映画レビュー0094 『ニュー・シネマ・パラダイス』
最近、サスペンスならまだしも、ドラマなんかでも「これ最終的にどう落とすのかな」みたいな予想をしすぎて楽しめなくなってる気がするので、もうちょっとボケーっと観ようと思ってます。(独り言)
ニュー・シネマ・パラダイス
今年一年分泣きました。
恥ずかしながらの初鑑賞。
観たのは「完全版」というやつで、劇場公開版とはだいぶ焦点が違うそうですが、さて感想。
なんとなく映画のタイトルと観たことのある場面写真から、「映画っていいな! いいぜ!」という映画賛美の映画なのかと思いきや、(もちろん映画に対するリスペクトはありつつも)全然違いました。割とこういう先入観しょっちゅう外してるので意外でも無いんですが。
序盤、少年トト~青年トトのお話は、正直だいぶ退屈な時間帯もあったりして、「長いなぁ」と思っちゃったりしたんですが、この青年トトの最後の方でアルフレードが語る、「人生は映画よりも厳しい。映画のようにはうまくいかない」というセリフで一気に「映画賛美じゃないのか!」とハッとさせられ、その後の彼の30年の意味を理解していく解決編に突入。
そして「現代」に戻った辺りから、もうとめどなく涙が溢れてしまい…。
歳の離れた友情、母の偉大さ、そして大恋愛と、どれも静かに、でも印象的なセリフできっちり語ってくれます。特に恋愛部分は、“恋愛モノ嫌い”の僕でも大号泣。
これは…(見方次第ですが)こんなに残酷な話だとは思ってなかったから、でしょう。何が残酷ってやっぱり時間ですよね。時間は取り戻せないという残酷さ。
同じ男性として、彼がエレナに似た女性を見てからのその後の展開というのも、残酷だなぁと思いつつ気持ちがすごくよくわかりました。
昔好きだった人と似た人を見ると、違うとわかりつつも目で追ってしまう。思い出す男も未練がましいようですが、実は未練だけ、という単純なことじゃなくて、当時の自分の若さであったり、環境であったり、なんとも思ってなかった日常が尊いものだったことに気付いたり、といういろんな思いが巡っていく哀しさみたいなものがあって、どうしてもそれを振り切れない部分ってあるんですよね。そこがまたすごくわかるし哀しくて、号泣。涙に鼻水で干涸らびました。
電話での会話と車内の会話も、男女の違いがよく出てたと思います。男は夢見がち、女は現実的、っていうのが。
どっちが正しいとかも無いんだけど、当然ながら僕は男目線になるわけで、そこがまた切なかった。
「マジェスティック」とはある意味で逆の展開で、時代の流れに逆らえない映画館、という展開もまた哀しい。映画好きとしては愛さざるを得ない作品だと思いますが、映画好きだからこそ感じる寂しさも随所にあり、便利になったところですべてが良いわけじゃないんだな…とまたしんみり。
総じて、郷愁を誘う、寂しいやら哀しいやら、でも温かくて少し幸せな気分も味わえるという、一言で語れない、複雑な感情を抱かせる映画でした。もっと単純な映画かと思ってたのでこれまた予想外。
感情移入度で言えば満点! といきたいところだけど、序盤の退屈感もあったので、9.5で。ただ、最後まで観ればわかるんですが、序盤は序盤で意味のあるシーンが多いので、長くて序盤はだらけるけど結果良い映画だぜ、ってことで「ディア・ハンター」と似た印象。
ココが○
「琴線に触れる」という部分では相当上位の映画じゃないかと思います。
素材としての映画(と映画館)の使い方がうまくて、映画好きにはグッと来ること間違いなし!
あと音楽。この映画の曲とは知りませんでしたが、「アノ」曲が。これがまた温かくていいんですよねぇ~。
ココが×
「長さ」でしょうか。完全版だと約3時間。劇場公開版だとまた印象が違うかもしれません。
ただ、劇場公開版は「(映画館の)ニュー・シネマ・パラダイス」が中心、完全版は「トトの人生」が中心とのことなので、果たしてここまで泣いたかはわかりません。機会があったらオリジナルも観てみたいですね。
MVA
主人公が幼少期から壮年期まで登場する都合上、彼とその周りにいる人々は役者が変わったりしますが、ずっと同じ役者さんがやってたこの映画のキーマン、
フィリップ・ノワレ(アルフレード役)
がやっぱり良かったかな、と。優しくて頑固な雰囲気のおじさん。良かったです。