映画レビュー0313 『人生はビギナーズ』

iPhone5なんですが。

もうタイミング的にしょうがないな、とイヤイヤ買うことに決め、予約開始日の翌日に予約しに行ったんですよ。前日の予約開始日は、午後4時から8時までで田舎のソフトバンクショップのくせに50人も予約が入ったとかで、自分が予約した時も「早ければ来週に入りますが、遅いと1ヶ月以上かかる場合も」なんて言われ、ポイント消滅も近いのでやむなく今の携帯の電池も頼んだんですが、無事1週間で入荷しましたという。この電池どうすればいいのよ。

まあいいんだけど。

ということでゲットしました。無駄な職業的技術を駆使して、今更感たっぷりのゴールデンエッグスシールでも作って貼ろうかと思ってます。トリゾーの。

人生はビギナーズ

Beginners
監督
マイク・ミルズ
脚本
マイク・ミルズ
音楽
ロジャー・ネイル
デイヴ・パーマー
公開
2011年6月3日 アメリカ
上映時間
105分
製作国
アメリカ

人生はビギナーズ

母が亡くなってから5年、ある日突然、父が「自分はゲイだ」とカミングアウト。残りの人生を楽しむかのようにゲイライフを満喫する父だったが、やがてガン宣告を受け、闘病の果てに亡くなる。そんな父との別れに整理もつかないオリヴァーだったが、ある日、連れて行かれたパーティで一人の女性と出会う。

独特の雰囲気の中で、穏やかな優しさと哀しさが包み込む。

9.0

いやぁ…良かったです。号泣するわけでも、爆笑するわけでも、目が覚めるほどのメッセージがあったわけでもないんですが、でもなんとも形容のしがたい穏やかな雰囲気に包まれた、懐かしさと優しさと哀しさと希望と…まさに「人生」が詰まったイメージの映画でしたねぇ。

主人公のオリヴァーは38歳独身。

「うまくいかないと思ってるからうまくいかないように行動してしまう」みたいなことを劇中で語ってましたが、その性格といい、いい歳して独身という設定といい、他人事とは思えない雰囲気。しかも犬好きだし。

そんな彼が少し変わった女性・アナと出会い、彼女と恋愛をしていきながら、父との生活、母との思い出を糧に少しずつ前に進んでいくお話。

クリストファー・プラマーの「私はゲイなんだ」の衝撃の一言から始まる予告編を観て、もっとコメディっぽい笑いも混ざった人間ドラマなのかと勝手に思ってましたが、内容的にはもっと全然まじめ…というか良い意味で静かな映画でした。笑えるシーンもありましたが、少なめ。

「死を控える、でも今を楽しんで生きている父」という思い出と、「今は幸せだけどでもうまくいかないんじゃないか」と疑いながら進める恋愛がどこかシンクロするような構成は、穏やかながら哀しさを内包していて、じんわりじんわり、自分の心に浸透していく不思議な感覚。

これ、ユアン・マクレガー主演だし、てっきりイギリス映画だと思ってたんですよね。まさかアメリカ映画だとは。こんな穏やかで優しい、しかも独特な雰囲気を持った映画がアメリカで作られたというのは結構驚きでした。

過去の思い出と、現在の恋愛が切り替わりつつ流れる構成ですが、もうすでに父は死んでいるという話が最初に出てくるので、「死んだ父と僕の話」と「アナと僕の話」、もう一つ「母と小さい頃の僕の話」という感じで登場人物が分けられているので、わかりにくいということは無いです。

特にどこかで声高に何かを言うわけでもなく、至って等身大な話をつなぎあわせて「今」を進めていく、という感じの物語は、最近の流行りなんでしょう「ヒーロー」も「アクション」も「殺人」も何もなく、本当に普通の人が普通に生活して、別れがきて、出会いがあって、そして「生きてます」という話になっていて、そのいわゆる“生きてるなぁ感”がこれまたたまらず、グッと来ました。

「すげー泣いた」とかは無かったんですが、でも途中からずーっと涙をたたえたまま観ていた感じ。それも「哀しいから」だけじゃないんですよね…。哀しさはもちろんあったけど、みんないいやつだなぁ、みたいな嬉しさもあったし、こういうのいいなぁ、っていう感動に近い感情もあったし、いろんな思いがミックスされてウルウルしながら観た、という感じでしょうか。

とにかくこの映画は雰囲気でしょう。序盤に愛犬(アーサー)が主人公に語りかけるシーンがあるんですが、その「犬に字幕を入れる」っていうだけでもう愛犬家としてはヤバイわけですよ。「ああ、これダメだ、絶対泣くわ」っていう。彼(多分♂)が語る(?)シーンは数えるほどしか無いんですが、それだけにどれも効果的なところで効果的なことを言っているので、下衆な言い方をすれば、使い方がうまいというか。その「犬と語る」っていう優しい雰囲気だけでもうたまらないものがありましたねぇ…。

このアーサーは始終ついて回っているので、影の助演男優賞と言えますが、その「犬がずっと登場する」っていうところでもうこの映画の「穏やかで優しい」雰囲気が形作られていたのかもしれません。その上、このアーサーは亡き父の愛犬だった…というのもまたミソで、特に彼がその亡きご主人様を思い出してどうこう、って話はないんですが、でもやっぱり何かしら背負ってる感じがするんですよね。犬でも。

もちろんオリヴァーも父の死は背負ってるし、アナにしても自殺願望を持った父が身近にいるということで、誰もが何かを背負ってる、その「人生らしい」雰囲気が、「生きてるなぁ、みんながんばってるよなぁ」っていう僕が好きな“生きてるなぁ感”を演出してくれていたような気がします。

加えてもう一つ、外せないのは音楽。

ピアノ主体の穏やかで少し物悲しい旋律を中心に、たまにいわゆるオールディーズ的なBGMを入れ込んできて、ノスタルジックな雰囲気を演出してます。この音楽の力がものすごく大きかった気がする。この映画は。単品で聞いてもイマイチだろうなと思いつつ、でも久々にサントラが欲しいと思いましたね。映画同様、少ししんどいなーって時に、優しく包み込んでくれるようなサントラだったりするんじゃないかと…。や、でも物悲しさもあったので、ちょっと落ち込みたい時にもよさそう。ってそれはそれでどうなんだ、と。

正直なところ、久々に…多分「列車に乗った男」以来、良い意味でなんとも形容しがたい雰囲気の映画だな、と思ったこともあって、僕の拙い文章力ではちょっと魅力を伝えきれないんですが、きっとその複雑な雰囲気そのものが「人生」らしさを醸し出してるのかな、と思います。一言で言えない、面白いことも辛いこともある、そんな人生っぽい映画。

そして「父の死」や「自分の年齢とポジション」から、「時間は流れていくんだぞ」という当たり前だけれど残酷な現実も見せてくれます。

ちなみに当然ではありますが、僕は鑑賞後、いてもたってもいられずに我が愛犬の元へ向かいました。犬ってなんであんなにかわいいんだろう…。この映画はもうしつこいほどくっついてくるアーサーが、「犬もまた、大事なパートナーなんだぞ」と言っている気がして、それがまた僕のやられポイントだったわけですが。

ぜひ、休みの前日の夜にでも、じっくりと…酔わない程度にお酒でも飲みつつ、観ていただきたい映画だな、と思います。「ヤング≒アダルト」同様、ちょうど僕とかオリヴァー辺りの年齢の、いろんな問題が無視できなくなってくる年頃の人が観ると、じわじわジワジワ来るものがあって、少し振り返る時間が持てるのではないかと思います。

そしてこの映画のいいところは、「誰しもビギナーズ」、これからまた一つずつ進めていけばいいんじゃない? っていう暖かいメッセージが穏やかに込められているところ。こういう映画が作られる今の時代、やっぱりみんな迷って悩んで生きているってことでしょうか。

そんなことを思いつつ、でも「人生も捨てたモンじゃないな」とも思いたくなるような、優しく背中を押してくれる雰囲気、好きです。

このシーンがイイ!

良いシーンがまたたくさんあって、結構迷ったんですが…お父さんにワックスでヘアセットしてあげるところかなぁ。で、オリヴァー写したら彼もちょっと泣いてるっていう。あれはダメだよ。泣いちゃうよ。

ココが○

実はほぼ恋愛映画と言っていいような内容ではあるんですが、でもよくある恋愛映画っぽい「ちょっとした痛さ」みたいなものはほとんど無くて、素直に観られたのが自分でも驚き。きっと「お父さんの死」っていう背景がずっとそばにあったからなんでしょうね。

「恋愛」っていう側面だけを語る映画ではなく、「人生の中に恋愛もある」っていうスタンスだから良かったのかな、と。

ココが×

ただ、その「実際はほぼ恋愛映画」っていうのは、少しこの映画を手に取った人が期待する部分とはズレているような気もします。

僕ももっとお父さんを観たいと思ったし、ここまで恋愛寄りだとは思わなかったので。でも良かったけど。

MVA

ユアン・マクレガーはすっかりこういう普通の兄ちゃん代表みたいになっちゃいましたね。父にもしっかり寄り添って優しさがにじみ出てる感じとか、相変わらず、すごくよかった。

そのお父さん、クリストファー・プラマーもさすがさすが、文句なし。なんだろうなぁ、この人。味がある。やっぱり爺さんの名優は最高だ。でも今回は、この二人としっかり渡り合っていた、ということでこの人に。

メラニー・ロラン(アナ役)

オリヴァーの彼女。

すごいかわいいとかは特に無いんですけどねぇ。でも最初のパーティのシーンからやっぱりちょっと違う雰囲気があったし、「恋愛だけど恋愛過ぎない」バランスを取れるという意味で、いいキャスティングな気がしました。やること言うこと完全に「恋愛映画」なのに、どこか少し影がある感じとか。

この人含めて主演3人、ついでに言えばお父さんの彼氏入れて4人、もっと言えば初の動物選出したい衝動に駆られたアーサー入れて5人(?)、みんなみんな良かったです。

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