映画レビュー1228 『ピアッシング』

今回はGW特別企画で選ばれたウォッチパーティより。

世間的にはかなり評価が低いんですが、はてさて…。

ピアッシング

Piercing
監督

ニコラス・ペッシェ

脚本

ニコラス・ペッシェ

原作

『ピアッシング』
村上龍

出演
音楽

ランドール・ポスター

公開

2019年2月1日 アメリカ

上映時間

81分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

ピアッシング

“狂った男女”は面白い。

8.5
“殺すつもりでデリヘルを呼ぶ男” vs “自殺願望を持つメンヘラデリヘル嬢”
  • 殺人衝動を叶えたい男がデリヘル嬢を呼んで殺害を企てる
  • やってきたデリヘル嬢は想像の斜め上を行く行動で男の計画丸潰れ
  • お互いが相手に奇妙な所有欲を覗かせる中、先の読めない交流が続く
  • 紛うことなき変態映画

あらすじ

なるほど確かに一般受けはしないだろうなという映画でしたが、しかしまあ…ぶっ飛んでて面白かったですね。

一見真面目そうな男性・リード(クリストファー・アボット)はまだ赤ちゃんの自身の娘をアイスピックで刺したくて仕方がなくてウズウズするような危険な男です。

どうも殺人衝動があるようで、ある日妻には出張と偽ってホテルへチェックインし、そこでデリヘル嬢を呼んで殺害しようと一人で綿密なリハーサル。

完全に「殺すため」に偽出張からホテル予約、そして予行練習とすべて計画しているなかなかヤバい人物。

予行練習も無事終わり、さあいよいよ実行だということで一人のデリヘル嬢を呼び寄せます。やってきたのはジャッキー(ミア・ワシコウスカ)。

到着早々おもむろに「こういうの興奮する?」と誘うように自慰行為に及びますが、まったくその気の無いリードは困惑するばかり。

「じゃあシャワー浴びるね…」と風呂場に入ったジャッキーですが一向に出てくる気配がない。気になってリードが風呂場に突入すると、彼女は自分の太ももをハサミでザクザクと刺しまくっているのでした。

流れで彼女を助け出すリードは、ひと悶着ありつつ病院まで連れ添うことに。

この時点でまったく計画通りに進んでいないリード、そしてそんなリードに優しさを見出したのか、ちょっと好きになってるっぽいジャッキー。

二人の夜はこれから、だぜ…。

かなり人を選びそうな変態映画

僕は全然知らなかったんですが、原作は村上龍による同名小説。それをアメリカで映画化したものになります。

まー日本では例え映画化したところでまったくヒットしなさそうなかなりマニアックなお話なので、海外で映画化されたというのは逆になんだか納得。ってか村上龍すごいなこんな話書くなんて…変態やないか。

僕の中で印象的な変態映画に「私が、生きる肌」「毛皮のヴィーナス」があるんですが、めでたくこの映画もこの中に加わる変態映画となりました。

特に双方の立場の変化という面で「毛皮のヴィーナス」に近いものを感じましたね。あれとは方向性の違う変態っぷりですが、物理的に痛いので別の意味で怖い話でもあります。

ちなみにナンバーワン変態映画は変わらず「私が、生きる肌」です。あれはやっぱり頭のおかしいレベルが違う。

のっけから頭おかしい異常さでなんなら笑いを起こしてくるリードと、一応明確に劇中で「自殺願望を持つ」とは語られないものの明らかにメンヘラ故に少し見れば異常さがわかるジャッキーの二人が、さながらアンジャッシュのコントのようにすれ違いながら徐々に距離を詰める(?)お話で、ジャッキーのセックスワーカーという性質からもややエロティックな雰囲気もありつつ、まったく先の読めない「いかにも単館系」っぽい中身は結構好きでした。

痛そうな描写も程々のところで“やりすぎず”、テーマのくせに妙なビジュアルセンスがあってオシャレ映画感すらあり、完全にターゲットを絞った「大人向け映画」って感じですね。どこがターゲットなのかは自分で言っててわかりませんけども。

エンディングももうちょっと観たい絶妙なところで終わるので、内容も相まってかなり好き嫌いが分かれそうな気はしました。その終わり方もまたかなり大人向け、映画好き向けの映画だと思います。

日常の非日常的な面白さ

登場人物はほぼ二人で、それぞれの考えていることを想像しながらじわじわニヤニヤ楽しむような映画でもあるので、考えるのがめんどくさい人にも不向きでしょう。

この手の映画は長すぎるとダレるし、そう考えるとこの上映時間の短さもとても良い。

そしてヒロイン(?)がミア・ワシコウスカなのも良い。男の方は若干のアントニオ・バンデラスみもあってより変態感が味わえるのもポイントです。

個人的な性癖は関係ないとは思いますが、それでもやっぱり妙な嗜好を眺める話ではあるだけに、好き嫌いやら理解力やらに差は出そうな気もしますが…どうなんでしょうか。

まあ男女関係なくこじれちゃうとめんどくさいよね、と思いつつ、でも日常では観ることのない妙な(一般人の)世界を観られて面白かったです。

多少の違いはあれど、こういうことってどこかしらで起きてるんでしょうね…。

このシーンがイイ!

ホテルのシーンはやたら綺麗でオシャレ感出しつつも一人殺人予行練習というシュールさで面白かったですね。音が生々しくて、最近観ただけに「ようこそ映画音響の世界へ」を思い出してしまった…。

ココが○

ほぼ二人で完結する、お互いのせめぎ合いがすべての話なだけにその分見応えがありました。

ココが×

やっぱり人を選ぶだろうなというところでしょうか。

それと映画の評価とはまったく関係ないですが、やっぱりこういうの観ちゃうとデリヘル嬢みたいなお仕事は怖いだろうなぁと…。殺すつもりの男が待ってるところに一人で(しかも基本弱者である)女性が赴く、ってなんとかしないといけないと思うんですけどね…。

MVA

ほぼ二択ということで、やっぱりこちらの方でしょうか。

ミア・ワシコウスカ(ジャッキー役)

メンヘラデリヘル嬢。

ミア・ワシコウスカって変な映画によく出てる印象なんですが、でもかわいいしもっといい映画出てほしいなと思いつつ、でもこういう映画に出てくれるのも嬉しいよね、と。

ましてや今作は結構体も張っているしお見事でした。おかっぱが残念だったけど好みの問題です。

むしろ普通の髪型だと綺麗すぎちゃって意図しないエロスが出ちゃってよくなかったのかもしれない。

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