映画レビュー0575 『タワーリング・インフェルノ』

久々の再鑑賞もの。とても面白かった記憶がありますが、さて…。

タワーリング・インフェルノ

The Towering Inferno
監督
ジョン・ギラーミン
脚本
原作
『ザ・タワー』
リチャード・マーティン・スターン
『ザ・グラス・インフェルノ
トーマス・N・スコーシア
フランク・M・ロビンソン
音楽
主題歌
『We May Never Love Like This Again』
モーリン・マクガヴァン
公開
1974年12月14日 アメリカ
上映時間
165分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

タワーリング・インフェルノ

地上138階、世界最大の超高層ビル落成式の日。ビルの設計者であるダグは、オーナーであるダンカンの義理の息子で、ビル建設の責任者であるロジャーが電気系統に自分の指定よりも安い部品を使用したことを知り、彼を責めるが、「規定の範囲内で問題はない」と突っぱねられる。ところが、その電気系統が原因で物置が発火、そのことを知らずに落成式のパーティにゲストたちが集まり始め…。

今でもいろいろリアルなパニック映画の金字塔。

9.5

僕が以前この映画を観た時、世間では耐震偽装事件、いわゆる「姉歯事件」で大騒ぎの頃だったんですよね。

もはや知らない人も多いかもしれません、ヅラ丸出しのオッサンが主役のこの事件、原因にはコスト削減の圧力が背後にあったと言われていて「うわ、まんまこの映画と一緒じゃん」ということで当時すでに30年以上前の映画でしたが、全然古くなっていないリアリティに震えた記憶があります。

そして今も少し前に話題になった横浜のマンションを例に出すまでもなく、同様の問題がたまに噴出するのを見る辺り、やはりこの映画はいまだに古くなっていない、永遠の教訓を備えた名作と言っていいでしょう。結局はヒューマンエラーが一番の問題だぞ、と。

僕が映画好きになったのは、同じく映画が好きな母親の影響が多分にあるわけですが、彼女が一番好きだった俳優がスティーブ・マックイーンで、僕が初めて彼を観たのがこの映画でした。同じくポール・ニューマンもこの映画で初めて観まして。

当時は全然昔の役者さんも知らなかったので、どっちがマックイーンでどっちがニューマンなのかもわからないレベルだった気がしますが、今こうして久々に観ると、他にフェイ・ダナウェイとウィリアム・ホールデンが出ていることも知り、「おお、ネットワークコンビじゃないか熱いぜ」なんて盛り上がることもあったり。「ネットワーク」も名作なのでぜひ観て頂きたいんですがそれはひとまず置いといて。

他にも当時かなり有名な役者さんたちが多数出ていて、まさに豪華キャストの娯楽大作として当時は相当な盛り上がりがあったんじゃないかと推測します。

その中でも、やはりスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンという二大スターの共演は今でも語り草になっているほどで、特にオープニングのクレジットで「どっちを上にするのか」悩んだ挙句に、順番としてはマックイーンが先、でもその一段上にニューマンの名前を置いて対等を演出した、という苦肉の策は有名です。

他にも、マックイーンがニューマンと同じ量のセリフを要求した、という話があったり、いかにこの映画が偉業だったのかと同時にえらく気を遣うものだったのかが忍ばれ、その辺りの場外乱闘込みでとても面白い、歴史に残る映画であると思います。

さすがにここまでの“何か”は無かったと思いますが、自分たちの年代に置き換えると、やはりアル・パチーノロバート・デ・ニーロの共演が話題になった「ヒート」に近い感じでしょうか。内容の好き嫌いは置いといて「この二人が共演するのか!!」という高揚感はこれに似たものがあったんじゃないかと思います。

さて、事情説明が長くなってしまいましたが、本題。

いわゆるコスト削減から来る手抜きのせいでわずかな火災が起き、そこからあれよあれよと火が広がって未曾有の大惨事につながる火災になるのか…というこの映画。

言わずと知れたパニック映画の金字塔ですが、実際パニックが原因でどうこうなることは多くなく、どちらかと言うとオールスターキャストらしい各人のドラマに力点を置いた、極限状態における人間ドラマが主体の映画になっています。

上映時間は3時間近い長い映画ですが、今回改めてじっくり観ていてもまったく長さを感じず、とにかく終始「どうなんねんどうなんねん」という興味が持続するとても良くできた映画でしょう。

当時は当然ながらCGなんてない時代ですが、迫力も申し分無く、今観てもまったく不満ありません。

ちなみに、僕はてっきり炎だけ合成なのかと思っていたんですが、最初に火が広がるシーンでは、ドアを開けて火が移った役者さんの消火がうまくいかず、スタッフが消火器で必死に消火にあたったという話を知り、まさかのリアル炎ということで驚きました。どこまでリアル炎を使っていたのかはわかりませんが、逆に言えばわからないということはイコールとても良く出来ているわけで、いまだに色褪せない魅力の理由はこの辺にもあるのかもしれません。

実は主役の一人であるスティーブ・マックイーンの登場はかなり遅く、開始40分以上経った後。消防隊の隊長の役なんですが、最初の消防署のシーンでも出てこず、なかなか引っ張るニクいやつです。この隊長が鎮火と人命救助に奔走し、そしてもう一人の主役であるポール・ニューマン演じる建築家が同じく人命救助と取り残された人たちを先導する役割を担うという、この二人を軸に個々のドラマが展開するという内容。

やはり極限状態なので、どの人も性格がしっかり表に出てきて「こういうやついるよな~」感もしっかりあり、その辺りもまた古さを感じないし、なにせ火事なだけに悠長に構えていられない以上、映画としてもテンポもいいので、古くてもまったく退屈さを感じないのがグッド。

未見の方にはぜひ観ていただきたいですね〜。

このシーンがイイ!

詳細は興を削ぐので書きませんが、後半、マックイーンが部下の消防士と音声無しで会話するシーン。あそこでセリフを入れずに動きだけで大体何を言っているのかを理解させる、というなかなか今でも観ないような演出がなされていたんですが、これがまたとても良かったです。

「ニューマンと同じ量のセリフを要求した」割にマックイーンのセリフはシンプルで語りすぎず、そこがまたかっこよさにつながっていた気がします。

ココが○

このレベルだともう全部素晴らしいんですが、中でも最大の功績は、やはり何十年後に観ても色褪せない、古くならないテーマをきっちり映画化した点でしょうか。

古い映画は面白かったとしても今とは感覚が違う面白さだったりすることも珍しくないと思いますが、この映画は(映像の作りを除いて)本当に、今公開されてもまったく遜色なくヒットしそうなレベルで、改めて出来の良さに舌を巻きました。だからこそリメイクの話があってもよさそうなんですが…今のところ聞いたこと無いですね。

まあ、同じくパニック映画の金字塔「ポセイドン・アドベンチャー」みたいに、ヘタにリメイクをやられると元の映画にも火が飛びかねないのでやらない方がいいのかもしれません。火事だけに。

ココが×

特にこれといっては無いんですが、ただ少しだけ気になったのが、最初の火災から燃え広がるのが妙に遅いんじゃないか、っていう…。ドア閉めてたらあんなものなのかな…。

MVA

さすがオールスターキャストだけあって、印象的な役者さんもたくさんいたんですが…この人に。

スティーブ・マックイーン(マイケル・オハラハン役)

正直かなりズルいというか、もうかっこよく作られすぎたキャラなので、誰が観ても良いと思うでしょう。

対するポール・ニューマンの方は、建築家という肩書もあり、やや線が細いというか、持っている価値観はかっこいいものの、男として憧れるようなレベルの役なり演技なりではなかったかな、と。まあ、でもズルいですよこのマックイーンの役は。

ただこういう無骨な感じのかっこよさを出せる人は、今でもほとんど浮かばないレベルにレアなので、改めてこの人の貴重さと、早くに亡くなってしまった無念さを思わずにはいられません。

もし今リメイクするなら…ダニエル・クレイグかなぁ。今の時代、最もマックイーンに近いイメージはこの人だと思うんですが…どうだろう。ただ少しスマートな感じがしちゃいますけどね。マックイーンはもーっと無骨なイメージ。

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