映画レビュー0716 『ロスト・イン・トランスレーション』

一旦カゴに入れたにも関わらず、キャンペーン対象が新作・準新作のみだったために泣く泣く棚に戻したこともあるという結構自分にとっては因縁の映画と言える一本。(大げさ)

ずーっと観たかったんですよね。運良くBSでやってくれたので観ることができました。

ロスト・イン・トランスレーション

Lost in Translation
監督
脚本
ソフィア・コッポラ
出演
ジョバンニ・リビシ
アンナ・ファリス
藤井隆
ダイアモンド☆ユカイ
音楽
ケヴィン・シールズ
公開
2003年9月12日 アメリカ
上映時間
102分
製作国
アメリカ

ロスト・イン・トランスレーション

かつてのハリウッドスター・ボブはサントリーのCMに出演するため来日するも、なかなか言葉も通じずにストレスの溜まる日々を送っていた。夫の仕事に同行する形で同じホテルに滞在していた若妻・シャーロットも仕事が忙しい夫に相手にされないことで孤独を感じていた。二人は何度かホテルで顔を合わせるうちに親しくなっていき、お互いの孤独を埋め合わせるように同じ時を過ごすようになっていく。

想像力を求める独特の間で見せる大人の映画。

8.0

若妻、って今言わないですよねきっと。ロマンポルノかよ的な感じで。でもなんか「若妻」としか言いようがないんだよな…。新婚かどうかもわからないから新妻でもないし…。

「ロスト・イン・トランスレーション」ってなんだかカッコイイ響きのタイトルだなーとホゲホゲ思っておりましたが、直訳すれば「失われた翻訳」、つまりまあ…意訳すれば「大事なところが伝わらない翻訳」みたいな感じでしょうか。これはまんまオープニングのCM撮影シーン(ディレクターのダイヤモンド☆ユカイがイイ)に当てはまる感じなんですが、もちろんそれだけではなく…最後まで観ればいろんな意味が込められているような気がします。

コトは日本人とアメリカ人という関係性だけにとどまらず、中年のボブと若妻(当時スカヨハなんと10代!)の間もそうだろうし、その他いろんな人たちの間にも横たわるコミュニケーションの難しさみたいなものを根っこに抱えた映画なんだろうと思います。

物語はボブが日本(東京)にやって来たところからスタート。なんでも200万ドルという超巨額のギャラでサントリーのCMに出演するということで、そりゃーもうかなりの大物なんでしょう。ボブさん。おそらく演じているビル・マーレイよりも大物設定なはず。

ただ「かつての大スター」感が強く、最近は映画にも出ていないようでCMやテレビが主体っぽい…まあいわゆる「落ちぶれてきている大スター」というところでしょうか。

対する今作のヒロイン、スカーレット・ヨハンソン演じる若妻シャーロットは一般人で、売れっ子カメラマンの旦那の仕事に同行する形で日本にやって来たものの、肝心の旦那は忙しく毎日あちこち撮影に駆り出され、また女優さんとも仲良しなことから不安を感じ、ちょーっと旦那の愛情に関して自信が持てなくなっている様子。

ボブはCMの仕事もそこそこに、あとは毎日夜ホテルのバーに入り浸って酒を飲むだけの枯れた雰囲気ですが、そこでたまたま別の席にいたシャーロットから日本酒をごちそうしてもらったり、プールに行ったら入れ替わりでシャーロットが出てきたりと彼女とちょくちょく顔を合わせることで親しくなっていきます。

シャーロットはシャーロットで、旦那が仕事のために数日福岡に行ってしまうということで東京に取り残され、一人の時間を持て余すのもなんだし…ということでボブを外出に誘い、段々と仲良くなっていく二人。

ボブはアメリカに妻子がいて、シャーロットはお仕事の旦那同伴。先の見えない二人の関係はどんなものになるのか…というようなお話です。

監督はソフィア・コッポラ。

今や押しも押されもせぬ注目女流監督の一人と言って良いと思いますが、彼女が世間的に注目を集めるきっかけとなった低予算映画がこの映画だそうです。僕は彼女の映画を観るのは初めてだったんですが、全体的に「しっかり間を取りつつも最後まで見せずにサクッと(絵を)切る」つなぎ方が結構独特な印象で、「これはこの後こうなるのかな?」と考えが浮かんだところでバシッと切って次のシーンという感じなので、割と観客の想像力を求めるタイプの映画だと思います。

語りすぎず、かと言って隠しすぎないというか。

例えば日本語のセリフはもちろん日本人なら理解できるんですが、他国では意図的に字幕も入れていなかったらしく、「理解できない異国の地」という状況を強く印象付けた作り方をしていたようです。

その辺からもわかるように、かなり明確に「これは伝える、これは伝えない」を切り分けた作り方にしているようなので、穏やかで淡々とした物語ながら割と主張の強いタイプの映画に見えました。そこが結構不思議な感覚もあり、面白かったですね。

舞台は東京ということで、日本人的にはなんとなくホーム感があって嬉しい…ような気もするんですが、ただところどころやっぱり少しおかしな日本像みたいなものが散見されるため、「東京が舞台」というよりは、「異国の地で孤独を感じる二人」を作り上げるための舞台として日本どうこう気にせず観た方がいいでしょう。舞台が日本という意味では「ブラック・レイン」の方がより正しい日本観だったかな、と思います。健さんも出てたしね。

ただ、おそらくはこの頃の日本、東京というのが「西洋化されつつ独特の文化を持つ都会」としてこの映画の舞台にうってつけのような雰囲気はありました。なんて言うんですかね…都会だし衛生的だし多分普通に暮らすには特に不自由を感じないんだけど、言葉の壁と文化の壁のおかげでことさら孤独感が際立つ環境、って感じでしょうか。

これがもっと発展途上国っぽかったらまた話は違ってくると思うんですよ。「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」みたいな感じで。

利便性と無機質さ、特殊な文化の中に放り込まれたアメリカ人二人が惹かれ合う、っていう環境としてやっぱりこの頃は東京だったのかな、と。今だったら(マーケット的な意味でも)香港とかかもしれないですね。もしかしたら。

舞台という意味ではもう一点、少しだけ京都のシーンも出てきます。ここがまたすごくいいシーンではあるんですが、この京都で描かれるシーンがまたすごく独特で、そこにまたアメリカと日本、そして東京と京都の対比を通して物語を一つ進めているような印象があって、ところどころ「違和感がある日本」を描きながらも意外と日本通なんじゃねーのかソフィア・コッポラ、というような気もしました。

物語としては「歳の離れた二人が同じような境遇を通して惹かれ合う」という普通なお話ではあるんですが、ただ上に書いた通り、その(東京という環境を含めた)境遇の使い方と絵のつなぎ方に強い意図を感じるので、平坦に観ていると「ふーん」という地味なお話なんですが、その辺の背景をじっくり探っているとなかなか味のある、深い映画なんじゃないかなーと思います。

それ故に結構な集中力を求められるし、想像力も必要とされる映画でしょう。あからさまにそういう狙いで作っているとも思うので、最初から監督は「わかる人向け!」って思って作っているんでしょうね。なにせ役者としては散々な評価だった人だけに、これから監督として世に出るぞ、という力のこもった映画として、ある程度エッジを立てたかったのかもしれません。

ただその入れ物が“普通の物語”であるところにセンスとすごさを感じますね。ソフィア・コッポラ監督の他の映画も観てみたいと思います。

おそらくは人を選ぶタイプの映画なので誰にもオススメというわけではありませんが、想像力を膨らませる世界が好きな人であれば楽しめるのではないかと思います。

ロスト・イン・ネタバレーション

このシーンがイイ!

コールガールが出て来るシーンが一番笑いましたね。こんな人いねーよ、っていう。でも映画としては…やっぱり京都のシーンになるのかなぁ。展開的に唐突な感じはありましたが、いいシーンでした。

あとスカヨハ(ビル・マーレイもだけど)のカラオケは結構貴重な気がする。高い声でかわいい感じだったのが意外。

ココが○

ある程度頭使ってね、っていう想像力を求める作りは好きです。観客に解釈を委ねる感じが。

それとやっぱりシーンのつなぎ、編集がすごく印象的だったなー。なんとなく編集の感じから怖い映画もうまそうな気がしました。ソフィア・コッポラ監督。

ココが×

とは言えなんだかんだ退屈な時間はありました。正直ちょっとウトウトもしたし。それだけに集中力が求められるのは間違いないところでしょう。

エログロの類がない平和な普通の映画のようで、かなり観る側に思考力を欲求するタイプの映画だと思います。ヘタなサスペンスよりよっぽど頭使わされる感じ。頭を使わないといけないわけではなくて、使わないと面白くならない、という感じでしょうか。

MVA

オープニングに登場するダイヤモンド☆ユカイにしたい気持ちもあったんですがさすがにそうするわけにも行かず、ベタですがこちらの方に。

スカーレット・ヨハンソン(シャーロット役)

この人は本当に若い頃から色気がすごいですね。色気でムンムンですよ。熱気がムンムン的な。おりも政夫ですよ。誰がわかるんだよ。今時。

この映画では若干垢抜けない印象の人妻ではあるんですが、でもそのちょっと幼さが残りつつも魔性感もある雰囲気が役にぴったりでした。

ちょっとした危うさもあるし、ちょっとしたスキも感じさせるんだけど…でもどことなく壁もあるという。なにせ10代であのビル・マーレイと渡り合うわけですからね。そりゃすごいわと。

立ち位置はかなり違いますが、かなり若い頃から今も活躍し続けるという意味ではナタリー・ポートマンと似たすごさを感じます。

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