映画レビュー1025 『ゲット・アウト』

ご存知(?)ゲット・アウト。この映画も公開当時かなり話題になっていた記憶があります。っていうか最近だと思ってたらもう3年前っていうね…。

例によってネトフリ配信終了がやってきますよということで、グロくなければ良いなぁと思いつつ観ました。

ゲット・アウト

Get Out
監督

ジョーダン・ピール

脚本

ジョーダン・ピール

出演

ダニエル・カルーヤ
アリソン・ウィリアムズ
ブラッドリー・ウィットフォード
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
スティーヴン・ルート
キース・スタンフィールド
キャサリン・キーナー

音楽

マイケル・エイブルズ

公開

2017年2月24日 アメリカ

上映時間

103分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

ゲット・アウト

回避不能なトラップがワイコー。

8.0
初めて訪ねる彼女の実家、そこで待ち受ける恐怖とは…!
  • 白人女性と付き合う黒人男性が彼女の実家へ初訪問
  • “リベラル”な家庭で差別的な扱いもなく歓迎されるものの…!
  • ギリギリありそうなリアリティと差別問題をうまく織り交ぜた良質ホラー
  • ただ疑心暗鬼方面に振りすぎな印象が少々残念

あらすじ

グロい映画が苦手なので基本的にホラーはあんまり観ないんですが、この映画はかなり話題になっていたしジャケットの光景も散々目にしてきたのでここは一つ勇気を出して、と明るい日中に観ましたが、少しだけグロい場面はあったものの“グロ押し”で見せるタイプの映画ではないので、僕のようにグロに弱い人でも比較的安心して観られるホラーかもしれません。

ただホラーと言うよりはスリラーとかサスペンスに近い映画のような印象もあって、それが自分にとっては逆に良かったかなと。

主人公の黒人青年、クリス(ダニエル・カルーヤ)は白人女性の恋人・ローズ(アリソン・ウィリアムズ)とラブラブな毎日を送るクソリア充野郎です。交際期間は5か月とのことで一番楽しい時期ですね。ケッ。

この度初めて一緒にローズの実家にご挨拶に行くこととなりまして、「連絡もなしにいきなり黒人の彼氏を連れて行って大丈夫なのか?」と不安なクリスに対し、「お父さんは仮に3期目があればオバマに投票するって公言してるぐらいだし大丈夫よ」と意に介さないローズ。それでも彼女にとっては「初めての黒人彼氏」と言うことでクリスは不安が拭えません。

とは言えごねていてもしょうがない…ということで一緒に向かい、途中ちょっとしたトラブルがありつつ無事到着、クリスの不安をよそにご両親からの歓迎を受けて一安心といったところ。

何やら「普通じゃない」雰囲気の気味の悪い黒人使用人2人に胸騒ぎを覚えつつ、それでも一応受け入れられてるっぽいし…とアーミテージ家に滞在するクリス。夜中に外に出て一服したあと、ローズ母に招かれて禁煙セラピーを受けるんですが、その時不思議な催眠術にかけられまして…あとはご覧くださいませ。

回避不能感が良い

端的に言えば「彼女の実家に行ったらいくつかの怪しい出来事に遭遇し、果たしてこの家はどうなってるんだってばよ」ってなお話なんですが、一応「催眠術」というちょっと怪しげな要素がフックになってはいるものの、それ以外は霊やら何やらの非科学的な要素で怖がらせるタイプの話ではなく、全体的には「意外とあるんじゃねーの」と思えるリアリティがなかなかいい感じに怖かったですね…。

またクリスが巻き込まれる“トラップ”はなかなか巧妙なもので、これ絶対回避不能じゃない!? と思わせるのも良い。その辺の導入が「物語を進めるために強引にそこに行くように仕向けた」みたいな無理矢理なものだと本当に興ざめなので、ここの回避不能感はかなり映画の出来を語る上で大きいと思います。自分だったらどうしただろうと考えながら観ていましたが、いや(タバコは吸わないけど)これ絶対喰らってるわと。マジコエーと中学生のような感想を抱くわけです。

作りのうまさと惜しい点、どっちもあり

最初に書いた通り、僕はあんまりホラーを観ないために詳しくないからアレなんですが、なんとなくイメージとしてホラー映画は「怖がらせればよし」みたいな印象がある中、この映画は割と伏線をいろいろ配置しつつそれを回収させる設定の巧みさが光っていて、最終的に「こういうお話なんですよ」とわかった上で振り返ると「じゃああれの意味は…キヤー!!」みたいな“後から振り返り恐怖”みたいなゾワゾワする感じもまた良かったですね。

単純に怖いもの、驚かせるようなもののみで構築された中身がうっすいホラーではなく、きちんと「黒人差別」のような観客の共通認識も利用しつつ社会問題にも通じるようなリアリティを込め、最終的にそれが浮かび上がってくるという構成が非常に巧みで、なるほどこれは評判になっただけあるなと。

スリラーに近いと言うことも書きましたが、それはおそらくホラーによくある非人間系(幽霊とかゾンビとか)がメインのお話ではなく、人間同士のいろいろで構築されたお話であるが故に「有り得そう」な話になっている点が大きいんでしょうね。「何者かわからない怖さ」ではないからスリラーっぽく感じられるような。そこがまた僕としては嬉しい誤算ではありました。

結局一番怖いのは人間なんだぜ…。

ただ…特に序盤から中盤にかけてなんですが、主人公のクリス自身も結構怪しいんですよ。立ち居振る舞いが普通じゃないというか、「そういう受け答えする?」みたいな疑問もちょっとあって、もう全体的に胡散臭い人ばっかりだな、怪しい人間ばっかりだな、という疑心暗鬼方面に寄せすぎている印象があり、そこがちょっと惜しいな、と。

正直「おそらくこの人は善人だな」と思えたのは最初から最後までクリスの親友ロッドぐらいのもので、あとはクリス含めてなんだか怪しく見えたのがもったいないというか、余計なノイズが入っちゃってるような印象はありました。

ただこれは彼がリア充故に僕が気に食わなかった可能性も十分にあります。単なるやっかみっていう。

ホラー苦手でも観やすい

お話としてはなかなか驚きがあるし、その上嫌悪感を抱かせるには十分な気分の悪さもホラーらしい良さがあり、僕のようにホラーには縁遠い人にとっても楽しめるタイプの映画だと思います。

それだけにちょっと煽り&疑心暗鬼に振っちゃって「ホラー感」を出しすぎちゃってるのが逆に惜しいんですが、これはこれでホラーとして必須なのかもしれないですね。わからないけど。不文律的な感じで。

とかく重いものになりがちな差別問題も程よく練り込みつつ娯楽ホラーとして綺麗にまとまっている映画ということでなかなかの良作ではないでしょうか。

ちなみに鑑賞後に詳しくネタバレを書いている方のブログを読んだんですが、かなりいろんなシーンで差別に関するメタファーや風刺が込められている映画ということを知りました。なので知識がある方が観れば相当な傑作になると思われますが、悲しいかな僕のような無学の人間が観ると「なかなか良く出来てるね」レベルに感じられてしまうという…。

そう言う意味で「真の価値を味わう」には人を選ぶ映画なのかもしれません。

ネタバ・レウト

話の流れ的に最後はおそらく「助かったクリスが一家殺害の容疑をかけられて逮捕される」ものだと思っていたので、エンディングが(一応)ハッピーエンドだったのがすごく意外だったんですが、これはやっぱり最初はバッドエンドだったのが紆余曲折ありつつこの形に落ち着いたようですね。

正直「結局ハッピーエンドなのかー」という残念感はありましたが、かと言ってあんまり「黒人は大変なんだぞ」って方向に行きすぎても反発が強まりそうだし、これはこれでこういう形に落ち着いて良かったような気もします。

しかしねー、この「かわいい彼女に数か月かけて籠絡され、ちょっとした会話から催眠術にかけられる」っていうのはどう考えても回避しようがないですよね。

ローズが次の獲物を物色しているシーンがあったように、もう完全に「黒人青年の身体をもらう」つもりで偽の好意を持って寄ってこられたら…そりゃあ大抵の男は流されちゃいますよね…。当然セックスだってしてるわけだし。

途中も「これ彼女もグルなんだろうとは思うけど、実際にグルだったら立ち直れ無いだろうなー」と思いつつ観ていましたが、やっぱりグルでちょっとショックと言うか、クリスの気持ちを思うといたたまれない感ハンパなかったですよ。リア充って罵っちゃってごめんね、みたいな。

母親の催眠術のくだりも禁煙を絡ませてすごくうまく誘導しているし、そもそも彼女の母親に「ちょっと話しましょう」って言われたらそりゃ断れないし、話しだしたら(催眠術の技術がすごすぎて)すぐフラグが立っちゃうし、こりゃキツイですよ。避けようがない。(催眠術そのものの信ぴょう性みたいなものについてはここでは置いておきましょう)

ただクリスが助かった最大のポイントである「ソファから取り出した綿で作った耳栓」についてはうそーんと思ったことも一応書いておきたいと思います。両手縛られてさして動けない状態でどうやって耳に詰めたんや…。頭を手の方に寄せたとしても無理じゃないかあれ…。

まああの綿については、かつて黒人が綿花摘みで酷使されていたことのメタファーだそうなので、そこに対してつっこむのも野暮かもしれません。それでも物理的に耳に詰めるの無理じゃね? と思うんですが…。

それとエンドロール直前、死ぬ間際のローズが言う「愛してる」はさすがに助けて欲しいがための詭弁で間違いないと思うんですが、あれが万が一本当に「愛してる(ことに気付いた)」だったらまたちょっと印象が変わるし、そこも面白いところではあります。まあ100%詭弁だと思いますけどね。クソビッチだしね、あいつ。

次の獲物を物色するシーンが無ければ万が一本当かもと思えたかもしれませんが…。だとするとあのセリフ、いらなかったような気も…。どうせなら「地獄に堕ちろ」ぐらい言って欲しかった。

このシーンがイイ!

アーミテージ家に仕える女性使用人、ジョージナとクリスが会話するシーン。

もう不気味だし意味わからないしでただただこえーなと思いながら観てたんですが、後半その意味するところがわかったときにエグいな、と強烈に心に残りましたね…。いやあれはいいシーンだわ…。

ココが○

グロさ控えめで観やすく、伏線の置き方と回収の仕方がとても上手い点。

ジョーダン・ピールはこれが初監督作品のようですが、普通にサスペンスとか作ってもかなり良いものを作りそうな気がします。「ブラック・クランズマン」も観たい。

ココが×

やっぱり少し「どうだ不気味だろう」って怖がらせる方に寄せているのが一番気になったところ。特に主人公クリスの立ち居振る舞いには少し違和感がありました。

MVA

またもケイレブ・ランドリー・ジョーンズの曲者っぷりが良かったんですが、まあ無難にこの人にします。

ダニエル・カルーヤ(クリス・ワシントン役)

主人公。

上に書いたように若干立ち居振る舞いに違和感がありつつ、しかしジャケットでもおなじみのシーンとか、なかなか演技力が素晴らしくて良かったですね。

ローズ役のアリソン・ウィリアムズももちろん良かった。絶妙にかわいすぎない感じがリアルで。

彼女はコメディアンだそうで、そこも意外。コメディアン出身の役者さんって上手い人多いよな〜。

大学生役だけどアラサーなのも逆に良い。(逆に)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA