映画レビュー1486 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
当然めちゃくちゃ楽しみにしておりました。言わずと知れたミッション:インポッシブルシリーズ最新作。
1週間先行上映もやっておりましたがそれも終わった公開初日にレイトショーで行ってきました。鼻息の粗さがおわかりになるでしょう。
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
クリストファー・マッカリー
エリック・ジェンドレセン
『スパイ大作戦』
ブルース・ゲラー
トム・クルーズ
ヘイリー・アトウェル
ヴィング・レイムス
サイモン・ペッグ
イーサイ・モラレス
ポム・クレメンティエフ
グレッグ・ターザン・デイヴィス
ヘンリー・ツェニー
シェー・ウィガム
アンジェラ・バセット
ハンナ・ワディンガム
トラメル・ティルマン
2025年5月17日 各国
169分
アメリカ
劇場(IMAXレーザー2D)

集大成が邪魔をする乗り切れない幕引き。
- 2部作後編かつシリーズ集大成となる最終作(?)
- 前作の結末から少し時間が経って潜伏していたイーサンがまた動き始める
- 過去一「このシーンがやりたかったんだよね」が強い作りでストーリーは二の次
- 散々過去を引っ張り出してくる割に消化不良もあり
あらすじ
大前提として、観ている最中はそりゃあ興奮してたし3時間近い上映時間も気にならないぐらい夢中になったしで面白かったのは面白かったんですが、このシリーズ(の4作目以降)としては単体映画として観たときに一番出来が良くなかったように感じましたね…。ハードル上げすぎたのかも。
とは言え「ハードル上げすぎたのが悪い」と思いつつも、常にそのハードルも超えてくるシリーズだと思うのでやっぱりあまり出来が良くないんだと思います。
(例によって2部作後編のため、前作のネタバレが含まれるのでご注意ください)
前作から数か月、世界は“それ”(戸田奈津子式にくどいほど“それ”と出てくるんですが「エンティティ」で良くね?)によって核保有国のシステムが危機にさらされており、第三次世界大戦の可能性も高まっている現在。
我らがイーサン・ハント(トム・クルーズ)は行方をくらましている…んですがなぜか彼の元に届いた例の司令のVHS(アナログじゃないとエンティティに知られちゃうからね)ではなんとアメリカ合衆国大統領エリカ・スローン(アンジェラ・バセット)直々に「君に頼るしか無い」的なことを言われますよと。(ちなみにエリカ・スローンは「フォールアウト」でCIA長官として登場しています。ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)の上司で覚えている人も多いのではないでしょうか)
動き出したイーサンは例によってベンジー(サイモン・ペッグ)、ルーサー(ヴィング・レイムス)と合流、なぜか知らない間に急激に体調が悪化していたルーサーが生み出したエンティティを無効化できる“毒薬”デバイスを手にしますが、しかしそのためには前作冒頭で沈んだロシアの潜水艦セヴァストポリの内部に侵入し、ソースコードを手に入れる必要があります。
具体的な沈没場所もわからないため、まずはそこから…ってな具合ですがこれまた例によって前作でイーサンに“してやられた”ガブリエル(イーサイ・モラレス)の思惑も絡んで来まして…あとはご覧くださいませ。
いろいろご不満表明
一応おさらい。
今作は「ミッション:インポッシブル」シリーズ8作目となりまして、順に
- ミッション:インポッシブル
- ミッション:インポッシブル2
- M:i:III
- ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
- ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
- ミッション:インポッシブル/フォールアウト
- ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
と来て今作、と。1作目は1996年の映画なので約30年ということになります。すごい。
タイトルに「ファイナル」と入っていることからも、またトム・クルーズの年齢的な面からもおそらく今作がミッション:インポッシブルシリーズ最終作だろうと言われていますが、明確に「これでおしまい」とは言っていないようなのでまだそうと決まってはいないようです。監督のフークワが「もうやらないよ」と言っておきながらさらに2作作ることが決まったイコライザーシリーズとはエラい違いです。(嬉しいけど)
しかしそれでもやっぱり内容的にはかなり集大成、総決算感が強く打ち出されておりまして、かつてないレベルで過去作の映像がモリモリ出てきます。
例えば公開前から話題になっていたので書いちゃっていいと思いますが、一応サプライズ人選である「ミッション:インポッシブル」に登場したCIAアナリスト、ウィリアム・ダンローさんも登場シーンで「ここで出てくるんだ〜」と思ったのも束の間、しっかり過去の登場シーンのおさらいもしてくれるという親切仕様。
しかもその時だけならまだしも、その前段階でも例のシーン(イーサンが潜入して床に落ちそうになる有名なシーン)を振り返ってくれるので「さっき見たしもうええやろ」と思うことウケアイです。
そんな感じで過去作の映像をどんどん盛り込んでくるので非常に丁寧…と言えば聞こえはいいんですが、正直シリーズファンはそんなのわかってるよって話なので若干「馬鹿でもわかるように丁寧にアピールすることで観ている方が馬鹿にされた気持ちになる」作りになっているように思え、もうちょっと客を信用してほしいなと寂しい気持ちに。
これがまだ内容の水増しであればわかる(よくはないけど)面もありますが、なにせ上映時間も3時間近いのでここまでバカ丁寧に過去をアピって来るんだったらその分削ったほうがテンポもいいでしょと素人考えで思うわけです。
観る限り過去作の映像は一瞬だったとしても全作品出てきました。ご丁寧に「イーサン・ハントとはこういう男だ」的にご紹介してくれるんですよ。
でもそんなことは当然こっちは知ってるし、その上で「こんなすごいやつになら任せられる」みたいなファンのドヤ顔を誘うならまだしもその説得的な使い方も効果的に描かれていないし、本当に「こういうシーン、あったよね」と総集編として見せてくれているだけという内容なのでまったく意味が感じられませんでした。正直ファンサービスを履き違えていると思います。
まあそれは細かい話なので良いとして、今作の一番の見せ場と言えるのは水中シーンと空中シーンの2つ。
これは確かにすごいんですが、正直どっちも長い。かなり長い。
水中の方はまだ長くても理解できるシチュエーションだったのでいいんですが、まー空中シーンの方は本当に無駄に長かった。今作はトム・クルーズの顔芸を見せたかったのかなと思うぐらいに長い。(あの顔を存分に見せてくれるトム・クルーズのサービス精神はさすがと言いたいところだけど)
こっちはもう何をするか、何をしたいのかがわかってるんだからもうちょっとさっくり済ませて逆に「これだけのためにここまでして贅沢だな」と思わせてくれるぐらいで良かったと思うんですよね。それこそ「ローグ・ネイション」のオープニングで見せた飛行機しがみつきシーンのような、「すごいけど本筋関係ないしすぐ終わった」ぐらいでいいと思うんですよ。「すごいだろ」シーンって。
これもまた「トップガン」シリーズファンへのファンサなのかもしれませんが、ドッグファイト的なシーンも長いなと思ってたらそこからさらにまた長い空中シーンが続くので、さすがに「いやすごいのはわかったよ…」と言いたくなるテンポの悪さを感じました。
それでもなんだかんだ面白いのがこのシリーズのすごいところなんですが、今作はちょっとストーリー的にもあまり芯が通っているようには思えない内容だった気がして、そこも結構ご不満表明です。早い話がストーリー自体にあまり魅力がなかった。
例えば前作から登場の悪役、ガブリエル。
彼は前作でエンティティの手先として立ち回る良い悪役だったと思いますが、その前作でイーサンにしてやられてしまったことでエンティティから見限られた…という状況のため、ポジションがすごい中途半端で「こいつなんなの」感がすごかった。なんならもういなくても話が成立するレベルなんだけど、ミッションを困難にするためだけに出てくるお邪魔キャラ的な感じで「こいつなんなの」って感じ。(2回目)
性格もうっすら変わっちゃってるし…。(狂っちゃった説があるようでそれはそれでありだとは思いますが)
ちょっとメタ的な視点になってしまいますが、早い話ガブリエルが行く先々でイーサンの邪魔をするのは「パリス(ポム・クレメンティエフ)をイーサンとともに行動させるため」でしかないと思うんですよね。パリスのモチベーション要員。
ガブリエルがいないとパリスがイーサンに協力する意味が無くなっちゃうので、仕方なくガブリエルに悪役ムーブさせる感じで。そこがどうにも微妙。そう見えちゃってること自体が。
でも一応メイン悪役ではあるから結構でかいこともしでかしてくれる(一応伏せます)から余計に苛つくという。
もちろん悪役なので苛つかせてくれるのはむしろ良いことでもあるんですが、その割に…というのもあってまあいろいろ不満の残るキャラクターでした。
もう一人、キトリッジもすごい微妙でいなくていいポジションだった気がします。
前作ほどの裏回し感もないし、こちらはブリッグスを動かすためにいるだけ、って感じ。わざわざ1から復帰させたんだからもうちょっとうまく使えよと思いました。正直。
あとこれは言ってもしょうがないと思いつつ、不満がある映画には言いたくなってしまう問題として「いくらなんでも死んでるだろ」みたいなシーンも多い。
いろいろ現実離れしすぎてて。
それでも面白いのがこのシリーズだっただけに、ベクトルが「不満」の方に向くとこうも気になるものなのか、と勉強になったぐらい。
とあるシーンはひどすぎて笑っちゃったんですが、まあそれはそれとしてこのシリーズの醍醐味でもある…ような気もするし、そこについては「不満だった」けど受け入れる、ぐらいの感覚ですが、一応書いておきます。
取捨選択、大事では
ちょっと文句が多くなってしまいましたが、それだけ期待していたということでお許しください。
最初にも書きましたが、観ている最中は興奮したし面白かったので「金返せ」という話ではないです。まったく。十分満足しました。
ただ、このシリーズの集大成がこれなのかい…? という意味でいろいろ不満を感じてしまったのは事実なので、どうしてもその感情がホットなうちは文句が多く出ちゃうよね、という感じ。
シリーズで最も危機が極まった状態だったこともあって、笑いの部分が控え目だったのもすごく不満でした。仕方がないとは言え、もうちょっと軽やかなシーンが欲しかった…。
涙を誘うようなシーンも結構ありましたが、僕が一番泣きそうになったのは「M:i:III」で悪役だったフィリップ・シーモア・ホフマンがちらっと出てきたシーンでしたよ。実際。「FSH…もったいねぇ…」って。いまだにもったいないと思ってますからね。(亡くなってもう10年以上経っていることに驚き)
なんならその次は「ゴースト・プロトコル」でIMF長官だったトム・ウィルキンソンが出てきたシーンですよ。彼も亡くなっちゃいましたからね…。
それだけ歴史がある映画なんだなと思いつつも、これまでいいものを作り続けてきたのに最後の最後で少しレベルダウンしちゃったのが本当に残念です。
無理矢理にでも前作と合わせて1本にまとめたほうがまだ良かった気がする。
まあ、監督にせよトム・クルーズにせよ「これやりたいんだよね」が多すぎてまとめきれなかったってことなんでしょう。
これも美味い、これ入れても美味いっていろいろ鍋に入れてったら鍋が溢れちゃった、みたいな映画だと思います。本当にもったいない。
あとはもうトム・クルーズは歳も歳だから制作側に回るなりして、スピンオフでも作ってちょっとこの消化不良感をフォローしてほしいですね。
…ないだろうけど。
このシーンがイイ!
長かったものの、潜水艦のシーンは良かったと思います。
時間だったり向きが変化していく状況だったり、緊張感たっぷりでした。
ココが○
あとから振り返れば話に納得できないところが多いなと思っても、その最中はきっちり騙される勢いがあるのはさすが。細かいことを考える余裕も与えず引っ張り続ける力強さは(前のほうがあったと思うけど)健在です。
ココが×
いろいろあーだこーだ書きましたが、その辺丸々。
結局「これやりたい」を盛り込みすぎたが故に拾うべきものを拾えない雑さが目立ってしまった、ということなのかも。
MVA
うーん…不満が多かったために若干反則な気もしつつこの人かな。
ロルフ・サクソン(ウィリアム・ダンロー役)
約30年ぶりに登場の元CIAアナリスト。
詳しいことは書きませんが、ネタ的にちょっと出てくるだけなのかと思いきや意外なほど活躍シーンがあってとても良かったです。
次点でパリス役のポムちゃんかなと思いますが彼女の存在自体が結構不自然さがあったので選外。
みんな大好きベンジーは相変わらずとてもいい役どころだったと思いますが、今までのコメディリリーフ感はほぼなかったのでそこもすごく寂しい。
なお余談ですがサイモン・ペッグとポムちゃんは撮影を通して結構仲良くなったそうで、その辺が劇中にも反映されていた…のかどうかは不明ですが終盤辺りは結構いいコンビになってましたね。
余談ですがメンバーが来日したときのイベント(ジャパンプレミア)をYouTubeでライブ中継していたのでリアルタイムで観ていたんですが、サイモン・ペグが激渋でびっくりしましたね。全然ベンジー感がない。
やっぱり役者はかっこいいんだな〜と妙に感動しました。


