映画レビュー0717 『おいしい生活』

この日はNetflixでウディ・アレン監督作品が数本配信終了になると知り、飲み会後に観るとしたらどうがんばっても1本、じゃあどれにするか…と考えたら当然ヒュー・グラントが出ているこれしかないべや、ということで半分酔っ払いながら観ました。

おいしい生活

Small Time Crooks
監督
脚本
出演
ウディ・アレン
トレイシー・ウルマン
エレイン・メイ
公開
2000年5月19日 アメリカ
上映時間
95分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

おいしい生活

銀行の2軒先の店舗が貸店舗になったことを知った元泥棒のレイ。彼はデキの悪い仲間たちとその店舗を借り、ダミーのクッキー屋を営みながら裏でトンネルを掘って銀行から金を盗む計画を立てたのだが、なんとそのクッキー屋が想定外の大繁盛となってしまい…。

割り切ったサクサクコメディであっという間の95分。

8.0

ということでウディ・アレン監督・脚本・主演という一人3役の作品。

この邦題である「おいしい生活」は間違いなくかの糸井重里さんが作った西武の名キャッチコピー「おいしい生活」から取った邦題なんだろう…と思っていましたが、あとで調べたところなんと実際この時の西武の広告のイメージキャラクターとしてウディ・アレン監督が起用されていたとか。ほえー、そうなんだ。さすがにちょっとこの時代は記憶に無いのでびっくり。

その西武の広告に起用されていたウディ・アレン監督が作ったクッキー屋(の夫婦)の話だから「おいしい生活」と付けたんでしょうね。でも実際内容的にもこのタイトルが合っているすごく良い邦題だと思います。

そのウディ・アレン監督が演じる主人公・レイは元泥棒で、今は冴えない日常を送っているご様子。ただお金はないながら奥さんのフレンチーもレイに対してしっかり愛情は持っているようだし、なかなかいい夫婦のようですが…やはり泥棒の血が騒ぐのか、銀行の2軒隣が貸し出されたことを知ったレイは、「ここ借りて店やってるフリして穴掘って銀行に直接入り込めば金盗めるんじゃね?」と思いつき、そのための資金協力も兼ねて2人のダメ人間仲間を計画に引き入れ、なんとかフレンチーも説得してお金を出してもらい、さらに先に店舗を借りようと手はずを整えていた男が元刑務所仲間だったことから彼も仲間に入れ、表向きはフレンチーにクッキー屋を任せているように見せかけて裏では穴掘りを始めます。

ダメ人間たちによるオーシャンズ11って感じでしょうか。いいですね。

もうのっけから失敗続きで最高なんですが、めげずに彼らは穴掘りを続けます。どっからどう見てもおバカさんだらけのメンバーなので、間違いなくうまくいかないでしょうよ…と観ているわけですが…!

その頃ダミーの店舗であるフレンチーのクッキー屋さんは…なんと謎の大繁盛。あれよあれよと人気になって行列の絶えないお店になってしまい、評判を聞きつけたテレビ局がやってきてインタビューまでしていきます。もはやアメリカ1の話題店と言っても過言ではない状態の超大人気クッキー屋さんになったフレンチーのお店の裏で、レイの計画はどのような結末を迎えるのか…! というような前半戦からスタートする映画でございます。

で、実はこのあらすじの部分は全然序盤のお話なので、ここから結構斜め上を行く展開と言うか…っていうか「仮で開けた店が大繁盛」ってもうその時点でコメディ感すごいんですが実際コメディっていうね。(そのまま)

なかなかこの映画のコメディ感は…ベタなようであまり他にない感じがすると言うか…結構不思議な感じで。割と矛盾とか筋とかリアリティを全部潔くスッパリ断ち切って、とにかくサクサクテンポよくあれよあれよと進んでいく割り切った感じがとても面白かったですね。

ウディ・アレン監督の映画は(まだそんなに観たわけではないですが)大体100分未満の短い映画が多い印象なんですが、その短さを作り上げるためにもこういう割り切った作りは効果的なんでしょう。確信犯的に余計なものは削いでテンポと勢いを出そうとしているような気がしました。

かと言ってギチギチに無駄がないというわけでもなくて、例えば序盤の「店を先に借りようとしていた人間が実は刑務所仲間だった」設定って丸々いらないと思うんですよ。警官も別にいらないっちゃいらないし。ただ、その存在が良い意味で小さいネタのフリとして使われていて、しょーもないギャグなんですがその小さなネタを入れるためにどうでも良い設定を放り込んで見せる、そのサービス精神が結構好きでした。

ほんとに「くだらねーなーゲラゲラ」って笑っちゃうようなどうでもいいネタのために序盤戦を使う、そのコメディとしての立ち位置の置き方って言うんでしょうか。「こういうくだらないお話ですよ」と観客に伝えるためのネタがすごくバカでそこが良いなと。

で、そうやって油断させといてーの最終的な話の終わり方もすごく好きで、なるほどこれは良い映画だぞと。

すーごく感動するとかしてやられたとかドカーンと来るような映画ではないんですが、短めの上映時間をテンポよく飽きずに見せてくれた上でスッとオシャレに閉じていく感じが心地いい映画ですね。

ヒュー・グラントを除けば美男美女は登場しない地味さもありますが、ちょっと気楽に1本映画観たいぞ、というような時にはかなりいいチョイスになるような気がします。

重さもなく不幸さも無い気軽に観やすい映画なので、自分のダメさに沈んだ時に観る1本としても良さそう。うまく言葉で表現できないんですが、他にない独特なテンポ感と綺麗な閉じ方は思わずニッコリという映画でした。

おいしいネタバレ

ということでまさかの「銀行強盗やらずに大富豪」という展開。酔っ払ってて頭が回らなかったせいもあるんでしょうが「これどういう話になっていくのかなー」とまったく予想できない形で楽しませて頂きました。

あの「プレイボーイ」他に広告を入れた逸話のインタビューが特にバカバカしくて最高でしたね。女性を道具にしているように見えて実際は男を徹底的にバカにしているという。

ラストにつながる「フレンチーに技術を教えた」話はまったくフリとして認識していなかったので、終わり方にはとてもニッコリ。唯一その辺にいそうな嫌な男として描かれていたおヒューもきっちりやられ役として利用してくれて、いやはやなかなかいい展開だったんじゃないでしょうか。

しかしあのウィンザー公のシガレットケース、一体いくらするんだろう…。

このシーンがイイ!

超ベタなんですが序盤の銀行強盗のための穴掘り開始のシーンは好きでしたね。なんで? って。わかりやすいコント感が最高。

ココが○

短めの上映時間でしっかり起承転結を見せてくれる感じ、いいですね〜。やっぱり1時間半ちょっとで終わる映画は観ようと思う動機づけの時点でも入りやすいし、その上面白いんだから素晴らしいですよ。

ココが×

特段何がダメっていうのはないんですが、ただ軽い映画な分、そこまでグサッと来ない感じはあります。気楽に観てちょっと気分良くなれればいいかな、という感じでしょうか。

MVA

お目当てのおヒューですが、さすがこの頃は脂が乗っているというか…いかにもな英国紳士的イケメンで上流階級感パないんですが、しかし役としてはあまりにも普通で、似合っていたものの面白みがないなという感じでした。やっぱりこの人は脇役より主役が良いのかな…。もっと存分にダメな感じを見せて欲しい。

ということで今回はこちらの方にしましょう。

エレイン・メイ(メイ役)

フレンチーのいとこのおばさん。

もうこの頃でも結構なおばさんなんですが、チャーミングなんですよね。で、本物っぽい天然っぷりなんですがご本人は監督や脚本も手がける才女ということで。すごい。なかなか良いコメディエンヌっぷりでした。

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