映画レビュー1546 『ハウス・オブ・ダイナマイト』
配信終了系があんまりピンとこなかったので、今回はネトフリから。
最近追加されたオリジナルもので、ちょっとした情報も先入れしつつ観ることにしました。詳しくは後述ってやつです。
ハウス・オブ・ダイナマイト
イドリス・エルバ
レベッカ・ファーガソン
ガブリエル・バッソ
ジャレッド・ハリス
トレイシー・レッツ
アンソニー・ラモス
モーゼス・イングラム
ジョナ・ハウアー=キング
グレタ・リー
ジェイソン・クラーク
2025年10月3日 イギリス
112分
アメリカ
Netflix(Fire TV Stick・TV)

現代の「リアルな脆弱さ」に背筋が凍る。
- 発射元は不明、このまま行けば大都市へ着弾するミサイルへの対応をリアルに描く
- 発射直後の同時間を別視点で3回描き、アメリカ政府の対応の全体像が見えてくる形
- あまりにも生々しい現代版「未知への飛行」
- オチは賛否両論
あらすじ
いやーこれはものすごく面白かったですね。想像以上。
ただ面白かったと満足して鑑賞を終えるには僕と同様に事前の情報があったほうが良いと思うので、若干ネタバレに近いんですが後ほどその辺書きたいと思います。
とある日の早朝、ホワイトハウスのシチュエーションルームに出勤したオリヴィア・ウォーカー海軍大佐(レベッカ・ファーガソン)は深夜の当直チームと引き継ぎを終え、通常勤務に入った朝の時間帯に「正体不明、発射元不明」の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を探知したとの報告を受け、大統領(イドリス・エルバ)や統合参謀本部議長、国防長官(ジャレッド・ハリス)等のアメリカ政府高官からなるビデオ会議を開始します。
当初は北朝鮮による“いつもの”発射実験とみなして「いつものアレね」的に緊張感のない面々ですが、情報分析の結果ICBMはアメリカ本土に向かって飛んでいるとの分析結果が報告され、一気に緊張感が高まります。
その後様々な対応策を検討し、実行に移しますが結果は出ず、次第により精度を増していく着弾予測と被害予想に浮足立つ中、刻一刻と迫ってくる着弾時刻。
その間も動き続けるアメリカ政府の姿を追っていきます。
ラストがどんなものか、若干知っておいた方が良いかも
リアルシミュレーション的な軍事・政治スリラー。ドキュメンタリーのように生々しい作りで釘付けになりました。
主な舞台としては、最初に登場するレベッカ・ファーガソンが仕切るシチュエーションルーム(危機管理室的なところ)やICBMの撃墜を目的として行動するアラスカ州の前線基地、戦略軍司令官が駐在する基地、国防長官のオフィス、そして大統領周辺といったところ。
場所を変えて同じ時間帯を3回繰り返すため、三部構成の映画と言えます。
大統領は移動中ということもあってなかなか掴まらず、登場するのは三部から。今の時代に作られたのでさぞや軽薄な大統領なのでは…と思いきや真っ当な、むしろ等身大すぎる人物でこの辺りはやや創作っぽさを感じさせる点ではあります。というか現大統領みたいな人物像にしたらコメディになっちゃいそうだしね…。それこそドント・ルック・アップみたいなさ…。
とにかく内容は単純、「発射元不明=相手国がわからない大陸間弾道ミサイルがこのまま行くと本土に着弾、一気に高まる危機に対応する政府の面々」といった映画です。
もう本当にそれを観ていくだけなんですが、有事への対応なので当然緊張感も半端なく、また直面する人たちの行動も非常にリアルで作り物っぽさがないためにより強く惹きつけられる映画でした。途中でロシアとの電話会談が持たれたりもとてもリアル。
また他の映画でも観るような米軍の組織だった意思決定プロセスがよく登場するので、不謹慎ですがああいった軍特有のテンポの良いプロトコルが好き勢にはそっち方面でも楽しめます。
で、最初に書いた「事前情報」の話。
これはかなりネタバレに近い話なので読みたくない方はここで一旦FANZA辺りに退避して頂いて18歳以上かどうかの質問に答えてください。
ただ僕はこの映画に限ってはこの情報は入れておいたほうが良いとは思います。(自分も知ってから観ました)
ということで書きますが、それはオチの部分。つまりラストです。
この映画、最後がはっきりしないんですよ。どうなったのかがわからないまま終わります。
そこがかなり賛否両論のようで、「なぜハウス・オブ・ダイナマイトのエンディングははっきりしないのか」という記事が掲載されたぐらい気になる人がたくさんいた模様。
その気持ちもよくわかる…というか、おそらく僕も知らずに観ていたら「え? ここで終わり?」と思っていたはずです。そしてそう思ったら評価を下げていた可能性もあります。
ただ事前にそういうものと聞いていたので心の準備が出来ていたというか、そういうものとして受け入れて「よく出来た映画だな」と満足して鑑賞を終えました。
なので結末に過度な期待を持たずに観るべきというか、そもそもこの映画は“警告”なんだろうと思うんですよ。それが主眼というか。
形式的にはきっちり準備がなされていて、指示系統もはっきりしていて意思決定者が誰なのか、その序列も決まってるし、決定を下すのであればこの資料を参考に…といった情報もしっかり準備できていると。
ただ、追いついていないのはメンタルの部分、関わる人たちの内面にあるというのを喝破しているわけです。
とは言え登場人物たちは決して愚鈍でもないし、優秀な人たちばかりであることもよくわかります。それでも…という現状をリアルに描き、「このまま行けば大変なことになるのでは?」という警告なのではないかなと。
おまけにそのきっかけとなるのは“たった一発のミサイル”なんですよね。そのたった一発への対応で右往左往し、国が滅びるぐらいの覚悟を持たされ、さらにどう転がっても(どんなエンディングを描いたとしても)その後に待ち受けるのも相当に厳しいものしかない、という現実。
第三次世界大戦も高確率で想像できるし、おまけに核兵器となれば世界滅亡まで現実味を帯びてくるわけです。
この怖さったら無いですよ。本当に創作で良かったという話で。
逆にここまでリアルにアメリカの危機感を見せてしまうと敵対国に利するのでは…と余計な心配までしたくなるぐらい、アメリカのある意味での脆弱さを見事に見せつけてくれます。
一応アメリカ政府はこの映画に対して反論も出しているそうなんですが、作る側は当然しっかり下調べした上で作っているのでどちらが正しいかはなんとも言えません。ただ「都合の悪いこと」なので反論されてもあまり説得力を持たないような気もしてしまうのが人情ってやつでしょう。アメリカ、大丈夫か…?
もっと作って
監督はキャスリン・ビグロー。
彼女が一躍有名になった「ハート・ロッカー」を酷評した記憶がありますが、それもあって僕はあんまり好きではなかったんですよね。(あの映画も今観ればまた少し感想が変わりそうな気もする)
しかし前作「デトロイト」と今作を観て、これはもう評価せざるを得ないなと認識を改めました。むしろもっと作ってくれという気持ち。
これほどまでリアルな社会派映画が作れる人はなかなか他にいないと思うので、また胃が痛くなるようなこの手の映画をお願いしますと精神的土下座をして終わりたいと思います。
めちゃくちゃ良かったです。
このシーンがイイ!
レベッカ・ファーガソンが電話かけたシーンとそのあとがすごくよかった…。表情一つで見事に見せてくれます。
ココが○
おそらく監督も「未知への飛行の現代版」という認識を持って作ったのではないかなと想像しますが、あの映画の非現実的なところをきっちりリアルに今の時代に合わせてきた感じで、今になってあの映画の不満点(それでも傑作ですが)を解消してくれたような気持ちよさがあります。
まあとにかくよく出来てますよ。創作とは言えこうした政府内部の対応あれこれが観られるのは映画という娯楽の大きな利点の一つだと思います。
ココが×
強いて言うならやはりエンディングをスッキリさせてくれれば…とは思いますが、ただ多分それは狙いとはズレるんだろうなと思うので、そこを望むのは違うのかなと。
むしろこのエンディングで考えさせたいんでしょうね、きっと。
MVA
役者さんも名優ばかりですごく良かったんですが、やっぱりご贔屓ということもあってこちらの方に。
レベッカ・ファーガソン(オリヴィア・ウォーカー海軍大佐)
最初に登場するメインキャスト。一応「第一部の主人公」的なポジションでしょうか。
最初なので感情の揺れ動きとかしっかり見せないといけないからか、いろいろ考えさせる演技が本当に見事でした。
スウェーデン人なんですけどね。アメリカの危機にしっかり対応してます。

