映画レビュー0276 『死刑台のエレベーター』

今回の映画は、確かついこの前邦画でリメイクされて話題になっていたと思いますが、その元となるフランス映画です。リメイク版は未見、これも初見。

ちなみにどうでもいい情報ですが、リメイクに出ていた吉瀬美智子は割と好き

死刑台のエレベーター

Ascenseur pour l’echafaud
監督
脚本
ロジェ・ニミエ
原作
ノエル・カレフ
出演
ジャンヌ・モロー
ジョルジュ・プージュリー
ヨリ・ベルダン
音楽
マイルス・デイヴィス
公開
1958年1月29日 フランス
上映時間
92分
製作国
フランス
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

死刑台のエレベーター

社長夫人のフロランスと愛人関係にあるジュリアンは、彼女にそそのかされて社長を殺害、自殺に見せかけた犯行は完璧に思えたが、一度外に出た後、証拠隠滅のために戻った会社のエレベーターに閉じ込められてしまう。

サスペンスよりも純愛。

6.0

これまたお決まりのコメントではありますが、「フランス映画らしい」地味ながら実直な作りのサスペンス。

今の時代で言えば成立しない話だとは思いますが(それだけにリメイクも気になるけど)、なかなか劇中は引きつけるものもあり、短い上映時間も相まってしっかり観られました。ただ、最後まで観ると結局サスペンスよりも純愛物語に比重を置いている感が強いので、そこがサスペンス好き&恋愛嫌いとしては不満。

ちょこっと詳細。

お前どんだけ運が悪いねん、と思わず突っ込みたくなる主人公は、“ウッカリ”証拠を放置してしまったがためにエレベーターに閉じ込められることになり、またその時にたまたま居合わせた男が運悪くクズヤロウだったために別の事件を巻き起こし、それらが絡みあってどうするどうなる的なお話。

その“純愛”を感じさせる二人の女性、社長夫人であり主人公の愛人であるフロランスと、チンピラの彼女である花屋の店員・ベロニクは、どちらも古い日本女性を思わせるような一途さで、「ついていきます」と男に従順。

非常に悲しい話ではありますが、女性理解度ゼロの輩としては、特にベロニクに関して、なんでこんなアホなチンピラと添い遂げようと思うのか不思議でしょうがないほどちょっと理解できない部分があって、その辺でイマイチ入り込めない感はありました。

彼女たちの一途さは別に添え物だからまあいいか、と思ってたら最終的にはそれが言いたかった、みたいな展開だったので、ちょっとそこのガッカリ感が強く残っちゃったなぁ、という感じ。

それともう一点、勝手な期待ではありますが、「閉じ込められたエレベーターからどう脱出するのか」みたいなシーンの緊張感がなかなかよくて、どーすんだどーすんだと観てたら結局寝ちゃって朝ですよーみたいな展開にも少し肩透かし感があって。そこが主眼では無いとは言え、いいシチュエーションだっただけにちょっと残念。

僕は完全に女性たちにクローズアップする必要は無いだろと途中で思っちゃったが故にこんな感じではありましたが、「愛を語るサスペンス」みたいな入り口として興味が持てる人であれば、なかなか名作足り得る映画になるんじゃないかとも思います。

ネタバレにならない程度に、サスペンス好きの個人的な総評を書くなら、

  • 警察が社長の自殺を他殺と判断した理由
  • もう一つの事件の容疑者選定理由の安易さ
  • 夜をさまようフロランスのシーンの長さ
  • ベロニクの精神的な幼さ

辺りにちょっと納得がいかず、もう一歩。

そんな荒削り感も古い映画っぽさではありますが、でも映画の質感的にはあまり古さを感じなかった気もするし、ただそれは恋愛に主眼を置いたからというのも事実だと思うし…。

結局どうしようもない…というかある意味で完成された作品なのかなと思います。

このシーンがイイ!

エレベーターでぶら下がってる辺りの緊張感あるシーン。そっち方向に伸びてれば…。

ココが○

上に書いたように、状況で言えば、今だと携帯があるので、もうすべて成り立たないような話になっちゃう…という設定上の古さはあるものの、映画としての作りはとても50年代とは思えないほど普通に楽しめたのが良かったな、と。

それと音楽がマイルス・デイヴィスの即興演奏らしいんですが、この辺りさすがマイルス師匠、ジャジーなトランペットが最高でした。ジャズトランペットとサスペンス、って抜群に合いますナー。

ココが×

短い映画ではあるんですが、それでも個人的にはもっと閉じ込められたジュリアンのシーンを観せて欲しいなぁという思いが強く、その分フロランスがさまようシーンなんかはちょっともったいないなぁと思いましたが、でもそこがこの映画の評価ポイントらしいので、まあ僕の見方はぬるいぜ、ってことでしょう。

MVA

特に強く印象的だったわけではないですが、この方をチョイス。

モーリス・ロネ(ジュリアン・タベルニエ役)

閉じ込められる主人公。

結構カッコいいなと思って観てましたが、後で調べるとあの「太陽がいっぱい」で太陽にいっぱい照らされるハメになるボンボン役の人でした。

前はそんなにカッコいいとも思わなかったんですが、やっぱり隣にアラン・ドロンがいると目立たなくなっちゃうんですかね…。逆説的に言えば、僕もつるむ友達を目玉半分飛び出てるようなやつにすればたまにはウホッなこともあるのかな、と思った午前2時。クズ野郎です。

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