映画レビュー1129 『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』

この週は珍しく連日ドキュメンタリーです。

この映画もたまたまツイッターで発見して面白そうだなと思っていた一本。

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー

Fyre
監督

クリス・スミス

出演

ビリー・マクファーランド
ジャ・ルール

音楽

ジェイソン・ヒル

公開

2019年1月18日 各国

上映時間

97分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー

SNS全盛の今だからこそ観るべき!

8.5
インフルエンサーによって広まったゴージャスなフェス、その実態
  • バハマで開催予定のゴージャスなフェス、一気に客を集めるも内実は無茶苦茶
  • 予備知識無しの思いつきと勢いで客を集めたら大惨事になった現代らしい逸話
  • “バズる”マーケティングに潜む危険さがよくわかる
  • 現代人必見…かもしれない

あらすじ

作り物だったなら嘘臭くなっちゃってむしろここまでひどくは描けないであろうぐらいにひどい、現実とは思えない低レベルの企画と詐欺的な手法は今のSNS全盛時代ならではの産物であり、ひじょーに面白かったです。他人事だからこそ面白いと言えるわけですが。

なんだか今の(このレビューを書いている翌日がまさに開会式)オリンピックにも通じる“撤回する勇気”の無さ、見通しの甘さが痛くもあります。

若者向けの会員制クレジットカードベンチャーで稼いだ企業家、ビリー・マクファーランドと、彼の友人でもあるミュージシャンのジャ・ルールがかつてメデジン・カルテルの幹部が所有していたバハマの島に遊びに行った際、「ここでフェスやれば最高じゃね!?」とノリで企画したのが発端の「Fyre Festival(ファイア・フェスティバル)」。ビリーが手掛けようとしていたミュージシャンのブッキング用アプリ「Fyre」の宣伝という名目でこの名前になったようです。

若者を取り込むことにかけては非常に長けていたらしいビリーは、すぐにインフルエンサーやスーパーモデルを使った大規模なプロモーションを展開。一気に知名度を獲得したファイアフェスは、高級なヴィラや有名ミュージシャンの演奏、そして彼らとの食事等の企画を高値で販売、予約も早々に9割が埋まるという上々な滑り出しを記録。

しかしフェスを企画するのも初めてのビリー他スタッフたちはあらゆる部分で問題に直面し、さらに思い付き発案につきたった数か月の準備期間しか無いためにすべてが時限爆弾となって引き返せない状況に追い込まれていきます。

どう考えてもうまく行くはずのないファイアフェス、果たしてどのような結末を見せるのでしょうか。

他人事だからこそ楽しめる

このフェスは2017年の4月から5月にかけて予定されていたもので、つまりは今からたった4年前の話です。

僕はまったく知りませんでしたが、おそらくアメリカでは結構な話題になっていたんでしょう。と言うか日本でこの話が伝わってきていないのが不思議なぐらいに「初めて見た」レベルのひどいプロジェクトで、それ故にドキュメンタリーとしては美味しいことこの上ないテーマだと思います。

この映画の制作にはファイアフェス自体の企画・運営にも関わった、言わば“当事者”たちが参加しているため、そのこと自体に批判がありつつも、しかし彼らが参加しているからこそ企画当初のウェイウェイしている脳天気なビリーたちの姿も映像に収められているのがスゴイ。完全にリア充がノリで発案したらそんな簡単な話じゃ無かったわ…と涙目になっていく様を追って行くというなんともノンリア勢に嬉しい内容です。

また参加者たちや「このフェス怪しいぞ」と気付いて調査した人たちの証言も収録されていて、多角的にいかにひどい企画だったのかがわかる辺りも面白いところ。

おそらく一昔前であれば、マーケティングの段階からいろいろストッパーがかかってここまで無謀な展開にはならなかったんだろうと思うんですが、SNS全盛の今では広告の費用も(かつてのマス向けのものと比べれば)さしてかからず、また“インフルエンサー”がちょっと情報を流せばそれだけで人が集まる手軽さによって化物が出来上がってしまう怖さがよくわかり、まさに“さして知識もない人間がノリで企画したらとんでもないことになった”と言う冗談みたいな話が現実に起こる良い例を見せてくれています。

映画としてはこの前観た「プロジェクト X」のリアル版みたいなもので、しかしリアルのほうが当然ながらいろいろ影を落とす面もあり、部外者は笑っていられるものの実際に被害にあった人たちの気の毒さったらありません。

「他人の不幸は蜜の味」ではないですが、これほどまで当事者でないからこそ楽しめてしまうドキュメンタリーというのもなかなかない気はします。もう無茶苦茶面白かったですよ。良くないと思いつつも、浅はかな企画を考えた運営側とそれに乗せられて騙される参加者たちを良いつまみにして今日も酒が美味い。

ドキュメンタリーに興味がなくても

ちなみに同時期にHuluでもこのフェスの顛末を扱ったドキュメンタリー映画が作られているらしく、そちらはビリー本人のインタビューも交えて作られているとか。み、観たい…。

ドキュメンタリーとしては比較的若い人も興味を持ちやすい題材だし、あまりにもひどいが故に飽きずに観られると言う皮肉な映画です。

現実における失敗がひどければひどいほどドキュメンタリーとして面白くなる好例のような映画でしょう。普段あまりドキュメンタリーを観ない人もぜひ観てみて欲しい。それぐらい時代に即した面白さを持った映画だと思います。

ネタバレに終わった史上最高のパーティー

なんと謎にネタバレ項が登場。ちょっとだけ思ったことをこっちに書きます。

すべてが失敗に終わったあと、逮捕→釈放を経て即座に詐欺を働くビリーの姿を見てすごく違和感があったんだよね、と言う話。

基本的にこのファイアフェスについて、ビリーはあまりにも準備不足でバカだったけども開催自体は本気だったと思うんですよ。そこには純粋な思いがあって、良いものを提供したいと思っていただろうと。

決して最初からチープな作りで高額をだまし取ってやろうと思って企画していたわけではないと思っていたので、逮捕後に即座に詐欺師に“転落”していたのは結構衝撃を受けるぐらいに意外でした。

元々「若い連中はカンタンに金が取れる」と思っていたフシはあったんでしょうが、それにしても短期間で「不作為の詐欺から作為の詐欺師」に変わってしまったように見えて、そこが妙に“落ちた”感じがしたんですよね。そういう人だったのか、って。

いや別にファイアフェス企画中の時点から評価していたわけではないんですが、率先して詐欺行為を働くタイプだとは思ってなかったので、そこで結構驚きました。

それだけなんですけどね。書きたいのは。

このシーンがイイ!

具体的には避けますが、もう後戻りできなくなった段階以降は笑っちゃうやらかわいそうやらで…。特に「水の搬入」についてのエピソードについては思わず「まじかよ!」と声に出しちゃうぐらいにひどい話で面白かったです。もちろん当事者は笑えないんですが。

ココが○

なかなかこれだけしっかり楽しめるドキュメンタリーは少ないと思います。やっぱり現実に起きた事実がひどすぎるだけに面白いと言うか。興味を持てる人も多いでしょう。

ココが×

一部批判がある「当事者による弁明を助長している」傾向は確かにあるんだろうと思います。ただまあ…他人事で観ている分にはそこはあんまり気になりませんでしたけどね。内部の人間だからこそ語れる内容も多いので。

MVA

今回は「この人!」と決めるような内容でもないので該当者なしで。まあそもそもドキュメンタリーにMVAなんてあってないようなものなので。

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