映画レビュー1495 『ロスト・キング 500年越しの運命』

結構地味そうなイギリス映画ですが評価が高いのでこれは当たりだろう、ということで観てみることに。
なおここで一旦アマプラとはお別れなんですが、最後に限ってCMが入らなくて逆に何だよっていう。
買い替えようとしたら調子がいい、みたいな話やめてほしい。

ロスト・キング 500年越しの運命

The Lost King
監督
脚本
原作

フィリッパ・ラングレー
マイケル・ジョーンズ

出演

サリー・ホーキンス
スティーヴ・クーガン
ハリー・ロイド
マーク・アディ
リー・イングルビー
アマンダ・アビントン

音楽
公開

2022年10月7日 イギリス

上映時間

108分

製作国

イギリス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ロスト・キング 500年越しの運命

実話ベースだからこその良作。

8.5
簒奪者として名高い王の遺骨を執念で探す一人の素人女性
  • 観劇を機に悪名高き英国王リチャード3世に興味を持った女性、深堀りを始める
  • いわゆる“歴女”が推しの復権のため奔走する実話系歴史探訪ドラマ
  • 対象を知らなくても観やすい理解のしやすさ、作りの良さが光る
  • サリー・ホーキンスが出てる映画は大体良い映画説(ゴジラKoM除く)

あらすじ

評判通り、安定感のある良さというか、誰が観ても評価できる嫌味のない良い映画だなと思います。

子ども2人の母でもあるフィリッパ(サリー・ホーキンス)は、息子と一緒に観に行ったシェイクスピアの劇「リチャード三世」を見て以来、簒奪者として名高い彼のことが気になり、いろいろ調べたりと興味を持ち始めます。
彼女は難しい病気を持ち、職場でもあまり評価されていないところに自分を出し抜いて若く美人な新人が抜擢されたことにちょうど嫌気が差したタイミングでもあったので、会社をサボってまだ見つかっていない彼の遺骨を探そうと活動を開始。
同じく彼の“ファン”である市民サークルにも参加して情報交換しつつ、「この辺に埋葬されているのでは…」という場所にも当たりをつけますが、当然多額の費用もかかるだけに「普通の共働き主婦」であるフィリッパ一人の力では発掘することは出来ません。
しかし諦めきれないフィリッパは、発掘作業を行えるよういろいろなところに働きかけますが…あとはご覧ください。

おそらく事実に近い話

これがフィクションだったら「ありえないでしょ」と一蹴してしまうような、ある意味荒唐無稽な話なんですがこれがほぼ事実だって言うんだから面白い。まさに事実は小説よりも奇なりってやつですよ。
主人公のフィリッパは実在する人物で、実際にリチャード3世の遺骨探しを“趣味で”していた人物です。このことからも実話が元だよと。
いわゆる「実話ベース」の映画は山程ありますが、それこそ「インスパイアされて設定だけ持ってきました」みたいな映画(ストレイト・ストーリーとか)のように“ほぼフィクション”のものもあれば、(ドキュメンタリーではなく)創作だけどほぼ事実だよ、というようなものもあり、結構幅が広いんですよね。
後者については判断が難しいので「この映画は後者寄りかな…?」と推測するしかないんですが、おそらくこの映画は限りなくその「後者寄り」の映画ではないかなと思います。
絶対的な指標とは言えませんが、ポイントの1つとしては「登場人物が実在する人の実名である」という点があるのではないでしょうか。本人の名前を使っておいてウソばっかり、ってわけにはいかないでしょうからね。やっぱり。
それが例えば「英国王のスピーチ」みたいな古い話であれば当時を覚えてる人もほぼ生きてないしある程度嘘も付きやすい(英国王のスピーチが嘘付いてるよ、という話ではなく時間の尺度的に嘘を付きやすいというポジションの話です)のではないかなと思いますが、この映画はたかだか10年ちょっと前の話なので、もう全然その辺の皆さんの記憶にある出来事なだけに、そうそう嘘くさい話には出来るはずがないんですよ。
おまけにちょっと組織とのいざこざとかも出てくるので、その組織が今になってまた文句言ってくる(最悪訴訟になったりとか)可能性もあることを考えると、「すごい嘘くさい話だけどマジなんだな」と衝撃を受けるわけです。
まずこの事実との近さ&事実とは思えない無謀な行動の両立がすごく映画向きな内容になっているのが素晴らしい。映画になるべくしてなったような実話だと思います。
劇中ではフィリッパの妄想なのか精神的に追い込まれてなのか微妙なラインで「リチャード3世の幻影」が出てきます。
この辺は確実に「映画的な演出」というやつだと思いますが、そういった細かな日常のアレコレは脚色だとしても、大枠の出来事はほぼ事実のままなのではないでしょうか。

これは完全に僕の感覚的な話でしかないんですが、基本的によほど話がぶっ飛んでいない限りは現実に近づけば近づくほど映画としての面白さは減りがちで、逆に脚色を増やせば増やすほど現実と乖離していく代わりに“映画的な面白さ”が増すんだろうと思うんですよ。まあ普通に考えればそうですよね。おそらくね。
それを踏まえた上で考えると、この映画は割と事実に即した内容を守りながら上手に脚色を盛り込んで映画的な面白さも盛り込みつつ、日本人のように「リチャード3世って誰よ」みたいな人が観ても楽しめる程度にはきちんと説明も入れているわけです。説明臭くない程度に。
普通に観ているとあんまり感じない地味な部分ではあるんですが、このバランス感覚は相当重要だと思うので、この監督と脚本家はなかなかの仕事師だな…と思ってたら脚本に名を連ねるのはスティーヴ・クーガンですよ。今作では別れた夫役を演じてますけども。
で、監督のスティーヴン・フリアーズとは「あなたを抱きしめる日まで」でもコンビを組んでいるんですよね。
日本ではあまりメジャーな方ではない2人ですが、なかなかいいコンビなんじゃないかと思います。この映画も「あなたを抱きしめる日まで」もどちらもすごく良い映画ですからね。

ジェンダー問題もうまく採り入れつつ

ちょっと本線とは逸れた話が多くなってしまいましたが。
この映画の主人公の描写(と演技)ですごくいいなと思ったのが、もう普通に接してたら大半は「こいつ狂ってるんじゃないの?」って思うようなかなりスレスレの人物なんですよね。
そりゃあそうでしょう、ド素人が「ここに骨があると思うんです!」って言ったところで専門家が聞く耳を持つわけがないし。
おまけに彼女がリチャード3世に入れ込む原因の一つでもあるんですが、彼女は持病持ちでそれ故に評価されていない部分があるんですよね。リチャード3世も身体障害があるために性格も歪んだと言われていたらしくて。
これはそっくりそのままフィリッパが評価されていない境遇と紐付けられていて、同時に女性であることもやっぱりどこか一段下に見られて相手にされにくい環境を作り出しているという。
途中、とあるシーンで別の女性から「あまり感情を表に出さない方がいい」とアドバイスを受けるシーンがあるんですが、これがものすごく女性に対する世間の目線を雄弁に語っていて、そこが現在のジェンダー問題とも通底する面があって非常に上手な盛り込み方だなと思いました。
そういった諸々のハンデを乗り越えて“偉業”へ向かっていく彼女の姿に勇気付けられる人も多いのではないでしょうか。

そんなわけで良い映画なのでお暇なときはぜひ、ってやつですよ。
特に女性はいろいろ共感もできるだろうし共感できるからこそ苛立つところもありそうで、そこも込みで評価したくなる映画ではないかなと思います。

このシーンがイイ!

上記のアドバイスシーンもセリフにハッとしてすごく良かったシーンですが、あとはベタですけど“匿名の寄付”のシーンはもう一気にブワッと来ちゃいましたね…いい話すぎる。

ココが○

日本人からするとテーマは縁遠いので地味に感じられますが、等身大の主人公が頑張る姿は誰でも共感ができる内容だしそこがいいなと。
あとは単純に「歴史を紐解く」のって良いですよね。個人の好みもあるとは思いますが。当たり前だけどまだ知られていないことってあるんだな、って。

ココが×

テーマに興味を持てるか否かでそれなりに集中力は変わりそうなので、そこだけ注意でしょうか。
リチャード3世その人への興味は(大半の日本人は)無いと思うので、そこではなく「歴史の真実を探す一般人」に興味が持てるか否か、で判断するといいかもしれません。

MVA

スティーヴ・クーガンも良かったんですがやっぱりこの人。

サリー・ホーキンス(フィリッパ・ラングレー役)

主人公の歴女。
行動力あるのがすごいなと思いつつ、一歩間違えばキ●ガイなので非常にデンジャラスな生き様ですがその行動力がない人間からすると羨ましくもあり、またそんな人物をしっかり演じたさすがの演技力で文句なし。
ちょっと痩せすぎじゃないかな〜と心配になりますが、まあそれはそれとして。
サリー・ホーキンスの出ている映画はやっぱり当たりが多い気がします。(ゴジラKoMのことはもう記憶から消し去ってるよ)

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