映画レビュー0237 『ファミリー・ツリー』
毎月19日は某109シネマズ会員デーでお安く映画が観られるため、せっかく土曜日にぶつかったんだし…と近場の某で公開中の映画の中から選んだ一本。
会員デーだけにちょっとは混んでるのかと思いきや…ガッラガラ。
ファミリー・ツリー
ハワイの癒しが包み込む緩やかで優しい映画。
突如妻が倒れ、初めてきちんと向き合う娘二人(とボーイフレンド)に振り回されつつ、さらにその妻の浮気でやるせない気持ちになりつつもなんとかいろいろケリを付けたいと(緩く)奮闘するお父さんの、いわゆる「家族再生」的な映画です。
個人的には「私の中のあなた」なんかも観ましたが、あれは完全なる泣かせの映画だったのに対し、意外とこういう緩く、コメディまで行かないまでも軽さがある中で家族再生を描く映画というのは初めて観た気がするので、割合新鮮に観られたような気はします。
この映画のポイントは2つ。
マットの「先祖から譲り受けてきた広大な土地を売る」決断をしなければいけないという役割と、「昏睡状態で余命いくばくもない妻が実は本気の不倫をしてた」という事実。
メインは「不倫捜査」とも言うべき部分で、マット+娘2人となぜかいつもついてくる長女のボーイフレンドの4人が、旅(と言っても同じハワイの中の違う島)をしながら相手の男を探し、「言うこと言わないと」と息巻く、ちょいロードムービー的な要素。一緒に旅をするうち、自然と家族の関係性が再構築されていく…というある種お決まりの展開ではありますが、やっぱり「浮気相手を探す旅」というのが他とちょっと違って面白い。
ジョージ・クルーニー演じるマットは仕事男で家庭を顧みない「いかにも」なお父さん。長女はヤンチャが過ぎて全寮制の高校に入れられる悪ガキっぽさがあるものの、実は優しくて芯がしっかりしているというこれまた「いかにも」な女の子。次女は10歳でちょうど悪い言葉を覚え始めた頃、お姉ちゃんの悪い影響が見えて楽しい。なぜか常についてくる長女のボーイフレンドはこれまた「いかにも」なチャラ男でお父さんとは絶対に相容れない…けどなんか普通に家族の一員的な顔をしていつもついてくるのが笑える。
その4人が、特にドタバタするわけでもなく、「危篤状態のお母さん」と「浮気していたお母さん」というなんとも両立しがたい背景を背負いながら旅をしていきます。やがてその「浮気捜査」と「土地売買」の話が奇妙につながって、マットの心境が…というお話。
道中特に何かあるわけでもなく、フツーの家族のフツーの日常を切り取ったような話ではあるんですが、舞台がハワイで音楽も全部ハワイアンという演出のおかげで、かなり緩やかな、癒しのオーラに満ちた映画でした。
ただそこが悲しいかな、昨日観た「かもめ食堂」とかなり似ていて、同じような「癒し系映画」だったな、と。ちょっとこのメドレーは失敗。
当然、スクリーンを凝視して肩をこわばらせながらガン見するぜ、という映画ではなく、ハワイの空気感を味わいながら、ゆったりまったりとした世界を眺めつつ、登場する家族たちの一員になって一緒に緩やかに人生を考える、そんな映画でしょう。
「超面白かったぜ」という映画ではなかったですが、なんとなく平日の緊張感を解きほぐしてもらったような、穏やかな気持ちになれる映画でした。たまにはこういう映画もいいですね。連続で観ちゃったのはアレですが。
このシーンがイイ!
僕は男なので、長女のビキニ姿が非常に…ってそうでなく、夜中にマットとチャラ男が会話するシーン。なんか良かったですね。あそこ。全然受け入れられてないんだけど、なんかわかるというか。
ここだけに限らず、お父さんが弱みをちゃんと見せるのがよかった。
ココが○
とにかく「ハワイ、ハワイ、ハワイ」の映画で、見方によってはハワイ紹介映画とも取れるんですが、その「ドハワイ」っぷりが本当に気持ちよくて、ここまで映画の舞台に浸かった印象を持つ映画もなかなか無かったな、と思います。いい意味で力が抜けました。帰ってきたら即昼寝。
ココが×
ヘタに煽らない分、大きな波もあまりなく、「超感動」だとか「超面白」とは無縁です。
平坦でちょっとずつ進む普通の人たちの映画なので、派手さもなく。ただ、そういう映画もたまには観ないと。…ということはつまり、観るタイミングを選ぶ部分はある気がします。集中できない時に観るとかなり「流されやすい」平坦な映画なので、家で片手間にDVDとかだと全然残らなかったかも。そういう意味では劇場で観て良かったですね。
MVA
なにげに奥さんの不倫相手の奥さん(ややこしい)がかわいくてなんか印象的でしたが、ひとまずそれは置いといて。
とにかくこの手の役をやらせたら当代ピカイチのジョージ・クルーニー。やっぱり良かった。この役はこの人よりうまく出来る人、いない気がします。ただ、ハナから「ピカイチ」ってわかってるだけに、安定感はあるものの新しい発見も特に無いという悲しさもあったりするので、今回はコチラの方に。
シェイリーン・ウッドリー(アレクサンドラ・キング役)
長女役。まさに新発見。
初めて観ましたが、この子ものすごくよかったうまかった!
“お年ごろ”の女の子らしいかわいさと繊細さと生意気さが絶妙なハーモニー。登場時のガキっぽさはどこへやら、見る見る成長して「お母さんの代わりになっていくんだな」と感じさせる表情の強さも◎。
ついでにビキニ姿でお父さん世代へのサービスもバッチリ。お父さんとこの長女が別のクソ配役だったら完全にクソ映画だったでしょう。アルマゲドンでのリヴ・タイラーみたいなのが出てたらもう。ええ、許しませんよまだ。「アルマゲドン」のリヴ・タイラーと「ダークナイト」のマギー・ジレンホールだけは。