映画レビュー0667 『トゥルーマン・ショー』
またもやって参りました今さら初鑑賞シリーズ。今度こそ気楽な映画が観たいぞ、ということでチョイスしたわけですが…。
トゥルーマン・ショー
結構いろいろと怖かった。
「ジム・キャリー主演で人生を中継されている男の物語」ぐらいの情報は知っていたので、ジム・キャリーお得意の顔芸で魅せるコメディなんでしょと思って観ることにしたんですが、いやはやこれまた全然違いましたね。なんならちょっとホラーすら感じる内容でした。あり得ないでしょーと思いつつも、むしろ今のテクノロジーなら(倫理観を抜きにすれば)出来るんじゃないかと思わせる妙なリアリティもあったし、思った以上に深い映画でしたね…。
ジム・キャリー演じるトゥルーマンは、生まれた瞬間から24時間常に中継されている男なんですが、彼自身はそのことを知らず、また周りも普通に友達だったり奥さんだったりと思っていたのに…実は周りの人たちはみんな“キャスト”で、台本に則って「生活を演じて」いたというお話。そんな彼がある時に違和感を感じ、真実を知るための行動に出るわけですが…。
今回観るにあたって調べて初めて知ったんですが、この脚本を書いてるのってアンドリュー・ニコルなんですね。あの。「ガタカ」の。あとおまけで「TIME/タイム」とかの。
ある意味でファンタジーでもあるし、ある意味ではSFっぽいというか…すごく星新一の世界を感じました。表面上は明るくハッピーだし、見守る視聴者も応援しててちょっとハートフル感すらある話なんですが、でも実際のところはホラー的な怖さもあるし、闇が深い世界でね…。そういう見せ方は全然していないんですが、でも根っこにはホラー要素があったと思いますねぇ…。実はこれディストピアなんじゃないのか、みたいな。
展開がちょっと違えばとんでもない話になると思うんですよ。「そういう映画じゃない」から描いていないだけで、トゥルーマンの人格によってはものすごい怖い話になり得る環境じゃないですか。完全管理された世界だからこそ、一歩間違うととんでもないことになる危うさみたいなものが感じられて、考えれば考えるほど怖い面を持った話だと思います。全然そんな素振りは見せないんですけどね。
んで、まあそういう部分に深さがあって、提示された物語以上の広がりを感じる世界が面白いなと思って観ていました。もし主演がケヴィン・スペイシーだったらもうとんでもなくホラーでしたよきっと。トゥルーマン何するのか怖くて観てられない、みたいな。
ゲームで言うところのオープンワールドみたいな、いろいろと広がりが見える世界がすごいし怖いなと。
多分そういう受け取り方をする人ってあんまり多くはないのかもしれませんが、でももう「生まれた瞬間から24時間常に配信されている人生」っていう設定の時点で狂気じみた世界なので、単純に「たのしー! ずっと見守られてるフレンズなんだね!」みたいな今(2017年現在)流行りのノリで済ませられるほど甘い映画じゃないぞと思います。怖いですよホントにこの世界は。
表面上は割と無難にお決まりの流れで行く映画だとは思いますが、この唯一無二の設定がすごいし面白いので、今になってもまだまだ新しい舞台に見えるのがやるなーアンドリュー・ニコルと。この人の発想はやっぱりなかなか他にないので、もうちょっとがんばれやと思わないでも無いんですが。
全然事前に予想していた「ただのコメディ」じゃない、思いの外深い世界でなかなか妄想膨らむ面白さがありました。
このシーンがイイ!
これはもうココアのシーンでしょうねー。シュールで面白いんだけど背筋が寒くなる感じが最高。良いシーンでした。
ココが○
完全フィクションで片付けられない、ほんの少しだけリアリティを感じるギリギリの設定が良いですね。もちろんこの通りにボロが出ないとは思いませんが、ただやろうと思えばそこそこやれそうなギリギリ感が怖くて。
ココが×
とは言えあちこちでいくらなんでも無理あるだろうみたいな部分は見え隠れしてます。その辺はご愛嬌ということで見逃すのがマナーでしょう。
MVA
ハゲてないポール・ジアマッティを初めて観た気がします。
それはさておき、役者陣はそこまで光る人がいなかったというか…設定が強過ぎた気がしますが、選ぶなら…まあこの人かなー。
ジム・キャリー(トゥルーマン・バーバンク役)
途中ちょっとイッちゃってる感じがよりホラーでよかったですね。奥さんも怖いし夫婦揃って怖いんだもん。ある意味。