映画レビュー0675 『ウォー・マシーン: 戦争は話術だ!』

結構話題になっているのでご存知の方も多いと思いますこちらの映画。

Netflixオリジナルの「劇場公開しない新作映画」、主演&プロデューサーはブラッド・ピットというなんとも贅沢な映画です。こっちはバカみたいに「劇場公開すりゃいいのにね」と思うんですが、Netflix加入者を増やすためなんでね。劇場公開するわけ無いだろこの粗チン野郎が! と自分に突っ込むわけです。

というわけで先週土曜、公開翌日に早速観てみました。当たり前ですが新作料金とか無いのが嬉しいですね。当たり前だろこの(略)

ジャケ絵は多分ソフトが販売されると思うので、その頃に。

ウォー・マシーン: 戦争は話術だ!

War Machine
監督
デヴィッド・ミショッド
脚本
デヴィッド・ミショッド
原作
『The Operators』
マイケル・ヘイスティングス
音楽
ウォーレン・エリス
ニック・ケイヴ
公開
2017年5月26日 各国
上映時間
122分
製作国
アメリカ

ウォー・マシーン: 戦争は話術だ!

開戦から既に8年が経過、泥沼状態のアフガン戦争を終結させるべく、ホワイトハウスは新たにグレン・マクマーン大将を駐留軍司令官に任命する。ストイックで部下からも愛され、実績も十分なグレンは自信満々に“勝者”になるべく行動を続けるが、戦況は一向に良くならないのであった。

意外と無いタイプの戦争映画かも。

8.0

いやー、面白かった。普通に。普通に映画してた。当たり前だけど。

ブラピが言うには「意欲的な作品で、Netflixでなければ作れなかった」とのことで、まあネトフリへのリップサービスも多分に含まれているんでしょうが、ただ以前にも書いたように、映画評論家の町山さんが言う「中国でも受けそうな超大作か低予算映画の二極化が進んでいる」ハリウッドの現状からすれば、確かにこういうアメリカ中心でなおかつアメリカへの皮肉が込められた映画、というのはなかなか作られにくいのは確かなんでしょう。

言ってみれば「多国籍軍を率いる駐留軍司令官とその部下たちから見たアフガン戦争」でしかないというか、潔く他国の事情とかしがらみとかはほぼ綺麗サッパリ切り捨てて、主人公であるグレン大将個人にフォーカスした戦争映画という感じなので、他国からすればいろいろツッコミどころがある面はあると思います。良い人ぶってんじゃねぇ、みたいな。

ただ…僕がたまたま観てきていないだけかもしれませんが、大統領のような現地にいないお偉いさんは別として、現場のトップ、まさに戦争を当地で指揮する“大将”という役職の人を主人公に据えた戦争映画というのはあんまり観た記憶がないので、なんとなくのっけから「大物が出てきたな…!」みたいな、いきなりステーキ的な楽しさがあった気はしました。いきなりステーキ行ったこと無いんだけども。っていうか一番近くのいきなりステーキは火事やらかして閉店っていうね。

前フリが長くなりました。概要です。

解任された前任のアフガン戦争駐留軍司令官に代わり、ブラピ演じるグレン・マクマーン大将が新たに現地へ赴任。彼とその部下たちのご紹介から映画はスタートします。やや軽めのご紹介で、ブラックコメディっぽい雰囲気。ブラピもひどく作った演技でより一層コミカルさを増す感じです。

鑑賞前に見たレビューに「ブラピのモノマネ2時間、って感じが気になった」というご意見を見かけたんですが、そんなご意見も納得の作り込んだキャラクターで、走り方から話し方から表情から全部誇張が過ぎる印象。けど慣れるとそういう人に見える辺りがさすが、なんでしょうか。ちなみにモデルは「スタンリー・マクリスタル」というお方だそうですが、風貌的にそんなに似ている感じもしないので、おそらくモノマネと言うよりはこの映画のために作ったキャラクターなんでしょう。

もちろん、一つの表現として「モノマネ」と表現するのは間違っていないと思います。とにかく「いつものブラピ」だと思って観ると痛い目に遭います。メイクもあってか、だいぶお歳を召した感じもありました。

さて、そんなグレン大将が「アフガン戦争を終結させるべく」、着任早々意欲的に動き回りますが、お決まりのように…政治側の事情により、彼の考える作戦は棚上げを喰らいます。面白くない彼はちょっとした策を講じて政治側に対抗し、自分の思う解決策でアフガンに救済をもたらそうとがんばるのですが…。これ以上は観ていただいて。

戦争映画って言うともうドンパチから始まって、「死んでも倒れるんじゃねぇ!(by トム・サイズモア)」みたいな男臭い世界が当たり前な印象ですが、この映画はだいぶ人間臭い戦争を皮肉交じりに描いていて、序盤の「どっちが現地民から支持を受けるか、言わば武装集団との人気投票みたいなもの」という話は新鮮でした。

もう本当にそれこそ政治家のように街を回り、握手をしては「我々が必ずや平和をもたらし、学校を建設します!」という。陸軍大将ともなると、戦地から一番遠い場所でふんぞり返って「根性がなっとらん!!」みたいな印象しか無かったんですが、この映画の主人公・グレン大将はとにかく人心掌握が最重要と考えているようで、実際弾を受けるほどのことはないにせよ、最前線まで赴いて兵士たちを鼓舞したり、「行動するリーダー」としてとても魅力的な人物に見えます。理想のリーダー像とまでは言いませんが、人の上に立つ立場の人には彼から学ぶべきところも多そうです。

アフガン戦争自体はリアルの方ですでに結論が出ているので、彼の目指す“勝利”が実現しないのは明らかなんですが、結果がわかっていてもその経緯をたどる物語は単純に面白く、また人間臭いから感情移入もしやすい。

今までなんとなく「偉い大将」としか認識していなかった人及びその取り巻きたちがどういう人間で、どういう事情から政治と対峙しているのか、その辺がクリアになる面白さがありました。

タイトルの軽さもあってもっとコメディ寄りな映画なのかと思っていましたが、終盤いきなり緊迫度を増して「忘れちゃならないぜ戦争映画なんだぜ」と見せつける展開もあり、実はなかなか社会派な面も強いように感じました。オバマ(前)大統領も映像とそっくりさん(後ろ姿だけ)が出て来るし、国務長官は名前こそ出てこないものの明らかにヒラリー・クリントンだし、マイケル・フリンらしき食えない男も出てくるし。

現大統領がお騒がせな中、こうして「それはそれ、これはこれ」で前大統領とその閣僚たちを批判する色が見える映画を作る辺り、やっぱりなんだかんだ言ってアメリカは大したもんだな、と感心しますね。こんなこと日本でやったら品のない官邸が監督の風俗通いとか読●にリークして

おや、誰か来たようだ。

そんなわけでですね。

戦争映画ながらグロくもなく、軽く観やすい中でちょっとした皮肉を混ぜた社会派コメディと言った感じで、テンポもよく大変楽しませて頂きました。こういう映画好きだなー。

Netflixが作った、っていうのは映画ファンとしては功罪両面あるとは思いますが、現実として「普通の劇場公開映画」でこういうのが作れないという前提があるとすれば、歓迎すべき動きなんでしょう。今後も期待したいと思います。

ちなみに12月にはウィル・スミス主演の映画が公開になるらしいです。

ネタバレは戦争だ!

原作本を読んでいないだけにわかりませんが、この話どこまでが事実なんでしょうかね〜。やや大げさなブラピの演技から推測して脚色が多そうな気はしますが、ローリングストーン誌の件は実際にあったようなので、嘘ばっかり、というわけでも無さそうです。モデルの大将も民間人犠牲者の家まで直接謝罪に赴く、なんて実際にやったんでしょうか。さすがにそこまではやってないんじゃないかと思いますが…。

その辺もそうですが、終盤に向けて次第に彼の内面にフォーカスしていく展開はなかなか秀逸だったと思います。ブラピ自身も「観客が応援したくなる人物」にしないと、とインタビューで言ってましたが、まさに観ていて応援したくなる人物≒当時の政府に対する批判的な目線を育てる作りはうまかったような気がします。

おそらく今後もこの映画みたいに、ただ単純に「戦争は悲惨だ」という記号化した表現を避けて、うまく個人を通して「戦争に勝者なんていないんだ」というような価値観に着地する戦争映画が多くなっていくんでしょうね。戦争自体が昔ほど単純なものではなくなった、というのもあるんでしょう。

しかしエンディングのラッセル・クロウには驚いた…。前のめり感がめっちゃ似合ってたけども。

このシーンがイイ!

ティルダ・スウィントンが出て来る場面は、このグレンという人の真理を突いていて良いシーンでしたね。

あとその後の「男が白髪になる理由」のセリフはすごく胸につまされるものがあって良かったな〜。

ココが○

そのティルダ・スウィントンもそうですが、結構大物たちがチョイ役でちょろっと顔を出しているのも嬉しいポイント。カルザイ役のベン・キングズレーもちょっとしか出てこないんですが、後で調べてみたら本人にかなり似てて笑えます。

そして一番最後に出てきたクレジットなしのアノ人には一番驚いた。そこで使いますか。

ココが×

唯一描写される戦場の場面は終盤に向けて緊張感を高める役割はあったものの、結構唐突に訪れるいきなりピーク感がもったいない気はしました。もうちょっと丁寧にそこに至る過程が描かれていても良かったかもなぁ、と。一応前フリはあったんですけどね。

それとやっぱりちょっと邦題が軽いかなぁという気はします。ただ原題の「ウォーマシーン」も日本人としては映画のイメージとだいぶ離れた印象を受けるし、ある程度軽さを強調しつつ興味を抱かせるという意味では仕方のない邦題かな、とも思います。ただ「戦争は話術だ!」っていうほど口先だけのダメリーダー、って感じではないです。

あと一応念押しでもう一度書いておきますが、この映画、軽そうに見えて実際はかなり社会派に寄った映画だと思うので、「軽くて面白そう。ブラピだし」って感じで観ると感覚的に大コケする可能性があるのは覚えておきましょう。どちらかと言うとジャーナリズムとかが好きな人向け。

MVA

もうね、「オーシャンズ」シリーズ大好き人間からするとブラピの部下がトファー・グレイス、って言うだけで涙モンですよ。大きくなったね、二人とも…。(お父さんかよ的感傷)

MVA的には非常に悩ましい、良くも悪くも際立った人がいなかった映画だったんですが、でも結局はこの人でしょうか。

ブラッド・ピット(グレン・マクマーン大将役)

くどいようですが確かに「モノマネ感」すごいし、ちょっと作りすぎなんですよ。特に声の出し方なんて完全にブラピじゃないし、鼻につく人がいても全然おかしくないです。

ただ、やっぱり50過ぎようがブラピはブラピなので、「いつものブラピ」で演じていたら、ちょっとそれはそれでこの大将っぽくない感じはしたと思うんです。かっこよくなりすぎちゃって。だからブラピが演じるのであればこれが正解なんだろうな、と思います。

他の人が演じるなら別ですが、多分それだと(プロデューサー兼務もあって)作られていないんだろうし。トムクルさんとかね。意外と似合いそうな気がしましたが。あとヒュー・グラントね。(好きなだけ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA