映画レビュー1383 『禁断の惑星』
今回はオススメされた映画なんですが、アマプラで有料だったものの100円だったのでこりゃラッキーとレンタルしました。
100円だと無料よりもラッキー感が増すバグが確認されています。
禁断の惑星
フレッド・M・ウィルコックス
シリル・ヒューム
アーヴィング・ブロック
アレン・アドラー
ウォルター・ピジョン
アン・フランシス
レスリー・ニールセン
ウォーレン・スティーヴンス
ジャック・ケリー
ベベ・アンド・ルイス・バロン
1956年3月15日 アメリカ
98分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
70年近く前にこれをやるアメリカのすごさ。
- 20年前に先遣隊が移住したとある星に着陸を試みるも、当時のメンバーから拒絶される
- 一応話をつけて着陸、交信相手の博士のもとへ行くと「自分以外は全員死んだ」とのこと
- 博士はこの星の歴史や科学レベルの高さを情報として提供するが…
- 後のSF映画に様々な影響を与えた金字塔的作品
あらすじ
SF映画の歴史においてかなり重要な作品のようですが、観るまでまったく知りませんでした。無知だぜ。
舞台は2200年代。宇宙への移住が進んでいる時代のようです。
アダムス機長(レスリー・ニールセン)率いる宇宙船は「アルテア4」と呼ばれる惑星を目指し、順調に着陸直前までこぎつけます。
20年前にはこの宇宙船と同様に地球からアルテア4にやってきた人たちがいて、環境の良さから移住したとのことなんですがその後連絡が絶たれてしまったため、その調査のためにやってきたのが今回のメンバーですよと。
着陸前にもしかしたら生き残りがいるかもしれない、と交信を試みたところ反応があり、相手はその前回やってきたメンバーの一人、モービアス博士(ウォルター・ピジョン)と判明しますが、彼は「着陸するな、今すぐ帰れ」とにべもない返答。
さすがにそうはいかないので交渉したところ「着陸はしてもいいが責任は持てない」とのことで不穏なスタートですが無事着陸、すぐさま謎のロボット・ロビーがやってきてモービアス博士の邸宅まで案内してくれます。
機長他2名と会ったモービアス博士は着陸前の冷たさとは打って変わって普通のおっさんで一安心だったんですが、曰く先遣隊で生き残ったのは自分だけであり、他にはこの星で生まれた彼の娘・アルティラ(アン・フランシス)と自らが作り上げたロボット・ロビーしかいないとのこと。
かつてこの星には「クレル人」と呼ばれる先住民族が高い文明を築き上げていたそうなんですが、彼らもなぜか突然滅亡し、そして博士とともにやってきたメンバーは正体不明の怪物に襲われて死んでしまった、と。
つまりは一見定住に向いた好条件の星のように見えてその実“見えない脅威”にさらされている星であり、一方で自分は地球に帰るつもりもないからこれ以上ここにいても意味がない、みたいな話をされるわけです。
とは言え「わかりました」とスゴスゴ帰ったら映画も終わっちゃうので結局滞在続行、その間博士にはクレル人が残した高度な文明の解説をしてもらいつつ案の定アルティラとイチャイチャし始める機長。なんだよこれ…!
やがて“見えない脅威”が迫ってきてあーだこーだ、ってな話なんですがあとはご覧頂いて系です。
物珍しさで勝負しない良さ
時代故に仕方のないことではありますが、ところどころいろいろチープさが目立つ古典SF。降り立った星の風景を始め、セット以外の背景は絵を使用しているのがすごく時代を感じますね。
しかし約70年前にこれを作っていたのかと思うとやっぱりアメリカすげーなと思わざるを得ません。さっき一覧を見て気付きましたが(映画の面白さは置いといて)日本じゃ「月は上りぬ」と「州崎パラダイス 赤信号」が公開されてた時期の間ですからね。どっちもモノクロですよ。
この時代にもう他の星に移住するSFを作ってるっていうんだからさすがです。
特に誰もが「いかにも人が入ってます感が最高」と愛でるに違いないロボット・ロビーはこの後のSFロボットの一つのモデルを確立したことで有名だそうで、アイザック・アシモフが考案したあの有名な「ロボット工学三原則」をより広め、物語のフックとしても上手に利用した例と言えそうです。というか「ロボット工学三原則」が登場するアシモフの短編集「われはロボット」は1950年らしいので、もしかしたらその三原則を反映したロボットが映像化されたのはこの映画が初めてとかじゃないですかね? 詳しいところはわかりませんが。いずれにしても始祖と言えそうなぐらいのロボット像ですよ。
他にも「超高速宇宙船による恒星間移動を初めて描いた」「電子音楽を初めて用いた」SF映画らしく、いろいろ後世への影響を与えた作品なんでしょう。
一方で昔のSFでよく見られるような、ベッタベタで笑っちゃう光沢感丸出しの宇宙服ではない、作業服のような(比較的自然に見える)宇宙服を使用しているのも地味ながらセンスが感じられ、「新しいことをやるぞ!」「どうだ見たこと無いだろ!」みたいなあざとさが感じられない若干の奥ゆかしさみたいなものも感じられて好印象でした。すごくスマートなSFだからこそ後に残ったのかもしれないな、と思ったり。
物語としてもただSF設定の物珍しさだけで引っ張るようなものではなく、次第にサスペンスに傾いていき、人間の内面性を問うような内容になっているのもとても良かったですね。だからこそ普遍的な名作として知られているということなんでしょう。
そういったこともあってか、古い映画ではありますが飽きることもなく最後までしっかり惹きつけられたのも良かったです。
どうしても「そこ有線なんだ」とか今の感覚からすると違和感を覚えてしまう描写もあるにはあるんですが、さすがに約70年前の映画にそこを突っ込むのは野暮も野暮、ボーヤーもボーヤーなのでそこは気にしないのがいいでしょう。
展開的に一部釈然としないところもありましたが、とは言え総じて「珍しい設定に頼りすぎない」作りは、その物珍しさとは対照的に地に足がついた物語に感じられ、なるほどこれはよく出来てるなと感心しました。
身の丈にあった新しさ
どうしても予算と表現の都合上、舞台を見ているような「場面の少なさ」は感じましたが、それもあまり広げすぎると話にまとまりが無くなりそうだし、やっぱりこの時代にやるならこれが正解だったんじゃないかなと思えるぐらいにいろいろ計算された映画のような気がします。意欲的に新しいことをやりつつ、必要以上に手を広げて破綻させないような作りというか。
最初に書いた通りどうしても時代が時代なのでチープさは目に付くし、今改めて観てわかりやすい凄さがある映画でもないんですが、反面目に見える・見えない問わず様々な工夫が印象的な映画になっているので、よくよく観ていくと確かにすごいなと感心してしまうような映画でしょう。
あとは何と言ってもロビーが癒やしなのでそこはぜひ観て頂きたいところ。かわいい。
このシーンがイイ!
クレル人の遺跡を巡るシーン、イラストなんですが壮大ですごく良いビジュアルでしたね。ああいうの大好きなので興奮しました。今作り直して観てみたい気もする。
ココが○
設定頼みでないしっかりとした物語。
それもそのはず、元々はシェイクスピアの「テンペスト」を元にしているらしいです。テンペスト自体を知らないのでまったくピンと来ていませんが。
ココが×
一部突っ込みたくなるような釈然としないところがあり、やや詰めが甘く感じられる点。
あと「脳が倍になる」って雑な機能なに!? 脳が倍、って表現としてバカすぎて最高だな、と笑いました。
MVA
心情的にはロビーなんですがロボなのでこちらの方に。
ウォルター・ピジョン(エドワード・モービアス博士役)
20年前から「アルテア4」で暮らしているヒゲのダンディな博士。ロビーを作った人でもあります。
主人公は機長かと思いきや博士の方らしく、なるほど主人公らしいしっかりとした演技とキャラクター。良かったです。