映画レビュー1050 『白鯨との闘い』
はい出たネトフリ終了間際シリーズ。はい出たー。
これまた気になっていた映画なので一応観ておくか的なチョイスなんですが、しかし監督はあまり個人的に相性が良くないロン・ハワード…果たしてどうなんでしょうかね。
白鯨との闘い
チャールズ・リーヴィット
リック・ジャッファ
アマンダ・シルヴァー
『復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇』
ナサニエル・フィルブリック
2015年12月11日 アメリカ
121分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)
アクション控えめのサバイバルで結構地味。
- 回想形式でお送りする「白鯨との闘い」
- 予告編のアクション満載なイメージと反してサバイバル色強め
- 結末が結末なのでやや消化不良気味
- なかなかの豪華キャストは見どころアリ
あらすじ
自分で評価しておいてなんですが、少々辛めの評価ではある気はします。そこまで悪い映画ではないです。
ただねー、僕はロン・ハワードに厳しいんですよ。「ラッシュ」は良かったけど、それ以外はほとんど合わなくて。
なんと言っても「ダ・ヴィンチ・コード」がクソすぎた記憶が強烈に残っているので、その記憶のせいでこいつぁダメだと見切った部分があるんですが、そういう先入観がない人であればそれなりに楽しめそうな気もします。
とは言え、地味だけど。
ある一人の男にある一人の男が手紙を書き、話を聞き出そうとするところから物語は始まります。
手紙を送ったのは、新進作家のハーマン・メルヴィル(ベン・ウィショー)。彼はかつて「エセックス号」という捕鯨船に乗り、巨大な白いマッコウクジラと戦った船員の中で唯一生き残っている人物、トーマス(ブレンダン・グリーソン)という男にその時の話を聞き、一冊の本にしようと考えていたのでした。
手紙の返事もないため、直接会いに行くも無碍に断られるハーマンですが、長年その時の経験で苦しんでいたトーマスを思った奥さんが「話しなさい」と説得、かくして彼の口から語られる“事実”は想像を絶する過酷なものでしたとさ…。
というのが前段。本編はその過去の「エセックス号における白鯨との闘い」を描きます。
エセックス号では“家柄”で選ばれた名前だけの新人船長・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー)と、経験豊富で実力もあるものの家柄がふさわしくないために船長になれない一等航海士・チェイス(クリス・ヘムズワース)の二人が互いに反発しながら旅をしていて、さながら「ラッシュ」の主人公二人と同じような感じ。ロン・ハワードはこういう話が好きなのかな。
いがみ合いつつもなかなか戦果(鯨油)の上がらない状況の中、旅先で聞いた話に珍しく“利害が一致”した二人は、まだ見ぬ鯨の大群を目指して航海しているところに、件の巨大な白いマッコウクジラと出会うことになります。
高揚感に欠ける内容
ちなみにトーマスを「唯一の生き残り」と書きましたが、それはハーマンが取材をしようとした年代においての話であって、エセックス号に乗っていたものの生還した人は他にもいます。
とは言えその旅は文字通り壮絶なものであり、それ故にトーマスは誰にも詳細を語らず、今に至るまで隠居していた、という内容。ちなみに若かりし頃(エセックス号乗船時)のトーマスを演じるのはトムホです。トムホがブレンダン・グリーソンになるなんて…時は残酷なのね…。
冒頭のまとめに書いた通り、僕はてっきりもっと“白鯨”とやってやられてのバトルを何度も繰り返すお話なのかと思っていたんですが、実際は白鯨によってほぼ壊滅状態に追いやられてしまった彼らがいかにして生き残ろうとするかを描くサバイバルムービーという色合いが濃く、(勝手に)期待していたような内容とは違いました。
そこがリアルと言えばリアルではあるし、過去の話とは言え“捕鯨”という欧米的にセンシティブな内容を上手く現代映画として消化するための構造だなとも思うんですが、とは言えやっぱりやや地味な面は否めず。
最終的に語りたいこと、物語の帰結についても決して悪くはないし、道中もひどく退屈というわけでもないんですが…やっぱりちょっと高揚感が足りないというか、中盤以降はずっとテンション低くジリジリとしたサバイバルを観ているだけのお話なので、どうしても「思ってたんと違う」となりがちなのは仕方がないように思います。
これ、主人公がクリヘムだからまだ絵が保つというか、それなりに力のある絵になっていたような気がするし、もっと地味なキャストだったらかなり眠くなる映画になったんじゃないかと思うんですよね。この辺はロン・ハワードとクリント・イーストウッドの力量の差みたいなものを感じたり感じなかったりですよ。適当なこと言ってますけども。
誰に向けて作った映画なんだろう
ということでね、例によって特に他に語ることもなく、ですよ。
少々穿った言い方になってしまいますが、総論としては「思っていた以上に地味な内容を豪華キャストで観られるようにした映画」という感じ。
アクションとしては間違いなく物足りないし、かと言ってサバイバルを主眼にしたドラマにしてもあまりピークがないので…正直どこを見どころとして捉えれば良いのかわからない映画になってしまったような気がします。
きっと盛り上げどころと、そこまでの高め方が少し足りていなかったのかなと。テーマとしては悪くないと思うんですけどね…。
結局この映画が何を見せたいのか、どういう観客をターゲットにしているのかがあまりピンとこず、結局クリヘムファンが観るだけじゃねーのみたいな生ぬるい映画になってしまっていると思いますが、それもすべて僕がロン・ハワードに厳しい故、のような気もするのであんまり参考にしないでね。バイバーイ。(フランクエンド)
このシーンがイイ!
鯨油を取るシーンは勉強になったというか、なるほどそんなに大変なのかと面白かったですね。
ココが○
ご存知の方も多いと思いますが、ベン・ウィショー演じる「ハーマン・メルヴィル」は実在の作家さんで、「白鯨」を執筆した方として有名です。
つまりこの映画は「白鯨」の出版裏話的な映画(白鯨そのものの映画化ではなく、白鯨を執筆するに至ったアレコレの話)になるわけですが、この辺「白鯨」に慣れ親しんでいる人が観れば「なるほどそんなことが!」的に楽しめるのかもしれません。
残念ながら僕は白鯨を読んでいないので、その辺りもピンと来ずにこればっかりはロン・ハワードに申し訳ない限りなんですが。
というか白鯨すら読んでいない人間が「地味」だのなんだの言うのもおこがましい気もしますね。なので読了済みの人向けの映画なのかもしれません。
ココが×
で、無学な僕としては自分勝手に「地味だ」と文句を言うわけですよ。
というか話全体は悪くないと思うだけに…やっぱり見せ方、つまりは監督の問題じゃねーのとアンチロン・ハワード的に思います。
MVA
密かに豪華キャストのコチラの映画、やっぱりこの人になるのかなー。
クリス・ヘムズワース(オーウェン・チェイス役)
主人公の一等航海士。船長とは犬猿の仲。
「ソー」でおなじみのクリヘムさん、どっちかと言うとコメディ適性のほうが高い役者さんだと思いますが、しかしシリアスな演技もなかなかお見事。
やっぱりこの人は顔(と体)が良すぎるので出てくるだけで画面が保つ、華があるよなと改めて思いました。かっこいいんだよね、やっぱり。