映画レビュー1046 『ザ・ヒーロー』
ネトフリ終了シリーズです。おなじみです。
最初Oculusで観ていたんですが、最近なぜか途中でいきなりネトフリが切れる現象が起きていて、めんどくせぇなってことで途中からTVで観ました。これはもうダメかもわからんね。
ザ・ヒーロー
ブレット・ヘイリー
ブレット・ヘイリー
マルク・バシェ
サム・エリオット
ローラ・プレポン
クリステン・リッター
ニック・オファーマン
キャサリン・ロス
キーガン・デウィット
2017年6月19日 アメリカ
96分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

役者は良いけど話は凡庸。
- 癌のため僅かな余生を悟った“一発屋”俳優
- 残った余生で何をするのかを自分に問い、少しずつ前に進もうとする
- 不仲の娘、新しい出会い等の要素はよく見るパターン
- サム・エリオットの素晴らしさが見どころ
あらすじ
しんみりと大人向けの終末ドラマ…的な感じでほんのり期待もしていたんですが、まあ…正直に言えば「どっかで観たような」話のつなぎ合わせ感が強く、特段惹かれるようなものもありませんでした。が、何よりもサム・エリオットが素晴らしいので彼を観るためだけに観るのもアリではないかと思います。
ということで主人公のリー・ヘイデン(サム・エリオット)は、かつて西部劇俳優として大ヒット映画に出演しているんですが、例によってそれ以降鳴かず飛ばずのため今でも「あの映画の人」としてしか認識されていないような立ち位置の俳優さんです。
持ち前の激渋ボイスを活かしたナレーションのお仕事を除けば特に目立った活動も無く、旧知の仲である元役者のドラッグディーラー・ジェレミーの元に入り浸っては一緒にマリファナを吸ってダラダラするぐらい。
一応マネージャーかコーディーネーターかわかりませんがそれ系の人物に新しい仕事がないか問い合わせてはいますが、本人にもあまり危機感も意欲も無いようで半引退状態。まあ歳っていうのもあるんでしょうけどね。
どこか人生を諦めているような彼ですが、ある日検査の結果から生存が難しい部位の癌が見つかってしまい、改めて自らの“余生”について考えることになったようです。とは言ってもスイッチが切り替わった程の雰囲気もなく、いわば“終活”のような形で疎遠になってしまった娘との対話であったり、もう一度記憶に残るような仕事を残したいという思いであったりをジワジワと抱き始めた模様。
そんな中、いつものようにジェレミーとダラダラしていたところ、彼を利用する“別客”の女性・シャーロットと知り合ったリー。後日フードトラック的なお店で再会した二人は、なんとなく行動をともにするようになり、いい感じに。
新しい出会いを触媒に、自分の問題に再度向き合うようになったリー。果たして彼の残り僅かな人生はどのようなものになるのでしょうか。
飛ばずに終わった黒ひげ危機一発
個人のドラマとしては過不足もなくちゃんとしてるし、いい歳してマリファナ吸ってダラダラしてるのもリアルにダメな感じが綺麗すぎなくて良いし、いきなり気合い入れて頑張るぜ的な嘘くささもなくまさに“等身大”な男の晩年を描いたドラマとして決して悪くはないんですが…やはりいろいろと「こういうのよくあるよね」というパターンが散見されるので先の展開も読みやすく、意外性に欠ける物語ではありました。
ちょっと“ネットでバズった”とか今っぽい話も出ては来るんですが、それもあくまでフレーバー程度で大きな意味はないし、全体的にどこか既視感のある内容を超えられずに終わっていった印象が強いです。
繰り返しになりますが決して悪くはないし嫌いでもないんだけど、この手のドラマに期待したい「グサッと刺さる何か」がまったく無かったので、飛ばずに終わった黒ひげ危機一発のような不完全燃焼感。白ひげだけどね? サム・エリオット。
それは終わり方の問題とかでもなく、おそらくピークに持ってきたいんであろうエピソードもある程度想定内だったりして今ひとつ盛り上がれなかったのが大きかったような気がしますね。
脇役俳優が主演を張るからこその味
ただまあそれでも、ですよ。
全体的に観たことがあるような内容…ではあっても、主演がサム・エリオットというだけでそこに味がにじみ出てくる不思議。
まずサム・エリオット自身、演じるリー同様に“カウボーイ俳優”の印象が強い方ということもあって、どうしても本人と役柄がオーバーラップして見えてしまう説得力がありました。実際普段はマリファナ吸ってダラダラしてんじゃねーの、って思うぐらいに“そのまま”な感じ。
おまけに長年印象的な脇役の俳優として生きてきた方なので、主演として彼にスポットライトが当たる時点で他にないたまらなさを持った映画になるんですよね。
例えばこの役をジェフ・ブリッジスがやったとしたら、おそらくもっと凡庸に感じられたと思います。それはジェフブが悪いというわけではなく、彼は主演を張ってきた役者さんだからサム・エリオットが演じるのとは微妙にこっちの受け取り方が違うと思うんですよ。
脇役畑を歩んできたサム・エリオットがここに来て(自らとオーバーラップするような役を)主演するドラマ、というだけでスペシャルな映画になるというか。この辺はスタントから始まって脇役をずっと演じてきたリチャード・ファーンズワースが「ストレイト・ストーリー」で主役を演じた感覚と近いものがあります。(実際はその前にも主演映画はあったようですが)
これは観ている側が勝手にイメージを膨らませて“味”にしているだけなのかもしれませんが、やっぱりずっと脇役中心で活躍してきた人が主演を張る映画というのは、主演が多い俳優さんが同じように主演を張る映画とはちょっと違うと思うんですよね。佇まいが。
それはその役者さんがこの役に賭けてるから云々とか言うことでもなく、おそらく(監督他)使う側が「この人にぜひ」と指名しているんじゃないか、だからこそその人にしか出せない雰囲気が感じられるんじゃないか…と僕は勝手に解釈しているんですが、この映画にもそういう「サム・エリオットにしか出せない味」が確実に滲み出ていて、それ故に凡庸ではあるもののどこか捨て置け無い良さがあるなと思うわけです。
枯れた色気をぜひ
もう一点書くなら、主人公の年齢による評価の分かれ目もありそうな気はします。
何せ主人公は余命も見えてきたほどの爺さんなので、いくらおっさんとは言え僕が観るにもまだ早いのかもしれない。
同年代とまでは言いませんが、やっぱり60代ぐらいの男性が観ればまた違った見え方もしてくるのではないかと思います。同じように子供がいて、いろいろ思うところがあったりすれば。
なのでそんなに歳ではない人にとっては時期尚早な映画なのかもしれませんね。あとはキャスティングに興味が持てれば、というところ。
とにかくサム・エリオットの“枯れた色気”のようなものが素晴らしいのは疑いようがないので、渋い爺さん好きであればぜひ観てみてほしいところではあります。
このシーンがイイ!
“読み合わせ”のシーンかな。やっぱりいろいろ持っているものを出す、劇中劇のような味があって。
ココが○
サム・エリオットの渋さ以外で言えば、なにげにロケーションが結構良いところが多く、その撮影についてもなかなかうまく撮っていたように見えました。詳しいことはわかりませんが。
ココが×
やっぱり…今ひとつピークがないというか、ありきたりに終わっちゃうところですかね…。
MVA
最近はジェシカ・ジョーンズでおなじみのクリステン・リッター、かわいくて好きなんですがあんまり出番もなくてガッカリ。
ということで結局。
サム・エリオット(リー・ヘイデン役)
主人公。
完全に爺さんなのにこの色気。すごい。渋い。かっこいい。
あとはやたらと「ローンスターバーベキューソースが〜〜」と繰り返されたナレーションシーンでもおわかりの通り、とにかく声が渋い。羨ましすぎる。ダンディの極地ですよこの人。


