映画レビュー1349 『ロング・トレイル!』
JAIHOより適当に良さげと思ったものをチョイスした適当な日です。
ロング・トレイル!
リック・カーブ
ビル・ホールダーマン
『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験
北米アパラチア自然歩道を行く』
ビル・ブライソン
2015年9月2日 アメリカ
102分
アメリカ
JAIHO(Fire TV Stick・TV)

悪くはないんだけど想像通りすぎて…。
- セミリタイア的爺さん作家が日常に飽いて「アパラチアン・トレイル」に挑戦を決意
- 「同行者必須」の条件で奥さんから許可、やってきた同行者はかつて喧嘩別れした親友
- どうしても同様な映画と比べてしまい、物足りなさとありきたり感が強い
- 一番重要と思われる場面もセット撮影でより一層残念
あらすじ
薄々予想はしていたんですが見事に「どこかで観た話」でしかなく、またこのパターン食らっちまった悲しみに、って感じですよもう。
紀行作家として有名なビル・ブライソン(ロバート・レッドフォード)がイギリスから故郷のアメリカに帰国、もういい歳なので半隠居状態で穏やかに過ごしておりましたが、ある日自宅近くにアメリカを代表する長距離自然歩道「アパラチアン・トレイル」のコースがあることを発見。
調べるうちに気持ちが抑えられなくなったビルは、妻のキャサリン(エマ・トンプソン)に「挑戦したい」と相談。
止めても聞かないことを悟ったキャサリンは「同行者をつけることが絶対条件」として認めますが、しかしなにせビルのフレンドとなると彼同様にみんないいお歳なので「さすがにちょっと…」と全拒否を食らいます。
そんな中、40年前に仲違いしたっきり音信不通だったかつての親友・スティーヴン(ニック・ノルティ)が「アパラチアン・トレイルの同行者を探してると聞いたんだが俺はどうか?」と連絡してきまして、何せ長く絡みのなかった“曰くつき”の間柄なだけに迷いもありましたが、他に手段はないということで彼と行くことに。
40年ぶりに再会したスティーヴンは普通に歩くことすらしんどそうで先が思いやられるところですが、それでも意を強く出発した2人のチャレンジは果たしてどのような結末に至るのでしょうか。
20年前に作ってほしかった
ロバート・レッドフォード演じる「ビル・ブライソン」さんは実在の人物で、この映画の原作となる紀行本『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』の作者だそうです。
が、ビル・ブライソンさんは演じるロバート・レッドフォードの15歳下、本に登場する主人公も40代のところこの映画では70代(ロバート・レッドフォードはおそらく撮影時ギリ79歳)と原作本とはだいぶ異なるようで、まあ結局大枠だけ頂いた完全フィクション映画と見て差し支えなさそうです。
同行するスティーヴンを演じるニック・ノルティはロバート・レッドフォードの5歳下なので、79歳と74歳による「アパラチアン・トレイル挑戦」という前代未聞の(無謀な)挑戦を描いています。
このアパラチアン・トレイル、Wikipediaによると全長約3500kmの自然歩道だそうで、さすがに引退後ヒマヒマで時間を持て余しているとは言え体力的にどう考えても無理でしょう、というお話なんですが、ただ踏破目的ではない参加者もいるようなので、本人も100%踏破できるなんて思っておらず「とりあえず行けるところまで行ってみたい、まだまだやれるところを確認したい」みたいな感覚のチャレンジでもおかしくはなさそうです。
しかしビル本人はともかく、やってきた同行者のスティーヴンが序盤から完全に足を引っ張っていて、こりゃ無理でしょ感が強く漂います。というか成功してしまったらそれ自体嘘くさくなってしまうのも必然なので、となると「40年間仲違いしていた親友」との関係修復が中心になるのでは…と考えるのもまた自然で、その流れで観ると…まあやっぱり「どっかで観た話だな」と感じられてしまうのが残念。
ただ自然の中で身体を動かしながらそれなりの期間寝食をともにすれば、ベタだのなんだのとかそういう判断基準は関係なく情が湧いて歩み寄っていくのもまた人間として自然なことなのもわかるし、ベタであることをもって「ダメだな」と言うのも酷だとは思います。創作としての良し悪し以前に、普通こうなるでしょみたいなロジックは理解できる。
ただ、その「自然な展開」として納得できるのはあくまでフィクションに現実を見るからであって、映画上一番重要と思われる、長く滞在したとある場所が完全にセットでの撮影だったのが本当に興醒めしちゃったんですよね。「現実と勘違い」させてくれない作り方がどうにもつらい。
もちろん確証はないんですが、見るからに現地での撮影と空気感が全然違うし、いかにもこぢんまりとした雰囲気が伝わってきちゃうんですよ。これは撮影・編集・演出面(そして予算)の問題も大きいと思います。むしろ演者はかわいそう。
しかしスタッフ側に立って考えれば、79と74のお爺ちゃん2人に山登らせて撮影まではさすがにハードルも危険度も高すぎるからセットを組むしか無い…というのも痛いほどよくわかります。なのでもう企画時点でダメなんじゃないの? というのが率直な感想。
ロバート・レッドフォードは製作にも名を連ねているので、もしかしたら彼が「こういう企画どうかね」とセット撮影はしないほうが良いところまであまり深く考えずに提案し、大物だけに断れないといろいろスタッフが充てがわれてなんとか形にしたのがこの映画、なのかもしれません。すべて勝手な想像です。
ただそう穿ってしまいたくなるぐらい「一番エモさを訴求する大事なところを疎かにした」映画に感じられ、なんだかなぁとガッカリ。
僕は今回「アパラチアン・トレイル」というのは初めて知ったんですが、やっぱりどうしてもその性質上同じような“巡礼もの映画”、具体的には「星の旅人たち」と比べてしまうんですよね。
調べたところ「星の旅人たち」で描かれる「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」のメジャーなルートは長くても900km程度らしいので、アパラチアン・トレイル踏破と比べると距離的にはだいぶ軽い(というかアパラチアン・トレイルが長すぎる)ようですが、しかし映画としてのレベルの高さ、シチュエーション(撮影)やシナリオという意味では残念ながら「ロング・トレイル!」が完敗だと思います。マジでロングなだけじゃん、っていう。正直ロバート・レッドフォードの思い出作りだったんじゃないのと疑いたくなるようなありきたりな映画でした。
これがもし相棒のスティーヴンを演じたのがポール・ニューマンだったら絶賛していたかもしれませんが…。もっともポール・ニューマンが亡くなって15年も経っているだけに単なる妄想の域を出ません。仮に彼がご存命で実現していたらポール・ニューマン90歳、ロバート・レッドフォード79歳。
…ってなことを考えると、せめてあと20年は早く企画してほしかったですね…。まだポール・ニューマンもご存命だったしね…。
いかにもなアメリカ映画
だいぶ脱線しましたが、まあ総じてそんな感じですよ。
舞台は悪くないものの結局よくあるパターンから抜け出せていない、良くも悪くもアメリカ映画、という感じ。もういっそ観客に対するビッグな裏切りで殺し合いでもしてくれた方がまだ楽しめたかもしれない。
この手の映画をあんまり観ていなければグッと来るかもしれませんが、ただそういう人にとっては逆にロバート・レッドフォードとニック・ノルティというネームバリューに感じるところもあまりないだろうし、ちょっとターゲットがブレちゃってるような気もする。
もう少し緻密に、情熱を持った作品にしてくれればまた違っただろうな、という印象です。
このシーンがイイ!
ちょい役ですがメアリー・スティーンバージェンの出てくるシーンがやっぱり良い。この手の映画における綺麗なお姉さん(みの呼称方式)を一手に引き受けてる感じ。「ラスト・ベガス」とか。
リアルタイムで観たBTTF3では微妙なヒロインだなぁと思ったのを覚えているんですが、年々存在感が増している感じがして素敵です。
ココが○
結構厳し目なレビューになりましたが、でもベースとしては「俺も歳を取ってきたしわかるわかる(涙)」みたいな感傷も少なくなく、おっさん爺さんには優しい映画なのがいい点かもしれません。
やっぱりなんだかんだ、自分もこういう長い巡礼的なものに挑戦してみたいなぁと常々思います。ただテントは嫌だから簡易でいいから1日ごとに宿泊所が整備されててほしい。(わがまま)
ココが×
改めて書きますが、「仲違いしていた爺さん2人の巡礼旅」という一文でもう大体わかるぐらいには内容が予想通りなのがやっぱり致命的。一つも意外性がなかった。
MVA
メアリー・スティーンバージェン…と言いたいところですが本当にちょっとしか出てこないので、こちらの方に。
エマ・トンプソン(キャサリン・ブライソン役)
主人公ビルの妻。
言うてエマ・トンプソンもそんなに出番は多くないんですが、ただやっぱりこの人もいいなぁと改めて思いました。なんというか心配と信頼の混在っぷりの表現がものすごくお上手。
ただもったいないぐらい出番も少なく脚本にも絡んでいないので、エマ・トンプソンを使うんだったらもうちょっと有効に使ってほしかったな…という気もしました。