映画レビュー0699 『インファナル・アフェア』

今回はNetflixより。この続編2本の配信終了が迫っているので観てみたんですが…結局続編は観る前に配信終了が来てしまい、無念。

でも前からこの映画も観たかったのでまあ良いかなということで。ご存知「ディパーテッド」のリメイク元映画です。

インファナル・アフェア

Infernal Affairs
監督
アンドリュー・ラウ
アラン・マック
脚本
アラン・マック
フェリックス・チョン
出演
エリック・ツァン
ケリー・チャン
音楽
コンフォート・チャン
公開
2002年12月12日 香港
上映時間
102分
製作国
中国(香港)
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

インファナル・アフェア

同じ警察学校に通った二人、ヤンとラウ。ヤンは潜入捜査官としてマフィアに入り込み、ラウはマフィアから警察に潜入するために送られた人間だった。それぞれがそれぞれの“仮の姿”で地位を高めていく中、ある取引をきっかけに双方が組織内にいるスパイの存在に気付く。

エンディングに東西思想の違いが出ていて面白い。

9.0

なにせ僕が「ディパーテッド」を観たのももう結構前のことなので細部はかなり忘れているとは思うんですが、ただ思い出す限りでは…「ディパーテッド」は基本的にはだいぶこの映画に忠実な内容だったような気がします。特に終盤までは舞台とヒロインの扱い以外は概ね同じような印象でした。が、その終盤の違い…要は後味に関わる部分がまったく違うので、そこが面白いな〜と思いつつ。どちらかが良いのかは難しいところですが、結末に関しては僕はこっちの方が好みでした。「ディパーテッド」でモロに指摘していた「楽な方に逃げた」展開ではなかったので。

ただこっちは(最初からそういう想定だったのかはわかりませんが)3部作、「ディパーテッド」は1作で完結なので、その辺で整合性を取るためにああしたというのも理解できます。

むしろ気になったのは上映時間の方で、ほぼ同じでありながら「ディパーテッド」は1.5倍になっているのがちょっと不思議。別に間延びしたような印象もなかったので、やっぱりヒロイン(ヴェラ・ファーミガ)の部分とかで膨らませたせいなんでしょうね。他にも重要なキャラの違いがあるんですが、この辺は結末に関わってくるのでネタバレ回避のために割愛します。

「ディパーテッド」を観た方には説明不要だと思いますが、一応ご説明。

オープニングはサム…「ディパーテッド」で言うところのジャック・ニコルソンが演じていたマフィアのボス、彼が若者たちに演説しているところから始まります。その演説を聞いている若者の一人がラウ。後に警察学校に通い、サムのスパイとして警察に入り込む男です。「ディパーテッド」ではマット・デイモンが演じていましたが、こちらではアンディ・ラウが演じます。

対するヤンは、警察幹部に優秀な才能を見出され「幹部二人しか知らない潜入捜査官」として裏社会へ。数年の他組織への潜入捜査を経て、3年前からサムの組織に入り込んで捜査を続けている、という状況。こちらは「ディパーテッド」ではレオナルド・ディカプリオ、今作はトニー・レオンが演じます。

余談ですが若い頃は二人とも別の役者さんが演じていて、ラウはまだイメージが近かったのでいいんですが、ヤンは急に印象が変わるので結構ビックリ。お前誰だよ感アリ。

すでにオープニングの時点でヤンは上司との電話で「あんたがやってみろ!!」とブチ切れており、もう潜入捜査はウンザリながらいまだに続けさせられているという状況。サムからも信頼されているようで、右腕的なポジションにいるようです。

対してラウは順調に警察での信頼を勝ち得ているようで、出世街道まっしぐら。まあどっちも順調に周りを騙して来てるよね、という感じ。

その二人がそれぞれに情報を提供し合う中、ある一つの取引の日に「ついにサムを捕まえる時が来た」と警察は本腰を入れて捜査に向かい、サム側はサム側でラウの情報を元になんとか逃げおおせようというところで、それぞれが「組織の内部にスパイがいるらしい」ことに気付き、いよいよ双方のマジバトルが始まりまっせ、というお話です。なお、ヤンとラウはお互いちょっとした面識はあるんですが、もちろん双方がスパイはおろか何をしているかも知りません。

全体的にはさすがハリウッド…と言って良いのかわかりませんが、見せ方という意味では「ディパーテッド」の方がうまかったような記憶はあります。役者さんへの親近感もあるでしょうね。ディカプリオにマット・デイモンですからね。

それと中国語と英語の違いも大きい気はします。やっぱり英語の方が耳馴染みもあるし、語弊がある言い方かもしれませんが邪魔にならない感じで。

ただあまり観ていないアジア映画の割に、重要キャラと言えるウォン警視(ディパーテッドにおけるマーティン・シーン)にたまたまこの前観た「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」で印象的だったアンソニー・ウォンが出ていたりして、ちょっと盛り上がったりもしました。

そして何よりヤンを演じるトニー・レオンですよ。すげーかっこいいの。

「二枚目!」って感じじゃないんですけどね。脱力系のようでいて実力がある感じというか、僕の好きなタイプのかっこよさで。彼のお陰でかなり鑑賞意欲が湧いた部分はあったと思います。もっといかにもなアジア系の俳優さんだったら辛かったかもしれない。ちょっとある種かわいい雰囲気なんですが、でもカッコイイっていうのが良くて。「奥田民生とユースケ・サンタマリアを足して2で割って良い遺伝子だけ取り出した」感じでした。(わかりにくい)

物語としてはやはりどうしても一度観ている内容なので、そこまで「どうなんねんどうなんねん…!」というようなドキドキ感は無かったんですが、ただ知っていた割にはかなり集中して楽しめたし、やっぱり改めてすごく良くできた話なんだな、と納得。

こちらはあちらと比べるとかなり男臭い、女性の影が薄い硬派な映画になっているんですが、その分尺が短めのせいか途切れない緊張感で一気に見せてくれます。

いわゆる「香港ノワール」の代表作と言える映画だと思いますが、僕が事前に予想していた「香港ノワール」のイメージよりもより現実的で観やすい印象もあり、そこもまた良かったのかなと。って個人の印象なんでアレですが。「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」の方がノワール感があった気がする。

それが悪いというわけではなくて、イメージ勝負ではない実力勝負感が気持ちよかったというか。思わせぶりな感じで引っ張るようなこともなく、「お互いにスパイがいる」という単純な構図をきっちり肉付けして見せてくれる感じで。文句なしに面白かったですね。

一番の違いとなるエンディングについてはネタバレになるので避けますが、そこの部分の違いはかなり大きなものだと思うので、両方見比べてどっちが好きかを考えるのもまた一興ではないかと思います。Netflixからは続編が無くなってしまいましたが、いつかぜひ続きも観たいですね。

「ディパーテッド」と近い物語なだけに中国系アジア映画の入り口としてもかなり観やすいので、よりいろんな映画を観たいぞ、というような人にもオススメできるのではないでしょうか。面白かったよ!

機会があったらぜひ。

インファナル・ネタバレ

「ディパーテッド」との一番の違いのエンディング、そこに関わるキャラクターとしてマーク・ウォールバーグが演じていたディグナム巡査部長の役がごっそりいなくなっているのがまず大きなポイント。僕はウォン警視が死んだ後に、ラウを糾弾していたおっちゃんが急に目立ち始めたのを観て「もしやこいつがウォルバーグの代わりか…!」とハラハラしていたんですが、彼はただのボンクラ刑事でした。結局ディグナム巡査部長の役割の人はおらず、ラウは死なずに一人「優秀な警官のまま」エンディングを迎えます。

表面上は自分の正体を知る人間をすべて殺し、まんまと出世街道に残った“善人”ラウの大勝利…というように見える展開ではあるものの、劇中強調されている通り、仏教で言う“無間地獄”、つまり彼が行ってきた殺人への罪の意識に永遠に苦しむことになる…というなかなか深いエンディングは、「なるほどそういう話なのかー!」と深く感動しました。この辺東西思想の違いが現れていて面白いねと思うと同時に、やっぱり宗教に疎いとは言え東洋人である自分はこういう価値観に馴染みやすいのかな、という気もします。おそらくあっち(アメリカ)はこういう話ってピンとこなかったり「わかるけどそうじゃないでしょ」みたいな感じなのかもしれないですね。

やっぱり「ディパーテッド」では(1作で終わらせるためでもあるんでしょうが)いきなり「全部わかってたんだよクソが」的にマーク・ウォールバーグが全部持っていくという唐突な展開がすごく残念だったので、そこを(こっちが元ですが)違う形で始末をつけてくれたこの映画は本当に観てよかったと思います。「ディパーテッド」での不満をきっちり解消してくれたので。

多分生き残るのが逆だと面白くないだけに、この映画はこの終わり方が正解なんだろうな〜うんうん、と一人納得。とてもよく出来たエンディングだと思います。

このシーンがイイ!

タクシーのシーンでしょうか。似たようなシーンは「ディパーテッド」にもありましたが、こっちの方が見せ方、衝撃度でだいぶ上だった気がします。あのシーンはすごいし素晴らしい。

あとオープニング直後のオーディオショップのシーンもすごく良い。最後まで観て良さがわかる感じ。

ココが○

エンディング以外で言えば「ディパーテッド」におけるヴェラ・ファーミガのポジション(精神科医)の違いが一番大きい気がしましたが、あの映画のような三角関係にせず、あくまで男同士の対決のお話になっているのがとても良いなと思います。とは言え三角関係にするのであればヴェラ・ファーミガっていうチョイスが最高なんですけどね。あれはあれでいいけど、っていう。

やっぱり(どういうプロセスだったかは忘れましたが)ポコチン出ちゃったシーンとかを思い出すと、「ディパーテッド」はやや軽かったような気がしますね。良くも悪くも娯楽に寄っているというか。こっちはマジでマジなマジもんだぜ、みたいなマジ感がいいぞ、と。(意味不明)

ココが×

とは言えエンディングの違いはかなり好き嫌いが分かれるであろう気もするので、そこが人によってはダメかもしれません。でもよほどアジア系映画に抵抗がなければまず外さない名作と言っていいと思います。

正直、こっちを先に観たかった…。

MVA

アンディ・ラウもアンソニー・ウォンも良かったんですけどねー。でもやっぱりこの人でしょう。

トニー・レオン(ヤン役)

マフィアに潜入する方の主人公。

もう本当にカッコイイんですよ。人に好かれる感じのイケメンで。ジリジリとした焦りの演技もとても良かったです。

トニー・レオンってレッド・クリフ出てたよなぁ…と思ったんですが、やっぱりああいう日本で言うところの時代劇的な扮装をしてると全然違いますね。現代風だとこんな感じなのかー、と驚きました。

それと余談ですが、一番の悪役であるサム役の人、「悪い小堺一機っぽいなー」と思って観ていましたが、Wikipediaの彼の項目に飛ぶとダブルピースの写真でお出迎えしてくれるという素敵さにグッと来ました。マジ余談。

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