映画レビュー0964 『ゾディアック』

はい今回もね、いつも通りネトフリ終了間際であり観たかったやつ、って話ですよ。

もう毎回これしか言ってないぐらいに「観たかった映画」って尽きないもんですね。なんだかんだね。ありがたい話ですよ。

ゾディアック

Zodiac
監督
脚本
原作

『Zodiac』『Zodiac Unmasked』
ロバート・グレイスミス

出演
音楽
公開

2007年3月2日 アメリカ

上映時間

158分(劇場公開版)
163分(ディレクターズカット版)

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

ゾディアック

驚異のテンポ感で長さを感じさせず、未解決事件ながら落とし所も満足。

8.5
実在の未解決事件「ゾディアック事件」を追う男たち
  • 実際にあった事件を追う人々の長い戦い
  • 長尺を感じさせないテンポの良さ
  • 未解決事件にありがちなウヤムヤ感も極力少なく
  • 名優たちの共演も見どころ

あらすじ

実際に起きた未解決連続殺人事件、ってだけでやっぱりヨダレもんじゃないですか。人は。人は誰しもそうじゃないですか。特にサスペンス系の映画が好きであれば。

この映画で描かれる「ゾディアック事件」は、いわゆる“劇場型犯罪”として全米でも特に有名な事件のようで、おまけに2019年現在も未解決のまま。これほど映画にうってつけのテーマもなかなか無いでしょう。観る前からしてもう「JFK」に匹敵する“優秀な素材”感がヒシヒシと感じられますねええ感じられますよこれは。

主人公は主に3人。

一人目がジェイク・ジレンホール演じるロバート・グレイスミス。彼は「サンフランシスコ・クロニクル」という新聞社で風刺画を描いている漫画家です。

物語開始時はまだ入社9か月だったかな? ちなみにこのロバートは映画の原作となった書籍を書いた人であり、劇中でも「本にする」と事件にのめり込んでいく様が描かれます。

そのロバートの同僚であり、同紙のエース記者として在籍しているのが二人目の主人公、ポール・エイヴリー。ロバート・ダウニーJrが演じます。

(いつもの感じの)ロバダウさんなのでやっぱりちょっとどこか人を食ったような雰囲気の人物で、最初はロバートのこともあまり相手にしていませんが、事件が深刻さを増すに連れ次第に関係性を築いていくよと。ロバート・ダウニーJrの同僚がロバートとか字面で見るとややこしい気がしますが気のせいです。

三人目は事件の担当刑事、デイブ・トースキー。こちらはマーク・ラファロが演じます。相棒とともに州をまたいだ捜査にもどかしさを感じつつ、事件を追っていきます。

ということで早い話がアイアンマンが記事を書き、ハルクが捜査し、ミステリオが風刺画を描くわけです。(MCU脳)

当然ながら「連続殺人事件」なので、その事件そのもの、つまり犯人と被害者の姿も描かれますが、犯人は最初に書いた通り未解決事件故に見えそうで見えないチラリズム。もどかしい。

警察の捜査が難航するせいもありますが、それ以上にこの事件は“ゾディアック”と名乗る犯人が新聞へ犯行声明を送りつける形で犯罪を犯していくため、より新聞社の存在感が大きく際立つお話になっていて、だからこその新聞記者サイドの描写も大きい、という作り。

最初の犯行から新聞社への犯行声明があり、そこからまた次の事件が起きるも警察は確証をつかめず、事件に関わる誰もが焦りと怒りを持って事件を追っていく様を、長いスパン(エンディングまで含めると劇中の時間でおおよそ20年弱)で描きます。

果たして「実在の未解決事件」ながら、犯人は明らかになるんでしょうか…ぜひご覧くださいませ。

長尺でもそう感じさせない作りがお上手

ちなみに上映時間は劇場公開版が158分、ディレクターズカット版がそれより5分長い163分だそうで、僕はネトフリで観たので…はっきりとはわかりませんがおそらく劇場公開版じゃーないのかなと思われます。

ってことで長いんですよ。ガイナー。もう2時間半超えてくると「うわ、ガイナーだな」って観るのを渋りたくなるのはきっと僕だけではないでしょう。感覚的には140分(2時間20分)辺りが精神的な壁だと思ってます。僕は。これ超えるとちょっと気合い入れないと観る気が起きないぜ、みたいな。

ただ今回は未解決事件をフィンチャーが撮った、ってことでとても観たかった映画だったのできっちり意を決して観たんですが、これが…さすがフィンチャーってやっぱりすごいんだなと改めて感じさせるテンポの良さ。

もう本当に無駄なシーンはカットして、会話も場面転換もサクサク食い気味に進む感じで。これかなり切り詰めて作ったんじゃないでしょうか。多分普通に作ってたら3時間どころじゃ終わらないんじゃないかってぐらいに中身が濃く見えましたね。ひたすらそれぞれのシーンのつなぎが早い。これは明確に感じました。

実は僕の中で最近「フィンチャーって言うほどじゃないんじゃないの」という疑念が生まれていたんですが、今回これを観て「いややっぱりすごい監督だわ」と脱帽、なんなら土下座と。ゲザドーして謝りたいぞと。

この速いカット回しで切り詰めてテンポ感を出し、長尺なのに長く感じさせない作りで中身がしっかり濃い、というのはやっぱりただならぬ力量だと改めて思い知らされました。すげぇ。さすがだわ。

おまけに…これは脚本の力量も大きいとは思いますが、「未解決事件を実在した人物によって描く」以上、どうしても最終的に消化不良感が漂うんじゃないか…という不安があったんですが、その辺もしっかりクリアしてちゃんと映画としてきっちり仕立て上げているのが素晴らしい。

もちろんこれは(この映画が現実に即した作りだったと仮定した場合)現実の展開が良かったからこそ「未解決事件ながらそれなりの場所に着地できた」面もあるんでしょう。おそらく。この辺ネタバレになるので詳しくは書けませんが。

この「未解決事件だけどそれなりに納得の行く終わり方」で現実にあった事件を映画として知ることができる満足感たるや相当なものですよ。こりゃたまらん。まさに僕の好きなジャンルめがけてドストレートを投げ込まれた感じで大変満足しました。

映画を観慣れた人向けかもしれない

言うまでもなく俳優陣もとても良くてですね。

事件への関わり方や時間経過によってメインとなる主人公が変わっていくのも良い作りだと思います。それぞれがそれぞれの存在感を持ち、また事件に対する理解を手助けする存在としても三者三様で価値がある。これまたお見事。

実在の人物を主人公にしつつもきっちり三人とも事件に対する貢献度を持っている、っていうのがね。すごく貴重な話ですね。この辺はさすがに脚色もだいぶ入っているんだろうと思いますが、それぞれ個性的な名優を配してきっちり見せ場も用意している巧みさはなかなか贅沢なもの。

そんなわけでキャスティング、物語ともに見応えある内容で非常に満足感が強い映画だと思います。でもネット上ではそんなに評価が高くなかったりして…マジかー。面白かったけどなぁ。

ただ一点気になるところとしては、上に書いた通り時間経過含めてとにかくテンポよくサクサク進むので、「今いつなのか」「あれからどれぐらい経ったのか」等がわかりづらく、そのテンポ故についていけない人もいるかもしれません。

そういう意味では映画慣れした人たち向けの作りだと思うし、結構ハードル高めな映画なのかもしれないですね。

最近話題になっていましたが、今の世の中、15分とスマホを放置できない人もいるそうなので…。でもそんなんじゃもう映画観なくてよくね!?

まあなんだかんだ言って僕は大変満足したので良かったですよ。「未解決事件を追う男たち」の字面から受ける期待をガッチリ受け止めてしっかり見せきってくれた印象です。

ジャケットの暗いイメージとは違い、終盤を除けば割と笑えるシーンも多く、緊張しっぱなしではない作りの巧みさも素晴らしい。よくできた映画だと思います。

未解決事件フェチには必見の映画と言っていいでしょう。

ネタバレック

実際の真犯人が誰なのかは当然わかりませんが、さすがに事件からかなり年月が経っていることもあって、この映画のように「被疑者死亡によって迷宮入り」というケースの可能性が高いんでしょうね。

それ故にいかようにでも作れちゃう…のも確かなんですが、実際にこの映画で犯人と目された彼は実在するんでしょうか。Wikipediaぐらいしか読んでないので詳しいところはわかりません。原作本、読みたい…!

最後、リーが働いているところにロバートが行って、「どんな目をしているのか」しっかり見るシーンがすごく印象的でした。あのフリもまた良かった。

なにせ未解決事件なだけに、どんなに怪しかろうと「こいつが犯人です」とは映画上であっても断定できないものの、あのシーンによって誰が犯人なのかを「語らずに断定する」イメージの作り方はすごいなぁと感心しきりでしたね…。少なくともロバートは確信したし、それが観客にとっての答えになるという。いやはやお見事です。

このシーンがイイ!

これはもうネタバレ直結なので書けないなー。

終盤近く、ロバートがじっと何かを見つめるシーン…とだけ書いておきましょう。

ココが○

とにかく切り詰め方の巧さ。

細かく字幕で「○時間後」とか「○か月後」とか入ってくるんですよね。ちょくちょく。それによって「直前の話が一旦終わり、次の話が進行している」印象を観客につけていってテンポが出てくるという作りがとにかくうまい。こんなに展開が早く感じる映画もなかなか珍しいです。

ココが×

そんな作りなので、当然向き不向きはあると思います。ついていけなくてもまた仕方がないぐらいに「ついて来られる人だけでいい」ぐらいに開き直りを感じもしました。

好きであればたまんないんですけどね。もっとじっくり重厚に見せて欲しい、って人がいてもおかしくはないと思います。

MVA

やっぱり三人のうち誰にするか、なんだと思うんですが…。今回はこの人かなぁ。

ジェイク・ジレンホール(ロバート・グレイスミス役)

風刺漫画家。

他の二人は割と普段見るような演技だったと思うんですが、ジェイクは珍しく(って言うとアレですが)普通の人で、善良な市民感がすごい役だったんですよね。それがもうイメージとまるで違って。

クセのある狂人みたいな役が多いし、良い人のフリして実は…みたいなのも多いので、「実はこいつがゾディアックなんじゃねぇのか」とか半分怯えながら観ていましたが最後まで普通の人で、その普通っぽさを感じさせる演技もまた上手いよなぁと感心させられた次第。相変わらずさすがです。

当然ながら「いつも通り」とは言え他の二人も素晴らしく、ロバダウさんはもうちょっと出番多くても良いんじゃないのと思いましたが…これアイアンマンの前年なんですね。当たり前だけどこの頃もきっちり売れてたんだなぁ。

マーク・ラファロは一番目立たないように見えて、それだけきっちり刑事を演じていたとも思います。ジェイクの「いつもとのギャップ」が無ければ彼が一番良かったかもしれない。この人本当にどの役でも説得力を持たせる良い役者さんだと思いますねぇ…。

ついこの前までコミコンで東京に来てて、「アメリカいろいろあるから日本に移住したい」ってリップサービスが過ぎる発言をしてましたが。また来て欲しいもんです。

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