映画レビュー1229 『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』

今回は以前ウォッチパーティの候補に上がっていて面白そうだなと思っていたものの選ばれなかった作品。観たかったので観たよと。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

Les traducteurs
監督
脚本
出演

ランベール・ウィルソン
オルガ・キュリレンコ
アレックス・ロウザー
リッカルド・スカマルチョ
エドゥアルド・ノリエガ
シセ・バベット・クヌッセン
アンナ・マリア・シュトルム
フレデリック・チョー
マリア・レイチ
マノリス・マブロマタキス
パトリック・ボーショー

音楽

三宅純

公開

2019年12月20日 ポーランド

上映時間

105分

製作国

フランス・ベルギー

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

イイ話に持っていかない素直さが良い。

8.0
全世界待望の超ヒット作翻訳のため翻訳家たちが“監禁”状態の中、原稿の一部が流出する
  • 出せば超ベストセラー間違い無しの超ヒット作完結編翻訳のため9人が集められる
  • 同時発売のため全員監禁状態で外との通信手段は絶たれる
  • しかしなぜか原稿の一部が流出、出版元の社長が脅され「犯人はこの中にいる」
  • 悪役が徹頭徹尾クソ野郎なのが◎

あらすじ

結構期待して観たんですが期待通りに面白かったな、という感じでしょうか。ちょうどいい感。

フランスの人里離れた洋館に、とある9人が集められるところから物語はスタート。

国も性別も違うこの9人は全員翻訳家であり、全世界で爆発的なヒットを記録しているミステリー小説「デダリュス」の完結編を翻訳するために出版社から集められた人たちでございます。

とにかくこの「デダリュス」は化物じみたヒット作(ハリポタ最終作的なイメージでしょうか)のようで、「最も売上の見込まれる9か国語(英語・ロシア語・スペイン語・デンマーク語・イタリア語・ドイツ語・中国語・ポルトガル語・ギリシア語)」での同時発売を目指し、翻訳家を集めて(快適な)監禁状態に置き、リークを防止して最大限稼いでやるぞスタイルでの翻訳作業が始まるわけです。ちなみに本当のところは忘れましたがおそらく元の言語がフランス語だと思われるので、それも含めた10か国語での同時発売、ということになるでしょうか。

彼らは当然ながら外部との通信手段も絶たれてスマホの類は没収、もちろん電話もできないしネットも使えません。

不満はあれど待遇自体は実に良いもので、プールその他で運動することもできるし、食事は一流の料理でおもてなし。まあしょうがない乗りかかった船だし…と翻訳を始める面々。

しかし翻訳作業が始まって少し経ったあと、版元の社長・エリック(ランベール・ウィルソン)の元に「デダリュス最新作の冒頭10ページが流出した」との一報が入り、さらにそれを受けて「24時間以内に500万ユーロを支払わなければ次の100ページも公開する」との脅迫が。

原本は厳重な管理の元にエリックが所持しており、他にこの原稿の内容を知ることができるのは集められた9人のみ。

かくしてエリックの“犯人探し”が始まるわけですが…真相はいかに…!

いい感じに珍しく、わかりやすい

「ハリポタみたいなもん」と書いておいてなんですが、実際は「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとしたダン・ブラウン原作の「ロバート・ラングドン」シリーズの4作目、「インフェルノ」出版の際に出版元が「翻訳家を地下室に隔離して翻訳させた」実話から着想を得て作ったそうです。なのでこの異常な翻訳進行もあながち大げさではない…といったところでしょうか。

実は上記あらすじでは触れていませんが、割と早めに「刑務所でエリックと誰かが対面している(つまり時間的に翻訳作業の後)」シーンや、原作者とエリックが会話するシーン(同じく翻訳作業の前)も出てきて、若干時系列が前後しますがわかりにくい話ではありません。

「犯人が誰なんだ」というのは割と早めに明かされるので、重要なのはその動機と周辺事情なんですが、この辺は(読みやすい人もいるようですが)そこそこ二転三転して飽きさせず、僕としては素直に楽しめました。「なるほどーそうか〜」って感じで。犯人自体はすぐわかりましたが、その後のいろいろについては予想していなくてその分楽しめたというか。

いや確かにいろいろ考えれば「それしかない」のも事実なんですが、とは言え裏読みしすぎてもつまらなくなってしまうこともあって最近はあんまり観ながら予想しないようにしているので、それが功を奏して楽しめたかなと。

設定自体も面白いし、そこに「あり得ない流出」から脅迫、そして過去を交えた答え合わせは破綻もしていなくて良い仕立てだと思います。誰が観ても結構素直に楽しめる「珍しさ」と「わかりやすさ」が両立したいい映画だと思いますよ。

あとは誰とは言いませんが、途中から明確に「ああこの人悪役なんだ」とわかってからのその人のクズっぷりがいい。こりゃ確かにクソ野郎だわ、と思わせてくれる悪役っぷり。

例によって「最終的にちょっといい話にしますよ系」も大嫌いなので、最後までクソ野郎で妙な功名心みたいなものを見せてこなかったのが好きでした。そこも含めてわかりやすいし、ブレてないので好感が持てます。

比較的地味なメンバーではありつつも

この手のお話は事前情報がない方が面白いのは間違いないと思うのでこの辺で手仕舞いしてですね、あとはご覧くださいませといういつものパターンですよ。

日本人的に馴染みがあるのはおそらくオルガ・キュリレンコぐらいの、こう言っちゃーなんですが地味なメンバーの映画ではありますが、しかしなかなかしっかり面白い良い映画でした。ちゃんと娯楽してるし、重くもないし。

全然伝わらないと思いますが、なんとなくゴルゴ13でありそうな話だなーと思いました。そこがまた良かったという。

ネタバレしたベストセラー

大した話じゃないんですが、ちょこっと。

まあ「怪しく見えるように描いている」から当たり前ですが、いわゆる“犯人”はアレックスだろうなと思って観ていました。いかにもワケアリの最年少参加者で怪しすぎるし。

それでも彼が本当の作者だったというのはまったく予想しておらず、普通にのほほんと爺さんが作者なんだろうなと思って観ていたのでとても良いお客さんです。

映画冒頭で爺さんの店が燃えていたので、「ははーん、エリックは作者を殺してもうこの世にいない状況だからアレックスの要求(作者に会わせろ)も飲めないんだな」とかしたり顔で思っていたらぜんぜん違う話だったよ、っていう。

この手の話としては珍しくあまりアラのない話だったのもポイントが高いと思います。僕が気付いてなかっただけかもしれませんが。

ただ「強盗計画」自体は無くても成立するだろうとも思うので…結局あれで話を膨らましてる感じはあったのかなぁ。

まあ観てから結構経っちゃったので、なんかそれについても説明してたのは覚えているんですが中身忘れちゃっただけのような気もします。

というどうでもいい話で膨らませているわけです。このブログも。

このシーンがイイ!

オルガ・キュリレンコがプールに入るシーンはとても綺麗で良かったですね。ビジュアル的に惹かれたのはあのシーンぐらいというダメな観客です。

ココが○

割と破綻のない内容で、かつ予想しやすい展開でもない、本当に「ちょうどいい」サスペンスだなと思います。種明かしで「それはないわー」と冷めるような話でもないし。

ココが×

まあどうしても各国の面々に軽重が出てきてしまう=主要人物が限られるので自ずとある程度展開も絞られてきてしまうのは少々残念ですが、それも仕方がないのでイチャモンレベルです。

全員同じく目立たせてたら散漫になりそうな気もするし…。

MVA

オルガ・キュリレンコをもっと観たかったんですが思ったよりストーリーに食い込んでこなくて残念。如実に客寄せパンダだったような…。

ということで…この人かなぁ。

ランベール・ウィルソン(エリック・アングストローム役)

出版社の社長。

なぜ彼なのか、それは観てもらうしかないと思うので詳細は避けますが、良かったです。

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