映画レビュー1494 『密輸 1970』
前回とは打って変わって評判の良い韓国映画で非常に気になったので観ました。
密輸 1970

韓国版「オーシャンズ8」?
- 近くにできた化学工場のせいで海産物全滅、生活のためやむなく密輸に手を出す海女さんたち
- 「一回で辞める」という船長だが当然そうは行かず…
- 確実に「オーシャンズ」シリーズをリスペクトしてるっぽい演出
- コメディ仕立てのハードな「あまちゃん」
あらすじ
評判通り、面白かったですね。前回と同じ韓国コメディ(系の)映画ですが、レベルが違いすぎていかにこの約20年で進歩したのかがよくわかりました。
舞台は1970年代、韓国の漁村クンチョン。
主な産業は海女さんたちによる漁業というのどかな田舎なんですが、近くに化学工場ができたことで海水が汚染されてしまい、獲った海産物も出荷できるような代物ではなくなってしまいます。
おかげでパッと見10人ぐらいいる海女さんたち+船長やその他のメンバーは一気に廃業寸前に追い込まれる事態に。
そこに何やら怪しげなブローカーらしきおっさんが船長に「この前の話、どうすか?」的にお願いしてきます。早い話が密輸の手助けをしてくれないか、という依頼。
このままではみんなが路頭に迷ってしまうため、やむなく「一回だけ」のつもりで引き受けた船長、海女さんたちとチームプレイで無事仕事を終え、一回の仕事でやたら羽振りがよくなる面々。
船長はこれで終わりと思ってはいるものの、しかし当然他のメンバーとしてはこんな美味しい仕事は手放したくないわけで、結局2回目の密輸に繰り出すことになりますがしかしそこで大事件が起きてしまい…あとはご覧くださいませ。
オーシャンズっぽさ
「ハードな“あまちゃん”」なんて書いておきながらあまちゃん観てないいい加減なヤロウです。よろしくどうぞ。
一応犯罪映画ではあるんですが、雰囲気的にはだいぶコメディに振ったエンタメ路線の犯罪映画、という感じでこの辺からも「オーシャンズシリーズの系譜」を感じるところですが、劇中に流れる「種明かし」シーンのときの演出から音楽までまるっとそのまま“それっぽい”ので僕は確信しましたね。監督、絶対オーシャンズシリーズ好きだろ、と──。
で、そんな「オーシャンズシリーズ」っぽい犯罪映画なんですが、主人公たちが海女さんということもあって「強い女性」たちの物語でもあり、オーシャンズシリーズの中でも最も近いのは「オーシャンズ8」かなと。
が、かと言って主人公2人+オップン(喫茶店女子)以外は完全に脇役感が漂っているので、「オールスター的犯罪映画」として考えると全然オーシャンズっぽくはないです。そこはご注意。
また「オーシャンズ」っぽさもありつつ、序盤の“事件”を契機に袂を分かつ2人の海女さんによるシスターフッド的な映画という側面もあります。
このシスターフッド的な部分が今の時代の映画らしさを高めているし、その時流に乗ったところもまた面白さにつながっていると思いますが、こういうのが嫌いな人もいるとは思うのでその辺自覚がある方はご注意かな、と。
その辺りもあってなのか、映画の出来の良さの割にはIMDbも6.2(2025年6月現在)とイマイチ振るいません。
ちょっと穿った見方かもしれませんが、要は「女が男をやり込める」のが気に食わない人たちが評価を下げているのでは…と思ったりもしますが事実はどうかわかりません。
ただそう言っておきながらなんですが手放しで褒められるほどめちゃくちゃ出来が良いとも言い切れず、特にラストはもう少し緻密な方が良かったかなと思います。ちょっと雑というか、最後はパワープレイで乗り切っちゃいました的な感じがしないでもなかったかなと。
ラストのしてやったり感をかなり上手くこなしていたら、おそらく相当に…「エクストリーム・ジョブ」ぐらいの評価は頂けたのではないかなと思うのでそこがちょっと残念ではありました。
もう一点書いておきますが、「エンタメに振ったコメディ犯罪映画」ではありますが、意外とガッツリバイオレンスシーンも入ってきます。すごい痛そうなやつが。
なのでそういうのが苦手な方はこれまたご注意です。グロいわけではないので僕は気になりませんでしたが、それでも結構な血まみれだったりするのでここの辺は評価が分かれそうなところ。
せっかくシスターフッド的な旨味があるならもうちょっとあの辺はソフトにしても良かったような気もしますが…でも女性の方がグロ系好きだったりするしよくわかりません。実際。
水中アクションも素晴らしい
それと主人公が海女さんというのもかなり珍しい映画ではありますが、海女さんなだけに水中アクションが結構しっかり展開されるのも見どころでしょう。
ついこの前「ファイナル・レコニング」を観ちゃったのでそっちと比べるとアレかもしれませんが、コメディ仕立てのこの映画でこれだけしっかり水中アクションを撮るというのもなかなかすごいことではないかと思います。
お決まりのようにサメも登場してちょっとしたモンスターパニック系の要素まで登場しちゃって、なかなかてんこ盛りで贅沢な一本と言えるでしょう。
面白かったものの結構びっくりするぐらい残るものがない映画でもあるので、いわゆる消費系エンタメ映画として気楽に観たいときにおすすめ。
昔のファッションを再現した面々が絶妙にダサいのもすごく良いですね。その辺りの再現度も高くて。
そう言えば余談ですがミンクの襟巻きって見なくなったけどまだ売ってるんだろうか…。今見ると結構な残酷アイテムだなと思いますが…。
それはさておき、タイトルが結構シビアそうな印象もあるんですが中身は全然コメディなので食わず嫌いせずに観てみるといいのではないかな、ということで。差し障りのないまとめで終了です。
このシーンがイイ!
やっぱりクライマックスの水中アクションが一番の見どころでしょう。
ココが○
上に挙げた以外だと、劇伴でいかにも古そうな歌謡曲(もちろん韓国の歌)がかかるんですがこれがすごくいい。めっちゃ雰囲気を盛り上げてくれます。時代感を。
ココが×
やっぱりクライマックスでしょうか。もう少し緻密に、気持ちよくさせてほしかったですね。
MVA
主人公の2人はそれぞれキャラの違いも際立って素晴らしかったんですが、一番はこの人かなと思います。
コ・ミンシ(オップン役)
喫茶店のバイト→店長。
やや大げさなんですがそれも計算されていると思われる素晴らしいコメディリリーフ&キーマンっぷり。お見事でしたね。
絶対騙されちゃダメなタイプでしょと思うんですがこういうタイプに騙されるのが男だぞ、と。
ちなみにWikipediaに載ってる写真が劇中とまるでイメージが違う超かわいい写真であることも付記しておきます。
髪型の違いって大きいよね、やっぱり…。


