映画レビュー0302 『あるいは裏切りという名の犬』

ワンワンワンワンワーン! やぁ僕、犬。

前々から気になっていた、この一度観ると忘れられないタイトルの映画。観てみたワーン!

あるいは裏切りという名の犬

36 Quai des Orfèvres
監督
脚本
フランク・マンクーゾ
ジュリアン・ラプノー
ドミニク・ロワゾー
オリヴィエ・マルシャル
音楽
エルワン・ケルモンヴァン
アクセル・ルノワール
公開
2004年11月24日 フランス
上映時間
110分
製作国
フランス

あるいは裏切りという名の犬

死傷者も出た凶悪な連続強盗事件が発生、何としても解決したいパリ警視庁長官は、互いにいがみ合う傘下の組織、探索出動班BRIと強盗鎮圧班BRBに事件解決を強く要望する。それぞれBRIを率いるヴリンクスと、BRBを率いるクランは、事件を解決した方に次期長官の座を譲ると長官に言われ、それぞれの思惑で事件を解決するべく、それぞれの正義に従って行動していく。

特濃で重厚、警察映画の力作。

8.5

ワンワンワンワンワーン!

なんて冗談を抜かしていられるほどの軽さは無く、とにかく重く、緊張感張り詰める力作です。

パリの警察組織はよくわからないんですが、一般企業で言えば、おそらくはいわゆる「社内の別部署」的なBRIとBRB、それぞれの部長が「俺はもう社長になるから後任の専務はこのプロジェクトを成功した方でいいよ」みたいな話を振られる、というようなお話からスタート。

かたや正義に忠実、昔気質の警察官・BRIのヴリンクス。かたや権力志向、野望を持つ警察官・BRBのクラン。

かつては親友だったというこの二人、今はおそらく相容れない価値観のせいもあるんでしょう、とてもうまくいっているような雰囲気はありません。ただ、どちらかと言うと、権力志向でヴリンクスが邪魔だと感じているクランの方が、より強く疎ましく感じているフシがあって、それがまた物語の鍵にもなってくるわけですが…。

序盤、手がかりの掴めない連続強盗事件を解決するべく、ヴリンクスは一つの罪を犯します。その罪が次第に彼らの周りを蝕んでいき、やがてそれぞれの人生を狂わせるような悲しいドラマを作り上げていく、というようなお話になっております。

まず映画として、全体的に非常に重く、笑いどころはゼロ。

ハードボイルドなフィルム・ノワールと言った雰囲気は、同じ刑事物である「L.A.コンフィデンシャル」を想像させるような、重厚で濃厚、緊張感溢れるサスペンスフルな展開。

「連続強盗事件」「ヴリンクスの罪」という二つの事件が軸にありつつも、その捜査の結末よりも、その事件が登場人物たちに与えた影響が物語の中心になっていて、それぞれの野望、復讐、正義が絡み合う人間ドラマは見応え充分。そこにさらにフランス映画らしい、派手さに頼らない、心の動きを追う見せ方のおかげで、より登場人物たちの人間性にクローズアップしていく作りはお見事。

おかげで「コイツ許せない」「コイツ頑張れ」と観客の感情移入も高まっていき、やがて…の結末もなるほど大人の味付け。

僕はタバコを吸いませんが、観終わった後は窓から外を眺めながらタバコを吸いたいぜ、いやタバコっていうよりむしろ煙草だぜ、みたいな深ーい男の世界に浸れる映画でした。

ハリウッド的なわかりやすいやりとりも無く、「おっ、ここであのセリフを返すのか!」と思ってたら何も言わずに立ち去る…というような肩透かし的な展開も、むしろ実直でリアルな世界作りの一助になっています。聞けば実際にあった話を元にした映画だとか…。うむむ…。こんな警察官嫌だ。

繰り返しになりますが、重い映画なのであんまり気軽に観ようかな、って話ではないと思いますが、夜にじっくり観るにはすごく良い、オススメの映画です。

個人的に“当たりのフランス映画”は、アメリカ映画の当たりとは全然違う、スルメの如きジワジワ来る味わいがすごく好きなので、こういう良作を観て、フランス映画の良さを知る人が増えると嬉しいなぁと思います。

ちなみにロバート・デ・ニーロが今作を気に入り、彼とジョージ・クルーニーの主演でリメイクを予定しているとか。この両者がこの役をやる、っていうのはどっちがどっちをやるにせよ、観てみたいですねぇ。

ただ、それでもこの映画ほどの作品にはならないだろうな、と思えるほど、すごく良くできているし、隙のない映画だと思います。濃密で重厚な2時間、ごちそうさまでした。

こういう映画を観ると、余計に「ディナーラッシュ」はうっすうすでクソだったな、と思います。(チクリ)

このシーンがイイ!

やっぱりラスト近くのトイレのシーンかなぁ。どっちも演技が素晴らしかったです。

ココが○

警察内部の話とは言え、基本は捜査よりも人間ドラマで、そのための人間描写の秀逸さが光ってましたね。本当にこういうのをしっかり作らせたらフランス映画ってすごいと思う。アメリカ映画はもちろん、イギリス映画ともちょっと違うんですよね。緻密な感じというか。

劇中での事実と、観客の登場人物への感情を少しずつ少しずつ積み上げていく感覚がスバラシイ。

あとは邦題がやっぱりいいなと思います。ちょっと詩的に過ぎる気もしますが、味のあるタイトルだし、安易に「こうすりゃ売れるだろ」みたいな付け方をしてないのが良い。なんというか、こういう“うるさめ”のタイトルが似合う映画だし。

ココが×

個人的には、結末はやや惜しい感じがしました。もう少し、最後のやり取りを観たかった気もして。でも全体の完成度からすれば許せるかなぁというレベル。

MVA

主演二人はそれぞれフランスを代表する名優のようですが、なるほどどちらも確かに素晴らしかった。

ただ、クラン役のジェラール・ドパルデューの方は途中から尻のような鼻(尻鼻と命名)が気になって仕方なく、従って…というわけではないですが、こちらの方に。

ダニエル・オートゥイユ(レオ・ヴリンクス役)

最初に「もしや」と思ったんですが、案の定「ぼくの大切なともだち」の、あの“友達のいない美術商”の方でした。が、あの映画とは(当然ですが)打って変わって渋い。ブイシー。

決してイケメンではないですが、いい男感がにじみ出てましたね。この辺は己の正義を持ち続ける役柄もあって、なんでしょうが。

アクションの動きのキレも良かったし、時折見せる表情もすごく良かったですねぇ。

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