映画レビュー1393 『アンニョン! 君の名は』
今回はJAIHOより、ずっと観ようと思いつつ後回しにしていた一本。常時配信ものです。
アンニョン! 君の名は
バンジョン・ピサンタナクーン
チャンタウィット・タナセーウィー
ノントラ・クームボン
バンジョン・ピサンタナクーン
チャンタウィット・タナセーウィー
ヌンティダー・ソーポン
ワラタヤー・ニンクーハー
クリッサナサック・カンタタムワウォン
チャッチャイ・ポンプラパプン
2010年8月19日 タイ
130分
タイ
JAIHO(Fire TV Stick・TV)
ヒロインがヤバい。
- それぞれ別個に韓国旅行にやってきた男女がひょんなことから一緒に観光へ
- それぞれパートナーもいてあまり相手に興味もないんだが…?
- ヒロインの内面から感じるかわいさがとんでもない
- こんな旅行がしたい人生だったNo.1
あらすじ
序盤〜中盤はあんまりノレず、「好きじゃないかも」と思って観ていたんですが…後半からもうやられっぱなしで最終的には超良かった、って感じでした。なんならちょっと泣いた。
酔っ払ったあとに搬送されたのか不明ですが、友人たちに車のトランクに入れられ強引に空港まで運び込まれた男(チャンタウィット・タナセーウィー)は、何やらちょっと場違いっぽいツアーに合流して一人軽装のまま韓国へ。その後もカップルだらけのツアーに混じって一人つまらなそうに観光地を回ります。何しにきたんだ。
一方同時期にいわゆる聖地巡礼的なロケ地巡りを目的に一人韓国へやってきた女(ヌンティダー・ソーポン)は念願の韓国旅行だったらしく、大変エンジョイしております。
初日に一人酔っ払って偶然彼女が泊まっている民宿的なところで寝てしまった彼は、翌朝ツアーの集合に遅れる! と焦っているところに彼女が登場、ちょうどタイ人同士で言葉も通じるからと強引に自分が宿泊するホテルへ案内させますが場所を勘違いしていたために時間切れ、「責任取って今日一日一緒に時間潰してくれよ」とこれまた強引に彼女の聖地巡礼に付き合います。っていうか付きまといます。
そうやってひょんなことから一緒に観光することになった2人。当然ラブコメなので少しずつ距離がお近付きになっていくわけですが、しかし双方恋人もおりまして…はてさて。
男はクソ、女は最強
個人的に3本目のチャンタウィット・タナセーウィー。パッと見その辺の兄ちゃんでしかないんですがやっぱりなんだかんだ良い映画出てるし良い役者さんなんでしょうね。もちろん演技もちゃんとしてるし。最近夢にも出てきたぐらい自分の中でもおなじみ感出てきました。
この映画はどちらも名前がわからないまま一緒に過ごして惹かれていくお話なので、都合上どちらも「男」「女」としか言えないためややぶっきらぼうレビューとなりますがご容赦ください。
んでそのチャンタウィット・タナセーウィー演じる男なんですが、オープニングで友だちに無理やり空港まで連れてこられてそのまま韓国ツアーに参加している感じからもちょっと学生っぽさが強い…つまりは配慮の足りない若い男感があり、おまけに偶然知り合ったタイ人女性(ヒロイン)に無理やり案内させたりついて回ったりしつつ、彼女がハマる韓国ドラマは「くだらない」と腐す…というなかなか嫌なヤツで、早い話が性格がよろしくない。
もうね、本当に嫌なヤツなんですよ。当然この2人が主演のラブコメなので惹かれるのは百も承知で観ているんですが、「こんなヤツ好きになるか??」って感じでまったくノレない。
ただ、笑わせようとおちゃらけたりするモテ男ムーブみたいなものも結構垣間見えるので好きな女性も多いのかなと推測したり。なにせこっちはほとんど異性として評価されていない人生を歩んできている人間なだけに、「まあそれでも俺よりはモテるんじゃねーの…」と早くも開始10分で腐れ涙を流しながらの鑑賞となりました。
一方、一人聖地巡礼のため韓国へやってきた“女”の方。
彼女はぶっちゃけ見た目そんなにかわいくないよね? と鑑賞前から思っていて、でもネットの(数少ない)レビューも二言目には「ヒロインがかわいい!」だったので半信半疑で観たところ、やっぱり見た目はそんなにかわいいってわけでもないんですよ。こういうことを書くのもすごく失礼なんですが。
印象としてはタヌキが化けた松たか子、って感じで。ほんのりクロエにも似てるな〜と思いましたが、でもやっぱりちょっと垢抜けない感じはありました。なので(この映画に限らず)写真だけ見てもイマイチかわいさがピンと来ません。
だが…!
結果的にはまーほんっとにかわいかったですね。めちゃくちゃ。最終的には「ホームステイ」のチャープラン・アーリークンばりに「この子に惚れない男いるのか!?」と机をダンダン叩きながら鑑賞を終えました。っていうかチャープランあれ以来映画出てないってどういうことだってばよ…!
とにかく表情が豊か。一部で「演技が過剰」みたいな意見も見ましたが、僕はそうは感じなかったですね。むしろよくここまで感情移入できるなとひたすら感心。
笑いも怒りも泣きも全部真に迫る感情の高ぶりが見て取れて、もうその演技だけでこっちが揺さぶられちゃう。んでそういう演技の先に何があるのかというと、もう内面からかわいさが湧き出てくるんですよ。表情の豊かさでかわいさスカウターが爆発するレベル。鳥山先生追悼です。
今となっては結構微妙な言い回しかもしれませんが、いわゆる「女は愛嬌」的な、愛嬌によってかわいさが最大限引き出される形。僕も個人的に愛嬌のある女子が最強だと思っているので、まさにそこにガッチリハマっためっかわ女子だった、ということになります。
そして例によってネタバレになるので詳細は避けますが、彼女を引き立たせるもう一人のキャスティングがお見事すぎました。ものすごく対極的な2人を配して物語を揺さぶるのがすごく上手い。これには本当にやられましたね。単純だけどものすごくよくできてました。
彼女の旅の目的上、タイ映画でありつつ韓国観光を兼ねているのもひと粒で二度美味しい感があり、異国の地で良い出会いがある旅って最高すぎないか!? と全身が羨ましさでコーティングされました。羨ましさファウンテンです。
多面的な人間描写
で、「こんな男にこんないい子が惚れるかね…」とやさぐれ気味に観ていたわけですが、徐々に男の方も成長なのか変化が見え始め、実直さを見せ始めます。(それはあかんやろ的な行動もするんですが)
とは言えあの程度の男が態度を改めたところでねぇ…と思いつつも、でも考えれば自分含めて人間誰しも多面性を持っているわけで、きっと彼にとって彼女が「旅先で出会ったただの同国人」から「大切な一人の女性」に変化していったことで表出する人間性にも変化が見え始めた、ってことなんでしょう。僕だって同じお悩み相談でも野郎と女子とでは扱いがまったく違いますからね。野郎にはまず金を振り込め話はそれからだって言いますよ。
そういった面も含め、それぞれの感情の描き方もしっかり丁寧(これはタイのラブコメ全般に言える気がする)だし、さらっと伏線回収も非常にお上手だしで結果大満足。とても良かったです。
特に「どうせくっつくんでしょ」の先入観をわかった上でギリギリまでどっちに転ぶかわからない展開にはかなり心揺さぶられました。「いいの!? それでいいの!?」と何度言ったことか…。
むしろラブコメ慣れしている人こそ(タイ映画というレアさもあり)観るといいのではないかなと思います。
ハリウッドのトップスター2人によるラブコメとはまったく違う、泥臭い雰囲気の2人かもしれませんが、それぞれ魅力的で最後まで楽しませてくれる作りは本当にお見事でした。
オススメ!
このシーンがイイ!
ニセヨン様のシーン超好きでした。めっちゃ似てるけど微妙な感じがもう最高すぎて。必見です。
ココが○
終盤の展開には本当に感情を揺さぶられまして、めちゃくちゃ良かったです。前半イマイチでも我慢して観てほしい。
あと「名前がわからないまま関係性が深まる」作りもすごく良かったですね。それを活かしたエンディングもめちゃくちゃ良いところで終わるので最高でした。
ココが×
やっぱり「男の性格」になるのかなーと思います。ただそれも上に書いた通り、表に出てくる性格が切り替わったと考えれば自然なのかなと思うんですが、とは言え一旦「こいつに惚れるかよ」と思っちゃうとなかなかしんどくなるのもわかる。
MVA
なんだかんだチャンタウィット・タナセーウィーも良かったなと思うんですが、この映画はおそらく100人中100人がこの人と言うのではないかと…。
ヌンティダー・ソーポン(女役)
韓国で知り合う“女”。名前はわかりません。
散々書いた通り、内面からくるかわいさの具現化がとんでもない女優さんでした。めちゃくちゃかわいい。超一緒にいたくなるタイプ。絶対楽しい。そう思わせる脚本と演技、見事としか言いようがありません。