映画レビュー0366 『サイドウェイ』

ワイン好きのお友達に薦められて観ました。ワインの話だっていうからてっきりフランス映画なのかと思いきや、アメリカ映画という。

アメリカもこんなにワイン造り盛んなんですね。知らなかったなぁ。

サイドウェイ

Sideways
監督
脚本
アレクサンダー・ペイン
ジム・テイラー
原作
『サイドウェイ』
レックス・ピケット
出演
ヴァージニア・マドセン
サンドラ・オー
音楽
公開
2004年10月22日 アメリカ
上映時間
130分
製作国
アメリカ

サイドウェイ

英語教師でワインマニアのマイルスは、小説家を目指すも出版社には断られてばかりのバツイチ男。彼の親友で売れない俳優のジャックがもうすぐ結婚する、ということで、二人は結婚前の思い出作りに、と1週間のワイナリーツアーに出かける。ワインを楽しみたいマイルスと、ただ女を抱きたいジャック。二人は旅先で二人の女性と親しくなっていくのだが…。

ホロ苦いですなぁ。まさに人生はワインのようで…。

7.5

「結婚最後の思い出作りに男だけで旅を」となると「ハングオーバー!」的な感じですが、あそこまでのドコメディではなく、コメディ仕立てのロードムービーという感じ。そんなにロードしてない(何)という噂もありますが、やっぱり「旅先」っていう感じがよく出ている映画なので、一応はロードムービーなのかな、と。

旅とは言ってもそこまで遠出しているわけでもなく、どうやらマイルスは何度か訪れている街が舞台の模様。そこで前から知り合いだったウェイトレスの女性とマイルスをくっつけようと画策するジャック、さらにセックスしたいだけのジャックがひっかけてきたワイナリーの女性を交え、4人でワインと人生のホロ苦さをお伝えする2時間超、といった感じでしょうか。

前半はかなり「ワインワイン」していて、ドラマ仕立てでワイン講座をお送りしているかのようなシーンも多々あり、かなり「ワインオシ」な感じが強いですが、中盤以降はかなり登場人物の人生にフォーカスしていく色合いが強く、特に離婚を経験しつつも成長しきれない主人公・マイルスの姿に、ワインと同様、人間も段々と熟成されていくもの…というようなニュアンスが込められているようないないような。

割と軽めなスタートからすると意外なほど段々と苦味を増していくストーリーは、「ああ…俺もこうだな…」と身につまされる面も含めて痛々しさすら感じられる部分もあって、軽いようでなかなか深い、「生きている人間」の映画でしたね。

後で知りましたが、この監督「ファミリー・ツリー」の監督さんなんですね。なるほど確かにあんな感じ。明るく軽めな中にも、人生の機微というか、フィクションでありながらリアルな人間像が描かれていて、オトナ向けのドラマに仕上がっております。

主人公・マイルスは一応英語教師という定職はあるものの、小説家の夢を追いながらもうだつのあがらない人生を送り、未練タラタラの奥さんとも別れ、母親のヘソクリに手を付けるような、まあ簡単に言えばダメなやつですよ。新しい恋に踏み出す勇気もない、と。

対する相方のジャックも、それなりに良家っぽいところの奥さんをゲットすることが決まっていながら、完全に「浮気のために旅行をする」と言い切る辺り、違う意味でダメな男です。どっちも結構いそうな男性像。

僕の場合、ジャック側の価値観はまったく持ち合わせていないんですが、マイルスには(さすがに母親の金を取ったりはしませんが)若干シンパシーを感じる部分があって、なんというか自分一人では前に進めない感じ、周りに引っ張ってもらってもまだウダウダ言う感じとかが、自分を見ているようで結構痛かったんですよね。

おまけになんとなく演じるポール・ジアマッティの顔を見てたところ、目が大きくよく見ると童顔で丸い顔…ともしや見た目まで似てんじゃねーか、という気がしてきちゃって、もはや他人事のように思えないハラハラ感までもらっちゃって。複雑な思いで鑑賞していました。

私事ですが、つい昨日、10年来のお付き合いになる同い年の元仕事仲間から結婚する、という電話がありまして。彼はモテモテのプレイボーイで選びたい放題だっただけに、結婚するのは勝手に「俺より後だろう」と思い込んでいた事実に気付き、そこで初めて「同性の結婚にショックを受ける」という経験をしたんですね。

急に現実に引き戻されたような、「お前、本当にもういい年なんだぜ」と言われたような感覚で、本当に「彼が結婚する決断をした」ということが嬉しいんだけど、でもどこか複雑で、悔しいような思いをして。

そういう自分がこの映画のマイルスに少し重なって見えた部分もあって、なんというか、笑い切れない切なさみたいなものがありました。2~3年前に観ていたらもっと笑ってた気がする。

今はもう、そんなに笑えない。切ない話です。

まあ、それだけ人物の描き方が良い、ってことでしょう。エンディングもすごくいいところで終わるし、所々でセンスを感じる映画でした。

正直、この手のロードムービーは大好物故にハードルが高くなる部分があるので、若干厳しめの評価ではありますが、でも面白かったし“オトナ”を自認する人なら、それなりに楽しめるんじゃないかと。

いろいろ考えちゃう部分もありますけどね。自分は。ジャックみたいな人間が羨ましいとも思うし。

その、「面白い!」って言い切れない微妙な味わいこそが「人生」で、それを描いているという意味では秀逸な映画なのかもしれません。

このシーンがイイ!

印象的なシーンは結構ありましたね。マイルスの車が左折するシーンとか。「おお、うまい」と思わず。

でも結局は財布のくだりかなぁ。単純にコメディなんですが。もうバカバカしすぎて笑いましたね。ドイヒーだな、と。

ココが○

やっぱり「みんな生きてる感」、いいですね。一般人のありそうな話をエモーショナルに描き上げました的な。

こういう話は、映画上で語られる時間以上の“幅”が見えてくるのが面白いなぁとふと思いました。不思議と彼らの過去の人生が見えてくるような感覚。意外と丁寧な脚本な気がします。

ココが×

好みの部分もありますが、ジャックが引っ掛けたアジア系の女性とマイルスの元奥さんの見た目が全然ダメ。この二人がもうちょっとだけ綺麗なら、もっと良い映画になったと思うんですけどねー。綺麗すぎるとうそ臭くなるから難しい所ではあるんですが。なんとなく、二流感が出ちゃうキャスティングかなぁと。

MVA

主演二人+マイルスの相手役であるマヤ役のヴァージニア・マドセン、この3人のうちのどれかかな、と思ったんですが、まあ今回はこの人ですかねぇ。

ポール・ジアマッティ(マイルス役)

元々好きな役者さんなんですが、いわゆる「いい味脇役」軍団員なので、この人が主人公で出てくる映画もなかなか珍しいですね。冴えない感じがドンピシャ。

おまけに自分に似ている気がしてきたからもう鑑賞中は完全に同化していました。自分も小説書こうかな、すら思いましたからね。投影しすぎだ、と。

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