映画レビュー0906 『メン・イン・ブラック:インターナショナル』
予告編の段階から「これは観ないと!」と思っておりました。例のMIBシリーズ最新作でございます。
そもそも「3」の段階でちょっと弱くなってきたかなと思っていたので、主人公を変えてのスピンオフはむしろ良いんじゃないかと思って期待してたんですよ。クリヘム好きだし。果たしてその結果やいかに、と…。
ちなみに今回、いつも行く劇場はまたもIMAXレーザー3Dでやってまして、3D嫌だなぁと他の劇場を探していたところ、同時期にさいたま新都心にできた「ドルビーシネマ」で2D上映するということで喜び勇んで初ドルビーシネマを体験してきました。むしろそっちの方が楽しみだったかもしれない。
メン・イン・ブラック:インターナショナル
『The Men in Black』
ローウェル・J・カニンガム
2019年6月14日 アメリカ・日本
115分
アメリカ
劇場(ドルビーシネマ・2D)
あらゆるものがズレていった結果出来上がった、別の何か。
- 主演はクリヘム&テッサ・トンプソンの「ソーコンビ」
- 前作から引き続きエージェントO登場
- 世界は紛れもなくMIBながら、笑いも進行もズレて行った結果最終的にはまったく違う何かになった
- 読みやすすぎるしベタだし娯楽映画としてもいただけない
あらすじ
そこまで期待してたわけでもないんですけどね。先行して観た人たちの口コミを読んでもイマイチっぽかったので、まあそんなに期待しないで観るか…と思って観たんですが予想以上にひどかったです。残念ながら。
オープニングは3年前、パリのエッフェル塔で凶悪な宇宙人と対峙するMIBロンドン支部長のエージェント・ハイT(リーアム・ニーソン)と、今作の主人公であるエージェントH(クリス・ヘムズワース)の姿から。
良いところでカットされて含みを残しつつ、二人は無事帰還した様子。
一方幼少期に宇宙人と遭遇した上にMIBの存在も(記憶を消去されずに)知ってしまった過去を持つもう一人の主人公、モリー(テッサ・トンプソン)は大人になり、自分もMIBに入りたいと独自に調べていった結果あっさり発見、あっさり見習いとして採用されます。
見習いとしてエージェントHと行動をともにすることになったモリー改めエージェントM、強大な力を持つ宇宙人の接待に駆り出されたのち、宇宙を舞台にした壮大な陰謀に巻き込まれていくわけですが…!
新人採用モノにハズレ無し…?
個人的に「(大体)新人採用モノにはハズレ無し」だと思っていて、例えば「キングスマン」とか…他は今パッと出てこないんですけども。まあ他にもあったじゃないですか。多分。最初の「MIB」だってそんな要素があったじゃないですか。確か。もうかなり観てないから忘れたけども。
「こういう世界で、こういうことをしている組織に入りましたよ」みたいな話って大抵面白い印象があるんですが、まずこの映画はその「新人的な話」の大部分がかなりごっそり削られていて、大半は普通にバディムービー的に進むので…まず最初のモリーが組織を探したり「スカウト制なのよ」とか採用を渋られてた話だったりの全部が丸々いらねぇな、と。
大体サクサク進んじゃうし、新しくご説明して「こういう世界観ですよ」とアピールする場面も無いので、じゃあ別に新人設定いらなくね? というのがまず最初に感じた残念感。
まあ別にそこはどうでもいいんですけどね。続編だから今さら説明されても的なものもあるわけだし。
ただ、その序盤に「MIBに入りたくて自ら探し出した優秀な女性」ってくだりを結構見せてくる割にその内容がさして面白くもなければ後半に活きてもいない、っていう…なんで回りくどくこの話やるのかな、ってストレスがまず最初にありました。
話としては回りくどいんだけど、進行自体はサクサク進む(Mが頑張ったとか手こずったような話は特に無い)ので、もう最初っからMIBには入ってて「最初のミッションだわー」でいいじゃん、みたいな。
幼少期の話はフリとして必要だとしても、大人になってから採用までのくだりはマジで(さして面白くもないだけに)なぜ入ってるのかまったく謎で、そこにまず若干のストレスを感じましたね。
すべてが少しずつズレた作り
なんでこんな話をするのかと言うと、もうその「新人採用話の入れ方と描き方」からしてズレてるわけですよ。で、そのズレっぷりが象徴的に思えるぐらい、全体的にいろいろズレてる映画だなと思って。
笑いの取り方もすごくズレてて、「ああここ笑わせに行ってるんだろうな」ってわかるんだけど別に笑えないし(アメリカ人なら爆笑だったのかもしれないけど)、実際劇場も静かなもんでしたよ。
このシリーズの軽快なコメディ感って雰囲気作りにかなり大事な部分だと思うんですが、そこがまた全体的にズレちゃってて全然面白くないので段々ストレスになってくるわけです。
その最初の「モリーがエージェントMになるまで」から徹底してちょっとずつズレて行った結果、最終的には「MIBでもない何か」に仕上がりましたよ的な。1度ズレただけで着地点が大きく変わっちゃう怖さみたいなやつですよ。よくある
どこが、って言うのは難しいんですが…笑いの取り方・挟ませ方もそうだし、物語の進ませ方もそうだし。
大味で特にヒントもなくサクサク進む割に全体的にはちょっと陰謀めいた話にしようとしてたりとか。ジャンル的には「SFアクションコメディサスペンス」って感じだと思うんですが、そのどれもが中途半端すぎて全然面白くなってないです。申し訳ないんですが。
眠くなるぐらいにつらい
またオープニングのアレコレからして前フリ感が漂っているのはいいとしても、そのフリが全部そのままストレートに読める展開になっているのも頂けない。
「こういう話のフリして実はこうなんでしょ?」って誰もが予想する展開そのままに決着していくので、じゃあもうサスペンスっぽく引っ張るのやめて完全にコメディアクションだけにしてくれよみたいな。
もーね、本当にイライラしましたよ。最初のエッフェル塔のシーンぐらいまでは「これこれ」みたいにワクワクしましたが、そこからはもう段々と「これは…多分どうやってもダメなやつだ…」とどんどん絶望的になっていく感じ。
初のドルビーシネマでテンションが上がっていたはずなのに、なんなら眠くなりましたからね。結構な時間。寝はしませんでしたが、かなり眠い状態が続きました。劇場行ってこれはかなりレアなんですけどね。
スタッフも役者も良いはずなのに
調べたら、監督はあの「交渉人」の監督なんですよね。観たのはかなり昔ですが、僕の中では結構な傑作だったので…かなり毛色の違う映画とは言え、ここまでお粗末になるもんかとちょっと驚きました。
脚本家は「アイアンマン」のコンビだし、こんなズレた作りになるはずがないと思うんですが…難しいもんです。
世界観としては紛うことなきMIBのそれなんですが、出来上がったものは「MIBとは違う“何か”」でしかないという…。
やっぱり今となっては、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズの存在感、雰囲気がMIBなのかなぁと思ったりもするんですが、個人に帰結するのもなんか違う、やっぱり脚本と物語の見せ方に難がある映画なのかなと思います。
ニューラライザー(ピカッのやつ)の使い方もすごく雑で、過去作を大事にしつつ新しいものを、という意欲すらまったく感じられない「ダメな復活シリーズ」の典型だと思います。
いやーがっかりした。久しぶりにひどくがっかり。そんなにMIBに強い思い入れがあるわけでもないんですが、それにしたって「普通の娯楽映画」としてもさして面白くないのがつらい。
本当にがっかり。
[おまけ]ドルビーシネマについて
で、今回初めて体験したドルビーシネマ、関東では(今現在は)なんとそのさいたま新都心のものだけらしく、まだ全国的にもかなり珍しい鳴り物入りのシアターなんですが…結局僕のさもしい感性では「IMAXの方が二回りぐらい上」という印象。
上映前に(ありがちな)「ドルビーシネマはこんなにすごいんだぜムービー」があるんですが、このときに「この映像は黒ではありません。本当の黒はこう(ドンッ!)」って出てきまして、この黒の漆黒っぷりは「おおっ…!」とワクワクしたんですが、結局このときがピークでした。
「黒の黒さ」を除けばあとはもう全体的にIMAXの方が断然上だと思います。音響にしても「ドルビー」の名の割にそこまで驚くようななにかも無かったし、画面はIMAXよりだいぶ小さかったし。
ちなみにIMAXは+600円、ドルビーシネマは+500円。もちろん通常のスクリーンよりは精細だし綺麗だし良い設備なんですが、ただIMAXの価格を考えると正直そこまでの価値はないかな、という印象。
最もそれでも2D上映をやってくれるのであればそれだけでありがたいですけどね。IMAX2Dが一番良いのは揺らがないんですがやってくれないんでね…。
このシーンがイイ!
車から続々と武器を取り出す一連のシーンは良かったですね。ワクワクして。
ココが○
最初に思ったんですが、MIBの世界ってちょっとハリポタの世界に近いと言うか、「今自分たちが認識している世界の裏に実はこういう世界があるんですよ」っていうアナザーワールド感が良いなと思うんですよね。無いのはわかってるんだけど、でもあったら面白いなと思わせてくれる設定というか。
その辺は当然ながら健在なので、そこは良かったと思います。
ココが×
まあ上に散々書いた通り、いろいろズレちゃってて厳しい。
予想外な展開もなければものすごく面白いシーンもないし、一言で言えば「観客を乗らせる」のが下手な映画。
MVA
序盤結構テッサ・トンプソンのどアップが続くんですが、彼女はちょっとアップに耐えうるレベルじゃない気が…。まあ悪くはなかったんですけどね。
クリヘムはいつも通り、軽快でコメディの合う色男感が良かったです…がそれも活かしきれてない悲しさ。ということで消去法でこの人。
レベッカ・ファーガソン(リザ・スタヴロス役)
出てきたときもこの人と気付かなかったんですが、まあやっぱり美人だしアクションもさすがなので。っていうか好きだからチョイスしただけってやつですよ。悪いけど。