映画レビュー0224 『デルス・ウザーラ』

一旦、BS録画シリーズに戻ります。

実はお恥ずかしながら黒澤映画、初めてです。初めてなのにチョイスが渋いと自分でも思いますが、なんせ放送していただけなので勘弁してください。

デルス・ウザーラ

Dersu Uzala
監督
脚本
ユーリー・ナギービン
井手雅人
原作
『デルス・ウザラ』
ウラジミール・アルセーニエフ
出演
ユーリー・ソローミン
マクシム・ムンズク
音楽
イサーク・シュワルツ
公開
1975年8月2日 日本
上映時間
141分
製作国
ソビエト連邦
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

デルス・ウザーラ

過酷な自然が支配するシベリアの探検を命じられたアルセーニエフが、偶然出会った現地の猟師、デルス・ウザーラと出会い、友情を深めていく。

考えさせられますなぁ。

7.5

舞台・雰囲気、映画の空気的には「ネバー・クライ・ウルフ」とかなり近い印象ですが、あれよりももっともっと娯楽を排して、記録映画のような実直な作品。

「面白かった!」ってなタイプの映画ではないので、評価としては微妙な感じになってしまうのは否めませんが、自分としては予想外な結末を迎えたこともあり、非常に考えさせられる、深い映画でしたね。

過酷な自然の中で探検する「隊長」他隊員たちと、「自然の達人」デルス・ウザーラとの交流。

近年ほとんど見かけない二部構成の映画になっていて、第一部では出会いから最初の旅の終わりまで、第二部では再会してまた一緒に旅をするところからエンディングまでを描きます。

お互いがお互いを認めて、かけがえのない友となっていく二人ですが、街で生きる人間と自然で生きる人間の違いが、最後のエピソードで浮き彫りとなり、考えさせられる結末を迎えます。

これは…まさに今の日本でも、例の原発事故以降、一部で言われる「便利な生き方が絶対なのか?」という問いかけにも近いものがあって、果たして幸せとは何なのか、そもそも「生きる」とは何なのか、社会のルールとは、人間とは…とどんどん人間の根源に迫っていくような深い問いかけのある映画でしたねぇ…。

「ツマラナイ」と切り捨てるのは簡単ですが、僕は観てよかったと思いますね。後々印象に残っていそうな気がします。

大げさなようですが、これから生きていく上で、こういう記憶のストックが、じわじわ血となり肉となるような気がします。

余談ですが、小さい頃に学校で観せられた「マタギ」という映画を思い出しました。内容はすっかり忘れましたが、風景とか猟師とかもろもろが。そもそもこの手の映画をガキに観せても良さも面白さもわからないわけで、その辺からして教育する側の頭の悪さみたいなものを意識しますが、話が逸れるのでこの辺で。

こういう映画は大人になってから観ましょう観せましょう。

このシーンがイイ!

第一部のエンディングはよかったですねぇ~。お互い意思の疎通ができてる、認め合ったんだ、って感じが。

ココが○

非常に真面目な映画で、ところどころで価値観の提示があります。

実は「自分さえよければいい」という今の風潮にかなり強烈なアンチテーゼを投げかけている面があって、今の時代だからこそ考えて欲しい部分が満載。

でも自分勝手な人はこういうの、スルーしちゃうんだろうな…。万が一観たとしても、きっと何を言っているのか理解できないであろうことが想像できるのが哀しい。

ココが×

まあとにかく底抜けに地味ですね。今日はお休みで激寝した後だったので平気でしたが、これが普通に起きた日とか仕事上がりに観てたら絶対に寝てたでしょう。

まさに「淡々と」した映画でしたが、それが悪いわけではないです。でも観るなら体調と相談したほうが無難です。

MVA

もはや「どっちにするか」というお話ですが、役者っぽいのはこちらの方、ということで。

ユーリー・ソローミン(アルセーニエフ役)

隊長の方。

デルスの方は、“本物の人じゃないか”というぐらい激ハマりしてたんですが、この隊長の渋さ、包容力、落ち着きの良さのほうが個人的にグッと来ました。

勝手な印象ですが、ソ連の軍人(厳密には軍人ではないようですが)は、もっとカリカリした人ばっかり、みたいな印象があるので、この人の落ち着き、ダンディさというのは予想外な良さがありましたね。

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