映画レビュー0827 『大空港』

先日、バート・ランカスターが亡くなったというニュースを見まして、まだ僕は彼メインの映画を観たことがなかったので、追悼として録画していたこの映画を観ることでご冥福をお祈りしましょうという企画です。

大空港

Airport
監督
ジョージ・シートン
脚本
ジョージ・シートン
原作
『大空港』
アーサー・ヘイリー
出演
ジーン・セバーグ
ヴァン・ヘフリン
モーリン・ステイプルトン
ヘレン・ヘイズ
音楽
公開
1970年3月5日 アメリカ
上映時間
137分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

大空港

ある大雪の日、リンカーン国際空港に着陸した旅客機が脱輪、メインの滑走路が閉鎖されてしまう。その対応に追われる空港長のメルは義兄のパイロット・ヴァーノンといざこざが絶えず、また不仲の妻にも突き上げを食らいながら「長い一日」を乗り切ろうとしていた…。

関係なさそうな人・事件が時限爆弾のように空港長を蝕む…!

8.0
元祖オールスターパニック映画
  • ある日の空港に関わる様々なトラブルがラストに向けて収束していくサスペンスドラマ
  • いわゆるグランドホテル方式による近い場所でのいくつかの話が交錯する
  • 今でも十分楽しめる古くない人間ドラマが中心

どうも「パニック映画」って言うと、なんとなくワーキャー騒いで文字通りパニックになるイメージが強いんですが、一応ジャンルの定義としては「災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描く映画」(by Wikipedia)ということで、確かにこの映画ではワーキャー言ってないだけにちょっと「パニック映画だよ」って言うのも違う気がしたんですが、まあそういう感じの映画ですよということで。(わからないまとめ)

要はアレですよ。24みたいな感じですよ。空港におけるイレギュラーでトラブルてんこ盛りな一日を人間ドラマベースに送る物語、と言うような。空港長的には「人生で一番長い日だ」みたいな。ジャック的な。あれ言ってたのシーズン1だけだったような気もするけど気にしないで行きましょう。

ということで主人公は空港長のメル。追悼企画の主役、バート・ランカスターが演じます。もう彼のキャリアとしては後年に属する映画なので、ピークの頃のイメージとはだいぶ違うんだろうとは思いますが…しかしさすがにダンディ溢れるおっさんでした。

僕はこの取って付けたような空港長っていう職種があるのは知らなかったんですが、実際あるみたいですね。まあ結局はトラブル対応を中心とした雑務の総責任者と言った感じで、雇われ従業員長みたいなイメージでしょうか。上には理事がいて、クビにする権限もあるぞと。

物語の舞台となる一日はひどい大雪の日で、それ故着陸した旅客機が無様に脱輪、動けない状態になってしまいます。しかし他の滑走路は近隣住民に対する騒音の酷さから訴訟問題に発展する可能性があって使いたくない。だもんでさっさとこの飛行機をどかさないと…というのがまず最初のトラブル。

一方、この日リンカーン国際空港からフライトの予定があるヴァーノン機長。彼の奥さんはメルの姉、つまり彼はメルの義兄ということになるんですが、この二人は相当に仲が悪いようで常に嫌味の言い合い的様相を呈しています。この日も嫌味を言いつつフライトに向かうヴァーノン、美人のCAさんとイチャイチャ浮気して腹が立つことこの上ない御仁ですが、彼が乗るローマ行きの飛行機には“訳あり”の失業者が乗り込むことになってちょっと火種の予感。

その他にも密航(無銭乗車的な)を繰り返す婆さんが捕まったものの行方をくらませたりしてあちこちでトラブル発生、果たしてメルは空港トラブルもぐらたたきを無事クリアできるのか…! と言うお話でございます。

オールスターキャストによるグランドホテル方式のパニック映画ということで、あの名作「タワーリング・インフェルノ」辺りを想像して頂ければ大体同じような感じかなと思います。(ちなみに順番としてはこちらが先に作られたもので、この映画の成功によってこの後パニック映画が量産されたとのこと)

ただあっちは割と早めに火災という緊急事態が発生するので一気にアドレナリン全開的な内容ですが、こちらは若干緊急事態への前フリが長めで、「この人の話いる?」と思ってたら次第にそれらが一つのトラブルに収束していく…という作りになっているので、あっちと比べるとやや冗長かつ静かな面がある分、より人物描写に重きを置いているような雰囲気があります。

これはどっちが良いとか悪いとかではなく、比重の問題なので(さすがに傑作のあっちと比べるとやや劣りはしますが)こちらも十分楽しめる内容でした。「古い割に」という冠が必要ないレベルで面白かったです。

今の空港はさすがにもっといろいろ進化しているんだろうと思いますが、でもこれまた「タワーリング・インフェルノ」同様に問題の大元にあるのはあくまで「人間」であり、いくらテクノロジーが進化しようが変わらないところは変わらないんですよね。

なので一部未然に防げそうな問題はあるものの、あからさまに「今だったらこんなこと無いだろうな」みたいな部分もなく、今もってリアルなトラブルっぷりに飽きずに楽しめることウケアイです。

この映画は結構なヒットを記録したらしく、この後続編が3作作られたそうなんですが…機会があったら観てみたいですね。

最近は下火となったパニック映画ですが、個人的には結構好きなのでまたこういう映画出てこないかなーと少し期待しています。サメとかそういうベタなやつじゃなくてね。ヒューマンエラーのせいで人々が危機に陥る系で。

少しトラブルの毛色は違いますが、オールスターキャストのグランドホテル方式という意味では、比較的新しい映画として「コンテイジョン」が該当するかなと思います。ああいった映画が楽しめた人にはすんなり楽しめる、さすが元祖と言った映画でしょう。面白かったです。

大ネタバレ

今の時代に置き換えたら何が一番違うかなーと考えたときに思ったのは、もしかしたら主人公二人とも浮気してる(メルの方は直接的な描写は無いですが)というのが変えられるのかもしれない気がしましたね。この映画の二人の扱いが今からするとかなり生ぬるい、浮気容認感が強くて。多分これは(アメリカですら)もう少し家族の方を向いたストーリーになりそうな気がする。

同時に、なんとなくですが…今だったらこの二人が最終的にはお互いを認めあって不仲が解消される、みたいな方向に行きそうな気もするんですが、これに関してはこの映画のように特に改善されないドライな形で終わる方が好きですね。あの二人の関係性が変わらないところが良いなと。綺麗すぎなくて。

さすがに密航とか爆弾持ち込みなんかは今はもっと厳しくチェックされると思うので、となるとこの映画の結構な部分が欠けちゃう気もするんですが、ただ爆弾持ち込み描写はいくらでも巧妙にできるだろうし、ストーリーは変えようがあると思うので今でもやっぱりうまく作れそうなリアリティが良いですね。っていうかリメイクしてくれても良いぐらい良く出来ている映画だと思います。

最後にヴァーノンの奥さんが浮気を知って落胆するシーンがなかなか残酷で趣深いものがあって良かった。あの辺も綺麗に終わろうとしすぎないのが良いですね。現実はこうなんだぞ、っていう。

このシーンがイイ!

古い映画では意外とよく見かける画面分割のシーンが、緊張感を高めるのになかなか良い使われ方をしていたと思います。特に管制塔とのやり取りはいかにも航空モノらしい雰囲気があって好きですね。

ココが○

いろんな要素が時限爆弾のように一つに向かっていく作りは見事だと思います。派手さは無いかもしれませんが、しっかり作られた良い脚本でしょう。

ココが×

当然ながら序盤は前フリで、しかもそれがどう後につながるのかがよくわからないために、どうしても少し冗長な感じは出てくる気はしました。上に書いたように、「タワーリング・インフェルノ」みたいに「火事だーっ!」なら一気にピンチで盛り上がるんですが、何が一番のトラブルになるかが割と後の方までわからない(これは良い面でもあるんですが)ので、その分序盤は少し盛り上がりに欠けます。

MVA

追悼対象だったバート・ランカスターは卒なく良い演技だったと思いますが、そこまで惹かれるような良さも無かったかなぁ。

僕はやっぱりジョージ・ケネディの存在感がすごく好きなんですが、でもこの映画はきっとこの人のものなんだろうと思います。

ヘレン・ヘイズ(エイダ・クォンセット役)

密航婆さん。

いかにも昔の映画に出てきそうな憎めない愛嬌たっぷりの婆さんで、品があるけど犯罪者っていう。

この人いるかなーと思っていたんですが、割とコメディリリーフ的にも大切なんですよね。なるほどそういう絡みになっていくのか、と良い使われ方だったと思います。

それと生涯独身美人でおなじみのジャクリーン・ビセットが相変わらずかわいくて、CAさんという役どころにぴったりで満足。

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