映画レビュー1544 『ワカリウッド・フォーエバー! ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウガンダ』
配信サービスを終了したJAIHOがアマプラで復活という朗報があったわけですが、そのアマプラでのサービス開始の直前にJAIHOの映画がアマプラ定額見放題に入っていた時期が少しだけありまして、この映画もその中の1本だと思われます。
ちょうどこの前ウガンダ映画観たばっかでこれ観たかったんだよなぁと思っていただけにここぞと観ることにしました。
ワカリウッド・フォーエバー! ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウガンダ
キャサリン・ツベク
キャサリン・ツベク
アマンダ・ヒューズ
アイザック・ナブワナ(ナブワナIGG)
アラン・サリ・ホフマニス
ハリエット・ナブワナ
ダウダ・ビサソ
V.J.エミー
アンドリュー・ホランダー
2023年7月25日 アメリカ
94分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ウガンダで一つの産業が生まれた瞬間…かもしれない。
- ナブワナIGG監督の手腕に惚れたアメリカ人アランが単身監督に会いに行く
- 意気投合した二人は二人三脚で映画作りを進めていくが…
- ワカリウッド映画が世界に羽ばたく様子を眺めるドキュメンタリー
- この先もまた気になる
あらすじ
まさに僕が観た3作の裏舞台といった感じで、あの辺を観たあとに観れば感慨もひとしおな一本でしょう。
ある日たまたま「誰がキャプテン・アレックスを殺したか」の予告編を観て衝撃を受けたアメリカ人・アラン(アラン・サリ・ホフマニス)は、プライベートでいろいろなことがあったタイミングというのもあって勢いで「今行かなければ後悔する」と監督に会うべく単身ウガンダへ行きます。
ナブワナ監督の制作会社のシャツを着ながら怪しげなDVDを売っている人に声をかけ逃げられるという予想外の展開を経て無事監督と会うことが出来たアランは、監督含め映画製作に関わる人々と親しくなり、やがてなんと現地に住むようになり、脚本を書いたり出演したりとどっぷり“ワカリウッド”に浸かっていきますが、次第に監督との溝も生じてきまして…あとはご覧ください。
アメリカ人の狂気ですべてが変わる
ウガンダに何のゆかりもないアメリカ人が、予告編に衝撃を受けて監督に会いに行ったらそのまま一緒に映画を作るようになった…というなんとも奇妙な現実を追ったドキュメンタリー。
経緯上最初からアランを撮っていたはずもなく、おそらく途中で話が来てドキュメンタリー化することとなったんでしょう。序盤の会いに行くくだりなんかは再現だと思われます。DVD売りが逃げるところとか演じてる感すごかったし。
その会いに行ったアメリカ人アランというのが「バッド・ブラック」でいきなり出てきたアメリカ人医師アランを演じていた彼だった、というのがまず衝撃でした。こんな形で出ることになったのか…!
彼は元々ハリウッドで何らかの仕事をしていたようですが、ウガンダに行ったら「ここにはハリウッドにないものがすべてある」とより惚れ込んでしまい、一念発起してナブワナ監督の裏の家を借りて暮らしつつ映画製作を手伝うようになったようです。まーなんともすごい行動力。
しかし同時に“ワカリウッド”映画の問題点も提起され、ただの勢いではどうにもならない現状も伝えられます。
まず最初に資金面。本当にお金がないようです。
役者はみんなボランティア、小道具類は全部手作り。銃も手作りです。すごい。大掛かりな撮影機材も手作り。
監督は自分の作品が世界中で配信されるようになったことで「ものすごいお金を独り占めしていると思われているがまったく余裕がない」と嘆いていました。アマプラ等の配信での収益分配ってどうなってるんでしょうね…まあAmazonの体質から言ってもろくに金出さなそうな気はしますが。
そんなわけで産業として成立するのはまだまだ先になりそう。
他には「なんでアクション映画なんだ?」と疑問を持たれることも多いそうです。
アフリカの貧困地区で映画を作るなら貧困をテーマにしたものじゃないのか、みたいな。
要は「かわいそうな立場の人たちの境遇を強調するもの」を欲しがる民意のようなものがある、と。いわゆる感動ポルノみたいなものでしょう。
あるいは「コメディアクションなんて撮って見せたところで今の境遇について理解してもらえないぞ」みたいな善意のアドバイスもありそう。
つまり「なんでこんなバカみたいな映画撮ってんの?」という目。身内で遊んでるだけじゃないの? みたいな。
僕も観た3本からしてそう観られてしまいがちな作品であることもよくわかります。
が、それもわかって確信犯でやっているんですよね。監督は。
しんどい境遇をことさら強調するものを作って訴えたところでそれもまた結局変わらないのであれば、楽しいものを作って映画製作に参加している人たちも笑顔にしたい、みたいな理念があるんじゃないでしょうか。
実際、このドキュメンタリーに登場する役者さんやスタッフの皆さんはものすごく楽しそうなんですよね。実際どう考えたって楽しいと思うんですよ。こういうの。
そこがまたアランの言う「ハリウッドにないもの」の一部なんでしょう。儲け最優先の効率重視な映画作りではない、好きだから作っているその純粋さが尊いんだと。
それ故に荒削りではあるんですが、やっぱり映画産業をスタートさせる、その0から1への転換には計算高さより情熱のほうが大事だと思うので、ナブワナ監督のような人物が世に出てきたのはある意味で必然だったのかな、と思います。
当然、彼に惚れ込んで乗り込んでいって一緒に映画を作っちゃうアランのある種狂った行動力もかなり重要で、おそらく彼の尽力がなければ世界的に配信されることも無かったんじゃないでしょうか。(推測ですが)
というか僕を含め日本でワカリウッド映画を観た人はおそらく全員アランの狂気の恩恵によるものと思われるので、その意味ではやっぱりアランの貢献の大きさというのは相当なものがあると思います。
が、途中で監督とアランの間には隙間風が吹くことになりまして…まあ詳しくは観てください系なんですが。
この辺がなかなか上手く行かないな〜と部外者ながらヤキモキさせられる面もありました。
監督作を観たあとにぜひ
それとナブワナ作品を観た人にとっては超重要情報として、今作はあのVJエミーの姿が観られます! 動く! 喋る! VJエミー!
これはやっぱりナブワナ監督作を観た人であれば誰もがテンションが上がることでしょう。
しかもリアルタイムでアレやるんですよ。すごすぎる。めっちゃ観てみたい。寝るかもだけど。(なぜか眠気を誘われる)
ぜひ日本にも来てほしいですね。まだそんなに集客力が無いかもしれませんが…。
もう完全にナブワナ監督作を観ているか否かで観え方が変わるドキュメンタリーなので、ぜひ先に他の作品を観てからこちらも、とおすすめしておきましょう。
なんならセットだったんじゃないか…? って気もするぐらい、表裏一体のような気がしてしまう映画でした。
このシーンがイイ!
監督とアランが編集中の動画を観ながら一緒に笑ってるところ、すごい良くてなんなら感動しちゃいましたね…。
ココが○
よりリアルにウガンダ、ワカリガが理解できるのはとても貴重です。この地域にスポットライトがあたったという意味でもアランとナブワナ監督の功績は大きいと思います。
ココが×
☓というわけでもないですがドキュメンタリーとしてはオーソドックスなものなので、描かれるテーマ…要はワカリウッド映画への興味関心によってまるで感想が変わってくるとは思います。
MVA
まーこの人の映画なのでこの人でしょう。
アラン・サリ・ホフマニス(本人)
そもそも彼が監督に会いに行かなければ、こうして日本で作品が観られたりこの映画自体が作られたりしなかったと思うので、その功績たるや相当なものがあります。
仮に今後“ワカリウッド”が産業として成立し、ワカリガの貧困が解消されでもしたら絶対に銅像を建てないといけないレベルの貢献をしている人でしょう。
ぜひナブワナ監督とコンビの銅像を建ててほしい。いつかそれが見られるといいですね。


