映画レビュー1135 『マレーナ』
今回もJAIHOより。なんとネトフリ終了間際シリーズが一段落したかと思いきやJAIHO終了間際シリーズです。しょうがない。こればっかりはしょうがない。
マレーナ
モニカ・ベルッチ
ジュゼッペ・スルファーロ
ルチアーノ・フェデリコ
マティルデ・ピアナ
ピエトロ・ノタリアーニ
ガエタノ・アロニカ
2000年10月27日 イタリア
92分
イタリア・アメリカ
JAIHO(Fire TV Stick・TV)
一人の女性の人生を、美貌全てで表す凄さ。
- 狭いコミュニティで嫉妬と羨望の眼差しを一身に受ける女性に憧れ続ける少年の物語
- コメディタッチの前半と、戦火が色濃く反映される後半とで印象がだいぶ変わる
- 一人の女性の壮絶な人生を通し、“人間”とコミュニティの本質を垣間見る
- とにかくモニカ・ベルッチの美貌が強烈
あらすじ
ジュゼッペ・トルナトーレの映画だよ、って知った時点で観るのを決めたんですが、やっぱりちょっと独特な魅力を持った映画でした。そしてとりあえずこの映画のモニカ・ベルッチだけは観ておいた方が良いよ、ってぐらいに彼女の美しさが強烈。
念願の自転車をゲットした少年・レナート(ジュゼッペ・スルファーロ)は、“友人たちの日課”に仲間入り。彼らの日課とは、街中が噂する美女・マレーナ(モニカ・ベルッチ)の通勤(なのか散歩なのかわかりませんが)を見守ること。「尻がたまんねーな」的にやいのやいの色めき立ち、家に帰っては目に焼き付けたその光景をオカズに反復運動を繰り返すレナートでございます。
もっとも色めき立つのは少年たちに限らず、町の男たちはみなすれ違うマレーナに釘付け。同時に女性たちは彼女への嫉妬を募らせ、良くも悪くも目立ちすぎる美女、それがマレーナです。
彼女はその美しすぎる風貌と、同時に街の人たちと打ち解けていない、友人もいない距離感から有る事無い事噂され、中には聞くに堪えない内容のものも多くあります。彼女はそれを知ってか知らずか街の人たちともあまり関わること無く、ひっそりと教師である父親とともに暮らすのでした。
しかしときは第二次世界大戦、次第にこの街にも戦争が身近に迫ってきつつあり、やがてマレーナの生活は一変するんですが…あとはご覧くださいませ。
狭い世界での特出した存在のつらさ
前半は少年レナートのちょっとコミカルなマレーナへの憧れが中心に描かれ、後半は戦争の悲劇を境にマレーナの悲しい物語がレナート目線で描かれます。
基本的に全編レナート目線で、かつ中心にいるのはマレーナ。つまりレナートの「マレーナストーカー日記」的な内容でもあり、ちょっと今からすると彼どうなのよ的に思う部分もあるんですがまあその辺りは大目に見ましょうよ。映画だし。子供だしね。でもこれ実際の話だったらだいぶこじらせますよきっと。レナート。端的に言ってひどい変態になると思う。(ひどい変態談)
ある意味ではレナートの青春映画でもあるし、ある意味では戦争映画でもありますが、シチリア島の古い街並みと「少年の目線」を中心にしているだけにノスタルジックな雰囲気も強く、ちょっと「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出させるような郷愁も感じられてたまりません。
街の人たちとの接し方を察するにマレーナはちょっとよそ者っぽい雰囲気なんですが、ただ父親は学校で教師をやっているし、別に外から来た感じでもないんですよね。なのになんであそこまであらゆる意味で奇異な目で見られてしまうのか、その辺りの理由がもう少し知りたかったところではあります。
ただもう、おそらくそれも「美人すぎるから」なんでしょう。きっと。おまけに夫は戦死してしまった=未亡人という立場も何やら微妙に艶めかしさを感じさせるのは気のせいでしょうか。
まあ、男はそんな貧しい連想をしてしまうからこそ、この街の男たちのような人間が「普通」になってしまうんでしょうね…。「ひでえ男たちだな」と思いつつ観ていましたが、もしかしたら僕も彼らとさして変わらないのかもしれません。
ただ見方によってはもっとひどいと言えるのは女性陣で、仕方がないと思いつつも嫉妬が強すぎる。それが鬱屈するストレスとなり、やがて大きな問題に発展するわけですが…もう単純に「嫉妬怖いなぁ」と思うと同時に、しかし嫉妬するのもやむを得ないレベルでちょっとマレーナが美しすぎる&色っぽすぎるのも事実なわけで、これだけ狭いコミュニティで特出した美人が存在してしまうと、色々な面でバランスブレイカーになっちゃうのも人のサガ的に仕方がないのかもしれません。
でも誰一人としてマレーナの味方がいないのも少しリアリティが無いなとは思いましたが…。ちょっとその辺ファンタジーっぽくもあります。
ただそのファンタジーっぽさに実写映画としての説得力を持たせるだけの美貌を持っている、このときのモニカ・ベルッチのすごさたるや、って話ですよ…。本当にため息が出る美しさとはこのことなのかな、と。
モニカ・ベルッチだけでも観る価値がある
一見思春期悶々系かと思いきや、同時に描かれるマレーナの人生によって戦争の悲劇性も程よく織り込まれつつ、最後はなんとも言えないノスタルジックな気持ちで閉じる、さすがトルナトーレ的な良い映画で満足致しました。
やっぱりシチリア島の風景と田舎っぽいコミュニティの使い方がうまいなーと思いますね。そこまで古い映画でもないのにいい感じに古い映画に見えてしまうと言う。
もう感覚的にこの頃(2000年当時)でも価値観的にどうなのかなみたいな部分は散見されるんですが、古い映画っぽさもあるし舞台自体が古いこともあるしでそれがあまり気にならないのもうまいなーと。
まあしかし、なんと言ってもこの映画はモニカ・ベルッチの存在感がすべてですよ。それだけでも観る価値があると思います。
このシーンがイイ!
途中でマレーナがイメチェンするんですよ。そこがもうね…。本当に目が覚めるぐらい綺麗で。
その後冗談みたいなシーンが出てくるんですが、そうなっちゃうのもなんとなく納得できちゃうぐらいに説得力のある美しさが印象的でした。
あとレナートのお父さんが出てくるシーンは大概笑えました。結構ひどいんだけど。
ココが○
一人の女性の存在感だけで物語全体に説得力を持たせるのがとにかくすごい。そういう物語を作ったトルナトーレもすごいしそれに見合うだけのルックスを持ったモニカ・ベルッチもすごい。
ココが×
女性としてはなかなかしんどい部分もあるし、心痛む面も結構ありました。そこが(映画的には)良いとも言えるんですが、人によっては引っかかりそうな気がします。
MVA
これはもう満場一致ですよ。一人で選んでるけど。数人のおれが満場一致。
モニカ・ベルッチ(マレーナ・スコルディーア役)
誰もが振り返る絶世の美女。
モニカ・ベルッチと言えば「007 スペクター」で(確か)最高齢ボンドガールをやった、という知識しか無かったんですが、まあしかしここまで強烈に華のある人だったとは…。
この映画はもう本当にこの人ありきだと思うし、彼女をキャスティングした人もそれに応えるルックスと演技を披露した彼女もすごすぎます。一人の女性の存在感と言う意味では今まで観た映画の中で最も大きいものだったと思いますね。