映画レビュー1392 『キングスマン:ファースト・エージェント』
先週は鳥羽水族館のラッコライブカメラを延々と見ていたら終わっていたので更新できませんでした。
今週はその分4本更新したいと思います。
さて今回は特に観ようと思う映画も無いタイミングだったので、見逃していたこちらの映画をチョイス。アマプラにあります。
キングスマン:ファースト・エージェント
レイフ・ファインズ
ジェマ・アータートン
リス・エヴァンス
マシュー・グッド
トム・ホランダー
ハリス・ディキンソン
アーロン・テイラー=ジョンソン
ダニエル・ブリュール
ジャイモン・フンスー
チャールズ・ダンス
ヴァレリー・パフナー
2021年12月22日 イギリス・アメリカ
131分
イギリス・アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
シリーズとはちょっと違う立ち位置のスピンオフらしい良さ。
- スパイ組織「キングスマン」の誕生秘話
- 国際情勢に影響を与えた人物はみんな悪の組織に属していたという大型陰謀論
- コメディ感ややり過ぎ感はだいぶ控えめ、比較的普通のアクションスパイムービー
- シリーズファンには賛否両論ありそう
あらすじ
「キングスマン」シリーズではあるんですが良くも悪くも“らしくない”感じがして、それによって評価が分かれそうだなと思いましたとさ。
なんやかんや過去のちょっとしたエピソードが描かれた後…。(適当な導入)
イギリスの名門貴族であるオーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)とともにオーストリア帝国の皇位継承者であるフランツ・フェルディナント大公の護衛に携わりますが、彼の努力も虚しくガヴリロ・プリンツィプ(ジョエル・バスマン)によって射殺されてしまいます。
強力な組織の必要性を感じた彼は執事のポリー(ジェマ・アータートン)とショーラ(ジャイモン・フンスー)に命じ、世界各国の執事たちによるネットワークを構築。その情報を元に「ロシアのラスプーチン(リス・エヴァンス)をほっておくとまずいことになる」と判断、執事2人とコンラッドを連れてロシアの宮殿に潜入、ついにラスプーチンと対峙しますが…あとは観てチョーダイ系です。
ドラマ重視+超絶陰謀論
もはや人気シリーズとなりました「キングスマン」誕生の物語。
一応ポジション的には3作目ってことになるんでしょうか。ただ当然その性質上遡る形にはなるので、ストリートファイターⅡに対するストリートファイターゼロみたいなポジションです。
全体的な作りと相まってややスピンオフ感もあります。主人公もタロンくんじゃないしもちろんハリーも出てこないし。
キングスマンのリーダーは歴代「アーサー」と呼ばれていて、部下の面々の名称からもわかる通り当然「アーサー王物語(の円卓の騎士)」を思い出させるわけですが、その辺りの由来も含めて「キングスマンがいかにして誕生したのか」を観ていくことになります。
全体の雰囲気としては正直「あれっ? これキングスマン?」と思ったぐらいには“ちゃんと”していて、超人的な動きで一気にテンションを上げてくる過去2作のオープニングとはだいぶ違う、ちょっと大人しめで真面目なスタートをずっと引っ張っていくようなドラマ重視の内容に思え、過去作が好きな人たちとしては少々物足りなさそうな気もしました。
早回しにスローも駆使した能力のデフォルメ=コメディ感もほぼ無く、誕生秘話であること+3作目という立ち位置からも「ちょっと方針転換して目線を変えるよ」的な意図が伺えたような気がしないでもないですね。やっぱり「売れたシリーズの3作目」は良くも悪くも変えてきますからね、大体。(したり顔)
なので「前2作サイコーだぜ!」という人はちょっと戸惑いそうな続編だなと思いますが、僕は率直に言って前作をあまり評価していないだけに「これはこれでいいんじゃない?」という感じで普通に(と言うとなんですが)楽しめました。(点数一緒だけど)
1ほど突き抜けた面白さは無いものの、とは言え「歴史を絡めた古のスパイ映画」的には悪くないんじゃないかと。時代が古いだけになかなかガジェットで工夫もできないだろうし。
一方で「キングスマンらしい」ぶっ飛んだ感じがまるでないので、なんだか普通の映画になっちゃったな感も拭えず、「まあ面白かったけどもう一度観たいって感じでもないな」というスペシャル感の無い映画になってしまったのも確か。なんでしょうね、看板のイメージから来る消化不良感みたいなものが付きまとう映画だったなと。
主人公もレイフ・ファインズだけにおっさんもおっさん、動きのキレ等で見せるようなものでもないし、より紳士・貴族的な側面を強く押し出した印象で、良い悪いは置いといて「なぜキングスマンにスパイ組織が作られたのか」「なぜイギリスなのか」といったルーツに対するこだわりの方に力点をおいているように見えました。
そうやって主人公サイドを真っ当に描いた反動なのか、敵対する組織はもう「悪いやつはみんなこの組織にいたんだよね」という陰謀論全開の組織になっていて、普通に見ればそこがぶっ飛んでて面白いんだけどネットのレビューでは「歴史も学べて面白い!」みたいな人もいて危なすぎるだろとちょっと心配になるような世界観。
あらすじに登場したプリンツィプによるフェルディナンド大公の暗殺は、言うまでもなく第一次世界大戦の引き金となった「サラエボ事件」を模しているわけですが、そのプリンツィプはもちろんラスプーチンも、レーニンもマタ・ハリも全部その組織に属していて世界を牛耳ろうとしている…という節操の無さ。
詳細は避けますが後々登場してくるのも「やっぱりお前もかよ」という人選で、もう世界史に汚名を残している人間は軒並みこの組織の人間だよという雑な陰謀論感がバカバカしくて笑えます。これ1と2のボスもこの組織所属だろ絶対。
ただその今作のボスについては最後まで引っ張って引っ張って隠しているので「誰だ誰だ」と気になるんですが、出てきたところで「あれ、こいつ誰だっけ?」ぐらいの感じで隠した甲斐のない残念びっくりだったのも悲しい。(観ている僕の能力が低いだけでもあるんですが)
そのラスボスとの対決にしても、環境的に「もしやこういうオチでは」みたいな想像をそのまま演じてくれるので、終盤に行くに従って既視感のある内容にガッカリ感も高まり、もうちょっとなんとかなったんじゃないのと言いたくなったりもしましたね。ほんと大作の終盤の展開は大体既視感が強くてもう…。
次作も予定されております
Wikipediaによると「時系列上の3作目」と合わせて撮影されることが明かされたらしいので、となると次作も当然作られるんでしょう。まあそうでしょうね。この映画もコケたわけではないだろうし。
ただ2が2だったし今作も(面白かったんだけど)ちょっと期待とは違うかなというところに来ているだけに、次作がどうなるのかは興味半分不安半分といったところ。
それでも観ちゃうとは思うけど。ただ鼻息荒く「劇場行くぞ!」ってなるほどのシリーズでは無くなっちゃったかな…残念。
このシーンがイイ!
ラスプーチンとのバトルはものすごい良かったですね。さすがリス・エヴァンス。いやリス・エヴァンスの功績かわからないけど。怪しさ満点、踊りつつのバトル。
あの感じが最後まで観られれば…まあキャラも違うししょうがないんだろうけど。
ココが○
前日譚としての出来は決して悪くないです。(陰謀論まみれとは言え)歴史に絡めて「キングスマンが生まれる必然性」みたいなものがしっかり伺えて。
ココが×
んーやっぱりボスとそのバトルかな…。終盤で一気に「ああ、いつもの…」ってテンション下がっちゃった感じ。
MVA
密かに1人3役の芸達者ぶりが光るトム・ホランダーも良かったんですが、今作はこの人でしょう。
ジェマ・アータートン(ポリー・ワトキンズ役)
挨拶しない生意気執事。と思いきやなんならもうほぼ後妻みたいなもんでしたね。
物語のキーマンでもあるし、強いしやたらかっこいい。間違いなく裏主人公でした。
この人は結構長いこと見てきて勝手に親近感を抱いており、あんまりいい役が無いのが気の毒に思っていたので今作はやっとやってきた良い役、って感じで「良かったね」と親戚のおっさんのように観ていました。
それと上にも書いたリス・エヴァンスもさすが。登場シーンは少ないですが、“らしい”怪役を見事に演じていて良かった。