映画レビュー1545 『コンペティション』
アマプラ配信終了系です。
どうしてもアントニオ・バンデラスが出てると変態映画かな、と思って誰しも気になっちゃいますよね。
コンペティション
ガストン・ドゥプラット
マリアノ・コーン
アンドレス・ドゥプラット
ガストン・ドゥプラット
マリアノ・コーン
ペネロペ・クルス
アントニオ・バンデラス
オスカル・マルティネス
ホセ・ルイス・ゴメス
イレーナ・エスコラル
マヌエル・ソロ
ナゴレ・アランブル
ピラール・カストロ
コルド・オラバリ
2022年2月25日 スペイン・台湾
114分
スペイン・アルゼンチン
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

結局みんな俗物だよね、と思わせる解像度の高さ。
- 後世に名を残したいと大金持ちが映画制作を企画、それぞれの“トップ”たちが集結する
- しかしトップ故に皆さんクセ強のため、なかなか順調には進まない
- 映画本編撮影のエピソードではなく本読みやリハーサルの「準備段階」がメイン
- 映画好きこそ楽しめる…かもしれない
あらすじ
いやー、めちゃくちゃ面白かったですね。これ。
ネットの評判はいまいちって感じなんですが、よくあるハリウッド系よりもややハイコンテクストなコメディなのかもしれません。それでもわかりやすい方だとは思いますが…。
とある企業経営者の大金持ちの爺さんが誕生日を迎えるも浮かない顔、「もう人生も残り僅かなのに嫌われ者のままで一生を終えたくない、後世に名を残す何かはないか」ということで自分の名前を冠した橋をかけるかそれか映画の出資だな! と思い立ち、動き出したプロジェクト。
彼は大枚をはたいてノーベル賞を受賞した原作本の映画化権を獲得し、アカデミー賞を受賞したこともある天才(だけど変わり者の)監督のローラ(ペネロペ・クルス)に監督を依頼。
その物語はとある兄弟の半生を描いたものなので、ローラは主演の男性2人に名優を配することが必須だということで世界的なスター俳優であるフェリックス(アントニオ・バンデラス)を弟役、国内で評価が高い舞台俳優のイヴァン(オスカル・マルティネス)を兄役に据えてまずは本読みから始めます。
性格も演技へのアプローチも正反対の2人は予想通りに毎度いざこざを巻き起こし、またローラはローラで変わっているのでこれまたまとまる方に向かわない前途多難すぎる映画制作ですが、果たして出資者の思惑通り「傑作完成」となるのでしょうか。
人間描写の秀逸さ
映画制作の舞台裏を描いたコメディ。割とありがちっちゃーありがちな設定ではあります。
ちょっと「映画大好きポンポさん」っぽさもありますね。だいぶ邪悪なポンポさんって感じですが。
監督が曲者で、主演俳優は正反対のタイプでいがみ合い、なかなかうまく進まないのは想定通りで舞台的にはベタな気がしてくるんですが、まー三者三様それぞれの人物描写の解像度が高く、全員「うわこういう人いそう」「見たことあるタイプ」みたいな共感を呼ぶ作りがお上手でした。
「これ何のシーンなんだ?」みたいな良くわからないシーンもたまにちらっと差し込まれたりするんですが、それもさり気なく後の伏線になっていたり逆に本当に意味がないシーンだったりしてその辺りの“読ませなさ”もすごく上手いなと思います。無作為に小さなネタを散りばめて、その中のいくつかが後に「そういうことか!」とわかる、みたいな。高度なコメディ。たぶん。
三人とも実績があり、それぞれの世界を持ってはいるものの、結局突き詰めたらみんなただの俗物じゃん、みたいな点も最高。
人間どこまで行っても抗えない、誰もが潜在的に持っている器の小ささみたいなものがジワジワにじみ出てくる作り、めちゃくちゃ好きでした。
アントニオ・バンデラス演じる俳優(フェリックス)が一番わかりやすい俗物で、いわゆる「顔の良さで売れただけのスター」みたいな印象の役なんですが、実は天才と称されるローラ監督にせよ謙虚で高潔なタイプっぽいイヴァンにせよ突き詰めたらやっぱり普通の人間じゃん、という人間臭さを徹底してスマートにブラックな笑いとして見せてくる作りは相当センスがあるなと。まー笑いましたよ。
結局三人とも今までの仕事が評価されて今の居場所があり、その居場所がまとっている権力の上に自分を置いて好き勝手したり大きく見せたりしているものの、その鎧が剥がれれば結局ただのその辺の人間ですよね、みたいな凡人化の上手さがたまりません。偉そうにしてる人間なんてそんなもの、っていう。それはきっかけを作る大金持ちの爺さんも同様です。
映画制作の話ではありますが、上に書いた通り本編撮影ではなく本読みやリハーサルのシーンがほとんどで、意外と本編撮影以前の俳優の姿というのはあんまり観た記憶がないのでその意味で結構新鮮でもあります。
こういう風に練習するんだ、とかこのあと本番でまた何テイクもやるの大変だな、とか。
映画好きであればこの辺の舞台裏は気になるのが当たり前だと思うので、その意味でも映画好きの人の方が観て楽しめる映画でしょう。まああんまり映画に興味がない人がピックアップするタイプの映画でもないとは思いますが…。
あと設定上当然ではありますが、アントニオ・バンデラスとオスカル・マルティネスは「“映画で演じる役を演じることになる役者”を演じる」三重構造の演技を見せてくれる形になっていて、その辺りの巧みさもさり気なく感じられる演技も見どころだと思います。こういうの好きなんですよね。
安易にまとまろうとしないのも◎
あんまり詳しく書いても興を削ぐタイプの映画だと思うのでこの辺の薄い内容で終わりにしたいと思います。
ネット上では結構微妙な評価が多い気がしたんですが、僕としてはかなり楽しめたので思わぬ拾い物といったところ。
これ、ハリウッドだったら例によってちょっといい感じになっていきそうな気がするんですが、そういう方向に持っていかないのも大変好みでした。これで三人で同じ方向向いて頑張ります、なんて今どきジャンプでもやらねーだろって話なので。
ということで映画好きかつコメディ好きな方はぜひ。かなり面白かったです。
このシーンがイイ!
声を出して笑ったシーンも結構あったんですが、一番インパクトがあったのはキスシーンの本読みのところかな…最高でした。
あと終盤起こる一番大きな事件もゲラゲラ笑っちゃった。
ココが○
映画制作の裏側が(一部とは言え)観られるのは興味も持てるしその上面白いしで最高ですね。
だいぶ誇張はされてるんだろうけどクセが強い人もいっぱいいるだろうし、現場では実際にこんなことが…と想像するのも楽しい。
ココが×
最初は「ちょっと兄弟どっちも歳取りすぎじゃね?」と思いましたがまあ一生を描く物語(という設定)なので途中からはあんまり気にならなくなりました。
アントニオ・バンデラスももう還暦過ぎてるんですよね…超ナンパ野郎っぽいキャラでしたが本読みでは老眼鏡をする姿に哀愁を感じます。
MVA
んー三人が三人とも素晴らしかったんですが…この人かなぁ。
アントニオ・バンデラス(フェリックス役)
世界的大スター役。
本人ともリンクしてそうな、当て書きなんじゃないかと思わせる役柄ですね。高級車乗り回してとっかえひっかえ女の人とお付き合い、的な。いや実際アントニオ・バンデラスがそうなのかはわかりませんがなんとなくそんなイメージを持ってる感じで。
だからこそピッタリだったんですが、一番(劇中の意味ではなくこの映画を観ている観客に向けての)演技力が必要な役柄だったことは間違いがなく、その辺り絶妙に演じていてすごいなと舌を巻きました。
軽そうに見える役なんですが実際はかなり深い演技をしていると思います。文句無し。
あとペネロペ・クルスも依然として美人ながら、ビジュアル重視の役ではないちょっと変わった人物を見事に演じていて彼女も素晴らしかったです。
一般的にはなかなか女優としてはいい役が来ない年代に差し掛かってきていると思いますが、これを観ていたら全然安泰だな、と思わされます。


