映画レビュー0408『キャプテン・フィリップス』

「広告が一番上に出てきたら負けだと思っている(※移転前のお話です)」を合言葉に1ヶ月に一回は更新するぞ、と低い志でお送りしておりますなんプロですが、FF14も少し落ち着いてきた(やる気が失せてきた)のでまた少しずつ映画を観る機会も増やしたいと思っております。

ちなみに14、とりあえず現状実装されているメインストーリーはクリアしましたが、ゲーム自体のデキは別として、ストーリーに関しては11の方が数百倍良かったですね。深いし。今このご時世にこんな子供だましなやつ(あえて王道、なんでしょうが)を作るのかーと結構ショックでした。

さて、本題。東京国際映画祭だったか、確かオープニングで上映されて結構な評判を呼んだとかで、気になったので劇場まで行って参りました。

キャプテン・フィリップス

Captain Phillips
監督
脚本
原作
『キャプテンの責務』
リチャード・フィリップス
ステファン・タルティ
出演
バーカッド・アブディラマン
ファイサル・アメッド
デヴィッド・ウォーショフスキー
音楽
公開
2013年10月11日 アメリカ
上映時間
134分
製作国
アメリカ

紳士協定

ボスから金を稼げとせっつかれ、海賊行為に手を染めるソマリアの若者たち。彼らはアメリカ人のリチャード・フィリップスが船長を務めるコンテナ船に狙いを定める。

複雑な世界が後ろに見える、壮絶な物語。

9.0

まず最初にお断りしておきますが、一応実話ベースとは言えアレコレ展開を書いてしまうと興を削ぐ面があると思うので、全体的にふわっとしたレビューになっちゃうかもしれませんがその辺はご容赦を。

トム・ハンクス演じる今作の主人公「リチャード・フィリップス」さんは実在する船長さんで、彼が実際に巻き込まれた2009年の海賊事件を記した回想録を元に作られた、実話ベースの映画になっています。なので、ぶっちゃけ彼は助かります。生きてないと回想録書けないからね。ということでこれまたそういう前提でウダウダ書きますが。

さて、最初「ポール・グリーングラス監督」と聞いて、「あーまたあのグラグラカメラかー。わざとらしくて嫌なんだよなー」と思い、実際今回も強烈ではあったんですが、今回の内容からすればこの緊張感の出し方は非常にマッチしていて、同じ彼の映画「ユナイテッド93」に近い、全編通して緊張感の絶えない、まー疲れる映画ではありましたがひじょーーーーーに重く、また(表現的にやや違和感がありますが)面白い映画でしたね。

今のご時世当たり前っちゃー当たり前ですが、一方的に「被害を受けたアメリカ人」という視点だけで作られた映画ではなく、ソマリア人海賊側の舞台背景も(軽くではありますが)触れられていて、なぜ彼らが海賊行為に手を染めるのか、彼らはどういう人たちなのかという点も描かれ、単なる悪役ではない、人間像に焦点を合わせたストーリーのおかげでグッと深みが増しています。

展開自体も、当然ですが襲われる→追い払う→おしまい、みたいな単純なものではなく、状況が二転三転していく中でどうなるのか予想もつかないハラハラ感は、逆に実話ベースと思えないほどドラマ性が高く、なんとも壮絶な話だな、と…。まず観終わって感じたこと、それが「壮絶」でしたね。そういう映画でした。

いろいろと精神的に締め付けられる、自分が海賊と対峙しているかのような緊張感溢れる演出は、ポール・グリーングラス監督の功績と言って良いでしょう。素晴らしい作りでした。

しかし今現在の海運業の基本やら国際法がどうなっているのかとかは当然知らないのでいい加減なことしか言えないんですが、まず一番最初の大前提として、バカでかいコンテナ船に「銃一丁すら置いていない」という丸腰っぷりにかなり驚きましたね。まるごし刑事かよ、と。(未読)

ましてやソマリアと言えば僕のような一般人ですら海賊で有名なことは知っているわけで、そういう海域を通る船に何一つ防御策を講じていない、というのはどうなんだろう、と。銃はもちろん、なんなら警備兵の一人や二人いてもいいのになと思うんですけどね。

そういうことを考えながら観ていたんですが、僕としては「海運業者の怠慢」と言うよりは、「世界中から極力安い価格で物を集める」昨今のコスト第一主義的な経済のしわ寄せがこういうところに来ているのかな、と思い、海賊行為の背景…簡単にくくってしまえば「貧困問題」ですが、そこにつながっている気がして、単純に「アメリカ万歳、海賊たちを懲らしめろ!」なんて話ではなく、結局はアメリカを中心とした日本含む先進国の行動が巡り巡って海賊を生んでいる…というような構造的な問題が垣間見えて、いろいろと考えさせられもしました。

今のご時世「こっちが白、あっちが黒」なんて簡単に二元論で片付けられないものだらけですが、そういう時代的な複雑さをじわじわと物語に組み込んでいて、最後の最後も(詳しくは書けませんが)人によっては「ビバアメリカー!」なんでしょうが、僕は(というか普通の大人ならみんなそうでしょう)まったくそういう気持ちで見られなくて、安堵とともにやるせなさも感じたし、誰が悪いだの誰が良いだの偉いだの言えない、なんとも複雑な気持ちにさせられました。

そしておそらく、その“複雑”な、あらゆるものが入り混じった感情を表面化させたのが、最後のトム・ハンクスの演技だったのかな、と。

ラストのトム・ハンクス、強烈でした。すごかった。本当にすごい。「セブン」のラスト10分のブラピと並ぶぐらいの衝撃で、実は僕はあんまりトム・ハンクスって好きではなかったんですが、もはやぐうの音も出ないほどの演技を見せつけられましたね。

演技力もそうですが、その観ている自分の複雑な心境とのシンクロっぷりがものすごくて、「良かったね、という話ではない」という強烈なメッセージを発していたように思います。そのメッセージの送り先は、果たして観客なのか、それとも国を動かす人たちなのか…。それは僕のようなスケベ野郎には知る由もありません。ミニスカニーハイが好きです。

が、おそらくは「アメリカ人が被害を受けた海賊行為をテーマに、自己批判を含めた物語を作る」という観点で作ったのであれば、これほど巧妙に、政治的メッセージと娯楽性を盛り込んだ社会派映画というのはないな、と思います。

単純に映画としては緊張感たっぷりで面白いし、実話としてもすごい話だし、世の中へのメッセージとしても巧妙だし、なんともすごい映画を作り上げたもんだな、と呆然とするような、圧倒される何かがありました。

単純に「海賊に出会った一人の船長の物語」なんて浅いものではありません。ぜひ観ていただきたいな、と!

オススメです。

このシーンがイイ!

額に銃の跡が付いているシーン、印象的で良いシーンだなと思いましたが、もうエンディングで吹っ飛びましたね。あのトム・ハンクスがすべて。

ココが○

挙げればたくさんありますが、おそらく一番大きなものは、「アメリカさんの勧善懲悪物語」ではない、という点でしょう。そう読み取らせようと作りつつも、そこに寄せすぎるとおそらく公開が難しくなる面もあるので、ギリギリでいわゆる普通の「アメリカのプロパガンダ」的な見せ方も残している、そのバランス感覚が素晴らしいです。

あとは劇伴が地味にいい! 煽りすぎず、でも緊張感は絶やさない、大仰すぎないバランスがこれまた◎。

ココが×

ほぼ文句なしですが、重箱の隅をつつくなら、もう少しだけソマリア海賊側の背景を丁寧にして欲しかったように思います。

が、そうするとかなり長くもなるし、きっと散漫にもなりそうなので、この作りで良かったとも思います。

MVA

ソマリア側のキャストはオーディションで、海賊側の船長も初演技らしいんですが、これがまた素晴らしくリアルで。いわゆる美男美女の出てこない映画ではあるんですが、乗組員たちの「それっぽさ」含め、とにかくキャスティングも文句なし。

でもまあ、この映画はこの人ですよね。

トム・ハンクス(リチャード・フィリップス役)

いわゆる円熟味を増した、というか。

歳を取って渋くなり、この役にはまさにこの人、というドンピシャなキャスティング。割とトム・ハンクスってどの映画もトム・ハンクスっぽくなる、ついでに言えばトム・クルーズもそうなので、勝手に自分の中では「トムジンクス」と呼んでいるんですが、今回その壁を叩き割ってくれた気がします。文句なしでございます。

余談ですが、ラストの看護師長がえらい事務的で感情がなく、それがまたすごく“複雑さ”に拍車をかけた素晴らしい演技と演出だな、と感心したんですが、なんと彼女は実際の海軍衛生兵とのことでこれまたビックリ。彼女も見どころの一つだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA