールとの関係を続けていく中、ポールはポールで直前に自殺した妻のことを引きずりつつジャンヌに癒やしを求め、その先に待つものは…という物語。

序盤から中盤にかけては(要素的に)本当に二人がセックスしているだけという感じであまり物語が膨らまないので、ぶっちゃけ飽きる面はありました。もういいよと。セックス観たかったらAV観るわと。

ただ中盤から後半にかけて…主にポールの方の内面が徐々に明らかになっていくにつれて、なかなか味わい深い物語になっていく感じが良かったですね。この辺やっぱりヨーロッパ映画っぽいというか、アメリカ映画にはない奥の深さ(とある種の不親切さ)がかなり通好みの映画だなーという感じで。

ただ実際問題として、こういう話を描く上でここまで性的な描写が必要あるのかというのは…偉大なるベルトルッチ監督に僕が言うのもおこがましいですが、ぶっちゃけいらねーだろと思いました。そこで興味を惹く、惹きつけようとするある種のエゴであったりいやらしさみたいなものは感じたし、その延長線上に「騙し」の撮影があったのかと思うと余計に思うところはあります。

それでもそういう肉欲的な交際の果てに導かれる結末という意味では…やっぱり必要というか、心情的にリアリティが増すのもわかるし…難しい部分は感じます。もちろん、撮影方法については話は別ですが。

その問題のシーンに関しては、「本気で泣いた」らしいマリア・シュナイダーの演技が(と言っていいのかわかりませんが)やはり圧巻で、よく撮影を止めずに耐えて演技を続けたもんだなぁと関心しましたね…。と言っても擬似本番らしい(主演の二人が亡くなっている以上、監督を信じるならという話ですが)ので、そこまで過酷な撮影でもなかったのかもしれないし、やっぱりこの部分に踏み込むといろいろブレるので物語に対する純粋な評価を考えるのであればあんまりこのことは考慮しないようにするべきだとは思うんですが。それも含めて語りづらい映画だなぁとは思います。

なんだか問題の話ばっかりになっちゃいましたが、映画としてはやっぱり少しわかりづらい内容だし、加速し始めるまでが長いので興味を持ってついていくのがキツい映画だとは思います。

ただエンディングの後味は他にない何かがある気もするし、価値観的にまったく共感できなかったんですがそれでも「うーん、確かに何かがあるな」と感じる映画ではあったので、いろいろ思うところがありつつも…映画好きとしては一度観てみる価値がある映画かもしれません。

ラストタンゴ・ネタ・バレ

このシーンがイイ!

後半、一応ネタバレ回避のために対象は書きませんが、ポールが一人語りかけるシーン。マーロン・ブランドの演技力の凄みを感じましたね…。

ココが○

どことなく刹那的で退廃的な感じというか…。特にそういうフリは無くても、絶対先に待つのは良からぬ展開だろうみたいな雰囲気が好きでしたね。

ココが×

価値観的にはまったく相容れないものだったので、「良い思いしてんじゃねーよおっさん」的な感情は確かにありました。まあそれだけ羨ましくもあったんでしょうけどね…。

その辺、「好きじゃないけど切り捨てられない憧れ」みたいな複雑な気持ちがあったのも印象的でした。

MVA

その後いろいろ言われた曰く付きの映画だけあってと言うべきか、主演の二人はとても素晴らしかったです。経緯込みでマリア・シュナイダーにしてもいいんですが…この人の凄さには勝てなかったかな…。

マーロン・ブランド(ポール役)

この頃のマーロン・ブランドはアラフィフなんですが、今のアラフィフより全然くたびれてるんですよね。もっと年食って見えるんですよ。でもそれがなんとも言えない色気になっていて…すごいなぁと感心。

演技力も本当に申し分ないというか…ものすごく説得力があったんですよね。なんなんだろうと思いつつ観ていました。大昔、マーロン・ブランドはカンペを見ながら演技しているって聞いたことがあるんですが…全部じゃないのかなぁ。どっちにしてもすごい演技でした。今この色気が出せる人っていない気がする。

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