映画レビュー1531 『10人の泥棒たち』
配信終了が迫っている例のやつ。
「韓国版オーシャンズ11」と聞き、これは観ないわけにはいかないぞということで。
10人の泥棒たち

…これ、恋愛映画じゃない?
- “デカいヤマ”として香港チームと組んでカジノから巨大ダイヤを盗む計画を立てる窃盗団
- しかしそれぞれの人間関係も絡んで疑心暗鬼の中計画が進む
- 「オーシャンズっぽい」のは前半だけ、後半はかなり質感が異なる
- 男女の話が多すぎ
あらすじ
ご存知の通り、なにせ「オーシャンズ」シリーズ大好き人間なのでハードルが上がりすぎてしまったのか…結局「密輸 1970」の方がオーシャンズだったよね、という感じ。
とある美術館から首尾よく高価な美術品を盗み終えた窃盗団チーム、お次のヤマはかつて仲間だったマカオ・パク(キム・ユンソク)の手引による二千万ドル相当と言われる巨大ダイヤモンドを盗む計画。
持ち主はマカオのカジノに入り浸っており、そこの“侵入不可能”な金庫から盗み出すという計画です。
チームメンバーは現チーム4人とマカオ・パク、さらにお勤めから戻った元メンバー・ペプシ(キム・ヘス)の他に、香港から中国人窃盗団4人を加え計10人という大所帯。
しかし面識もなくお互いのことを信用しきっていない韓国・香港チーム双方の不信感に加え、かつてともに仕事をしていながら袂を分かったマカオ・パクへの不信感も重なり、それぞれが疑心暗鬼に陥りつつなんだかんだと協力体制を築いていく形に。
一枚岩とは程遠いチームですが、果たして計画は上手くいくんでしょうか。
似て非なるもの
メンバーの多さからしても確かにオーシャンズっぽいし、おまけに舞台はカジノ。マカオのカジノは初めてちゃんと見たんですが確かに「東洋のラスベガス」と言われるだけあってラスベガスっぽい。なので実際「韓国版オーシャンズ」と言いたくなる気持ちもわかります。でも中身は全然違いました。
オーシャンズシリーズの良さは書き始めると長くなるので簡単に済ませますが、この映画がなぞっているような「メンバーが多いチームによる仕事」「カジノが舞台」とかそんなところではなく、「チームメンバーの当意即妙なやり取り」「どんでん返し的な騙しのテクニック」「テンポの良さとコメディ感」とかだと思うんですよ。(もっといろいろありますが割愛します)
確かにパッと見オーシャンズっぽいんですよ。くどいですけど。でも中身は全然別物ですよこれは。
まずチームが即席チームで、しかも国籍も違うから意思疎通も中途半端(それが悪いというわけではなく事実として)だし、それぞれが不信感を抱いている状況が割と前半からしっかり描かれます。
なのでもう最初の時点でこの映画は「誰かが身内(チームメンバー)を騙そうとしているのか否か」が主題になってくる話だと思うんですよ。その時点でまったく違いますよね。
もちろんこの映画が「オーシャンズっぽさ」をウリにしていたわけではないので、その辺の(割と安直な)評価に対して「ちょっと違うんじゃないの」と言っているだけなんですが、とにかくもうあらゆる意味でああいうものを期待するとガッカリすると思います。ホント、全然「密輸 1970」の方がオーシャンズでした。あれは演出的にも意識してるっぽかったし。
この話を引っ張ると長くなってしまうのでこの辺にしますが、まずとりあえず「韓国版オーシャンズ」を期待するのはやめましょう。
で、じゃあどんな映画なんだという話なんですが、「ダイヤを盗む計画」が進行中は確かにオーシャンズ的な盗みの話も多く、そこまでに関してはそれでいいんですが…後半ちょっと展開していくと、かなりアクション寄り&個々の人間関係にフォーカスした話になっていきます。結構ハードなドンパチもあって、その辺は韓国映画らしいな、という感じ。
アクションについてはかなり力が入っていて、なかなか観ない面白い逃走劇もあって結構満足しました。オーシャンズ的なものを期待していたので方向性はちょっと違ったんですけどね。
ただ、人間関係の方があまり好きになれず。
まーとにかく男女の話が多いんですよ。
誰と誰が昔どうだったとか誰が誰を好きだとか誰が誰とあーだこーだと…これが結構ボディブローのように効いてきて、「また男女の話ですか…」みたいな。
結局最終的には男女の話が中心になっていくような感じなので、余計に「思ってたのと違う…」ってなっちゃったんですよね。特に不要な男女の話が出てくると一気にテンション下がるタイプなので。
これはこれで落とし所としては理解できるし、そこスタートで作り上げたという意味では良く出来た脚本だとも思いますが、なにせ(勝手に)オーシャンズっぽいものを期待して観ていただけに、その期待からどんどん逸れていく内容にはちょっとガッカリしてしまいました。
まあアレですね、端的に言えば「狙った仕事が終わるまで」がオーシャンズシリーズですが、この映画は「狙った仕事の後に人間関係の精算が始まる後半戦」という感じです。
そこが好きになれるかどうかで評価が変わるんじゃないかな、と思います。
サイモン・ヤムが見られる喜び
一方でキャスティングという意味では非常に豪華で、何と言っても香港チームのリーダー的存在として登場するのがサイモン・ヤムっていうのが最高ですね。まさか韓国映画で彼が見られるとは。
サイモン・ヤムは韓国チームのおばちゃん、ガム(キム・ヘスク)と「日本人夫婦」の設定でカジノに潜入するんですが、母国語では会話が通じない2人かつ日本語が得意(という設定)なので2人のシーンでは怪しい日本語でやり取りするのがなんか妙で面白かったです。
その他のメンバーもおなじみの俳優さんが多く出演しているので、韓国映画・香港映画好きとしては盛り上がるポイントではないでしょうか。イ・ジョンジェのチンピラ感すごかったけど。それもまた貴重。
ただ、内容が期待とちょっと違ったのが残念だったな、ということで。それでも良く出来てはいると思います。
このシーンがイイ!
ビルの外を逃げ回るシーンはすごかったですね。もちろんスタントマンだろうけど…。
ココが○
基本的にこの手の込み入った犯罪話は好きなので、特に前半は半信半疑ながらその後の展開に期待して楽しめました。
ココが×
やっぱり後半だいぶジャンルが変わっていってしまったところをどう評価するかだと思います。
一気にノワールっぽくなってきたりもしてそれはそれでいいんですが、もうちょっと軽快な映画の方が良かったなと…。
MVA
「密輸 1970」と両方に出ているキム・ヘス、こういう役がお得意なんでしょうか。お綺麗でしたね。
初めて見たアンジェリカ・リーの綺麗さも見逃せませんでしたが、ご贔屓さんなのでこの方に。
オ・ダルス(アンドリュー役)
香港チームのダメ人間。ダメ人間さがいい味出してます。
香港チームとして出てきたので「これオ・ダルスじゃね? でも中国語話してるしな…」と思ったらオ・ダルスでした。ご本人が中国語を話せるのかはたまた役柄上覚えてやっていたのかはわかりません。
やっぱりなんかこの人いいんですよね。今作は等身も少ない感じで。なんか頭デカくない? みたいな。
美男美女ばっかりなのもやっぱりうんざりしてきてしまうだけに、こういうコメディリリーフ的な役割を担える脇役の方は本当に重要です。


