映画レビュー1346 『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』
今回はJAIHOが力を入れているっぽいタイのラブコメです。常時配信作品。
おそらく欧米の映画よりは金額も安いんだろうし、日本では他に観る方法も限られるしでウリにするには使いやすいんでしょうね、タイ映画。レベルも高いし。
アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー
Chaiyapruek Chalermpornpanich
Benjamaporn Srabua
メート・タラートン
サニー・スワンメーターノン
プリーチャヤー・ポンタナーニコン
ポップトーン・スントーンヤーンナキット
Kornpob Janjarearn
カンヤダ・タウィヤ
Puttachat Pongsuchat
蒼井そら
2014年12月10日 タイ
122分
タイ
JAIHO(Fire TV Stick・TV)

展開はド定番、ノリはややアク強め。
- 人気英語教師、生徒から「会話できない彼と別れたいから協力して」とブランドバッグで釣られる
- 仲介して彼にその旨伝えると諦めきれない彼は「俺にも英語を教えろ」と面倒な事態に
- 例によって強めのコメディ感の前半、しっぽり恋愛フェーズの後半
- まさかのキーマン蒼井そら
あらすじ
「愛しい詐欺師」の監督さんということで、確かに同じような“ノリ”を感じる映画でしたが好みとしてはあちらの方が上でした。
人気英語教師のプレーン(プリーチャヤー・ポンタナーニコン)は、教え子のカヤ(蒼井そら)から「アメリカに転勤することになったから彼氏のジム(サニー・スワンメーターノン)と別れたいんだけど英語も通じないし自分はタイ語わからないから先生から別れ話伝えて!」と頼まれ、その対価として(たしか)ヴィトンのバッグをプレゼントすると言われ承諾。
その辺の話をジムにすると激昂され、「じゃあ俺もアメリカに行くから英語教えろ!」と半ば脅迫されてしまい、やむなく今度は彼の“先生”になることに。
オープンな性格(オブラート)なカヤは向こうに到着してすぐにアメリカ人の新しい男とイチャイチャしてエンジョイしておりますが、そんなことも知らずに諦めきれないジムはアメリカ勤務を勝ち取ろうと勉強するもののどうにも覚えが悪く、コレは無理そう…とプレーンもちょっとめんどくさそう。
一方プレーンはビジネス英会話教室の生徒であるプルーク(ポップトーン・スントーンヤーンナキット)からアタックされていい感じにのぼせ上がり、また彼がとんでもないお金持ちっぽいこともあって惹かれていきます。
いつまで経っても諦めないジムを疎ましく思いつつもその努力家ぶりを見直したりしつつ、一方でプルークはちょっとめんどくさいタイプだなと判明してきたりもしてまして…はてさてどうなるんでしょうね。
展開はいつも通り、コメディ感は好き嫌いありそう
ラブコメなんてのはもうどうしたって万国共通の流れにならざるを得ないものだと思うので、その様式美の中でいかに面白くできるかが勝負だと思っております。割とラブコメ好きな人間としては。(結局おヒューの影響が大きいだけ説)
悲恋に終わる恋愛映画もありますが、そこに「コメディ」が混ざってくるとやっぱりどうしても落ち着くところに落ち着かざるを得ない(悲しいエンディングはコメディにならないからね)ので、この映画も結局ジャケットに描かれた(主演の)2人がくっつくまでを見守る映画ではあるんですよね。ぶっちゃけ。途中で恋のライバルが登場しようが最終的に絶対そうなるのはもう観る前からわかってる話です。
その道中をどう見せるか、どう納得させるかがラブコメの肝なわけで、その意味ではこの映画は「まあそうだよね」と良くも悪くも「普通のラブコメ」ではありました。
僕の感覚としては、前半は「愛しい詐欺師」以上にややオーバーなコメディ色が感じられ、「そういうもの」と知らないで観ていると逆に引いちゃうぐらいにアクが強い感じはしました。
本筋とは関係ない「これ何の時間?」みたいなシーンも結構あって、メインのストーリーは真っすぐでシンプルながらコメディパートで膨らませている感は否めず、良く言えばエンタメに寄せた内容、悪く言えば無駄な話が多いラブコメと言った感じ。この辺りは好みで評価が分かれそうです。
僕はある程度「愛しい詐欺師」を観て覚悟していたこともあり、ちょっと脂っこいコメディ感もそれなりに消化しつつ観てはいましたが、ところどころ上手いなと思う点はありつつコメディパートに関してはやっぱりちょっとオーバーかなと思います。もうちょっとスマートな方が面白くなると思いますが、この辺はきっと国の文化とかも関わってきちゃうので難しいところ。イギリスの皮肉っぽさが嫌い、って人もいるだろうし。
ただ結構音響面でもオーバーな感じは出てたので、大体の日本人は「ちょっと主張が強い」と感じるんじゃないかなと思います。そこに安っぽさを感じてダメな人もいるとは思いますが、ただそこを乗り越えて観ていけば結構しっかりとしたラブコメにはなっていると思うので、これもインド映画と同様に慣れの問題はありそう。
とは言えタイ(のコメディ)映画全般がそうなのかと言われればそんなこともない気もする…のでこれは多分属人的なもの、つまりは監督の個性なんでしょうね。
しかしそれにしても一番驚いたのは蒼井そらですよ。タイ映画に出てる、と噂には聞いていたんですが。
彼女は物語の発端となる「ジムと別れたいから先生お願い」とヒロインに“別れさせ屋”を依頼する役どころなんですが、日本人でタイ語は喋れず、英語は喋れる人物、という設定。反対にジムはタイ語は(当然)喋れるものの英語は喋れず、従って「別れよう」と伝えたくても理解してもらえないから先生翻訳お願い、という形。
じゃあどうやって付き合うことになったんだよ、と誰もが思うわけですが、そこは蒼井そららしく(?)「身体で会話したのよ」ってなもんですよ。ちゃんと過去の経歴を否定しない役どころを楽しげに演じているのは好感が持てますね。
どうせ最初だけ出てくるチョイ役なんだろうと観てましたがこれが結構ちょこちょこと出てくる重要な脇役で、なんなら主要メンバーの一人としてエンドロールにもご登場ですごく良かったですね。相変わらずかわいくて。
余談ですが20年ぐらい前に働いていた会社の後輩の妹が蒼井そらと同級生だったらしく、当時彼に「最近蒼井そらに世話になってるよ」的な話を少ししたところ「高校時代めちゃくちゃ地味でしたよあいつ」と言っていました。超余談です。それでも国際的に(というか中国やタイでは日本どころじゃない)人気を得るんだから人生わからないものですね。
ちなみに蒼井そらは(今は知りませんが)役ほど英語を話せるわけではないようで、映画と同様に“先生”のプリーチャヤー・ポンタナーニコンに教えてもらいながら演技をしたそうです。
プリーチャヤー・ポンタナーニコンはド素人の僕が聞いても本当にびっくりするぐらい綺麗なイントネーションで英語を話していたので、英語は相当得意なんだろうと思われます。もしかしたら当て書きだったりするのかな?
ベタだけど新鮮
やっぱり“ラブコメだけど詐欺映画でもある”「愛しい詐欺師」と比べると、どうしても展開は予想通りになってしまう分もう一つかな、という気はしますが、それでもこれを仮にアメリカに持っていったら多分もっとこねくり回しちゃいそうな気もするし、ある意味真っ直ぐ王道なラブコメをやる潔さという意味では逆に良かったりもするのかな、とか。
前半はかなりコメディ強めでそこは結構我慢が必要な部分もあるんですが、後半いよいよ本題に入ってくるぞ的になってくるとなかなかフリが利いた良い展開もあったりするので、ラブコメ好きであればちょっと観てみると良いかもしれません。
ベタだけど国が違うおかげで意外と新鮮に観られるような映画になっているので、やっぱりあんまり日本に入ってきてない国の映画は有利というか、本筋以上に面白く感じられる面はある気がしますね。
ただラブコメ的には「愛しい詐欺師」もそうでしたが、同じ主演の「フリーランス」の方がなんかグッと来る面もあって面白かった…かな。
このシーンがイイ!
ラブコメ的にはやっぱり…歌を聞きながら翻訳するシーンが一番グッと来ましたね…なんというかああいうシチュエーションが羨ましくてね…。
あとはエンディング終わりのダンスシーンは超最高。みんな楽しそうな映画は良い映画です。その後のNG集的なエンドロールもベタだけど好き。
ココが○
コメディパートが大げさな分大味な映画な気がしちゃうんですが、実は結構緻密で真面目なラブコメじゃないかなと思います。さり気なく伏線回収が上手い。
ココが×
やっぱりちょっとコメディパートに慣れが必要な感覚はあります。汚いシーンとかもあるし。
MVA
皆さんそれぞれ良かったんですが、ちょっとツボだったのでこの人に。
Kornpob Janjarearn(ジョーク役)
ジムの部下。寮みたいなところなのか謎ですが一緒に暮らしている模様。
なんて読むのかサッパリなんですが、もう出てくるシーンどれも無駄に面白かったです。段々クセになる芸風で。いいキャラでした。
ついでにジョークの彼女もすごくよかった。かわいいけど当たりが強くて。