映画レビュー0768 『コンタクト』
今回はBS録画より。ちょっと長めの映画を観るかなーと思ったのでこちらをチョイス。
「メッセージ」の感想を巡っていた時に似てるよ的な話を結構目にしたので、ちょっと期待しつつ観てみました。
コンタクト
SF良し、ドラマいまいち。
将来を嘱望された研究者が、(劇中における)科学界でも望みが薄い傍流の研究と見なされている「地球外知的生命体探査(SETI)」に一生を捧げていたところついにその予兆を掴んで…というお話。ご多分に漏れず、またタイトルからもわかる通り地球外生命体との「コンタクト」を描いたSF映画になります。
主人公のエリーは幼少期に父と二人で星を見て育った経験から研究者となり、アメリカにおけるSETIの中心人物として働く毎日…ですが、最初に書いた通りSETIは科学界では主流派と見なされず、言ってみれば「単なる夢追い人」的な扱いを受けることもあってあまり居心地のいい状況ではないご様子。この辺り現実ではどうなんでしょうね。同じように夢追い人的な見方はされそうですが、それ故かなりロマンのある研究なだけに…一定数の支持は受けていそうな気はしますが。
この映画における(序盤の)SETIはこの研究に懐疑的な天文学区の権威・ドラムリンが学会のトップに君臨しているためにかなり虐げられているようで、あからさまな嫌がらせを喰らい続けます。主人公のエリーがかつてドラムリンの部下として衝突を繰り返していたことも関係している模様。
それでもへこたれずに研究を続けるエリーとその仲間たちは、ついに地球外からの“意味のある”電波を受信、解析していくことでいよいよ本当に地球外知的生命体からのコンタクトだぞ…! と盛り上がってきたものの、その手柄を横取りせんばかりにドラムリンが介入してきて…というようなお話です。あとは観てどーぞ。
この「研究成果をその研究に否定的な上司が横取りする」っていうのは今の世の中でも横行している“よくある悲しき話”なんだろうとは思いますが、しかし映画の筋としてはやっぱり少々古い感じがするのは否めません。
最近だと「オデッセイ」のように事なかれ主義的なダメ上司は出てきても、ここまであからさまに「俺の手柄」にしようとするような人間はあんまり観ない気がしますね。
なぜってそりゃあこういうのは大体フラグになっちゃうからと相場が決まっているわけで、じゃあこの映画ではどうなんだというと…割愛しますが。ちょっとその辺りに1990年代後半らしい絶妙な古臭さを感じる物語ではありました。
家族愛の部分にしてもそう。この主人公は独り身で旦那や子供はいないんですが、代わりに幼少期に死んでしまったお父さんとのエピソードが重要な役割を担います。このお父さんとのエピソードの使いっぷりにやっぱりちょっと古さと「使いやすいから便利に使ってやったぜ」的な雰囲気が感じられてちょっと引っかかる部分はありました。こればっかりは感覚の問題なのでイチャモンレベルだとは思うんですが。
ちなみにその割と重要な役割である父親を演じるのがなんとあのデヴィッド・モースということで、「基本的に後で裏切るクソ男」役が多い(ような気がする)中、貴重な良い役ということでモースウォッチャーとしては見逃せない映画と言えるでしょう。
主人公であるエリーとねんごろ(死語)になるマシュー・マコノヒー演じるパーマーも立ち位置的にそこまで大きくはないものの必要だし、というやや中途半端な感じもちょっとモヤモヤ。ただあからさまにイチャイチャってわけでもないのでコレはコレで良かったような気もします。結構珍しいタイプの恋人ポジションのような気はしました。
ただ思想を司るキャラ的に重要な役割ではあった割に物語への食い込み方が控え目にも感じられたので、やっぱりちょっとモヤモヤキャラだったなーとも思います。どっちやねん。
まあ、こういう評価からもわかる通り、あんまりこう…ビタッと「良いぞ!」とか「悪いぞ!」って言えない、いかにも7.0的な映画だったんですよね…。肝心のSF的な描写に関しては(ある意味当たり前ですが)他にない珍しさがありつつも「なるほどありそう」なお話だったので、根幹の部分については割と楽しめたとは思います。技術的にどうこうというのは当然わかりませんが、ただ話としてなるほどこういう話は有り得そうだなと思わせるギリギリのリアリティを突いてくる感じは割と好きでした。
もちろん細かい部分では違和感があったり疑問もあったりはするんですが、ただSF的な部分は結構面白かったので、となるとキャラクターの部分、人間ドラマの部分でちょっと古さを感じちゃったのが惜しかったな、と。
こういうのはもう時代の流行りだったり流れだったりもあるので、逆に言えば今「最近の流れに沿ってリアルな感じが良い」と思っている映画だって数十年経てばそこが気になってくる面もあるだろうし、こればっかりはしょうがないしフェアでもないとは思うんですが。
謎のパトロン・ハデンも作り手に都合の良いジョーカー的な使われ方が少し気になったし、SF外の構成要素(要は主要登場人物)にあまり魅力を感じられなかったのが大きかったような気はします。
とは言え地球外知的生命体との文字通り「コンタクト」モノとしては定番かつ観ておくべき映画の一本なのは事実でしょう。ゼメキスの映画なのでひどく外すことも無いと思います。惜しむらくは長い、というところでしょうか。
「インターステラー」は長さがまったく気にならない名SFだと思いますが、こっちは30分短くできたらもっと入り込めていたんじゃないかなと言う気がします。ただ冗長で眠くなるというほど長さを感じたわけでもないので、やっぱり人間ドラマの描き方の部分で少し前時代的な感覚を受けちゃったのが問題だったんでしょうね。この辺は個人の問題だと思うので、あんまり気にならない人は素直に楽しめる映画かもしれません。
このシーンがイイ!
ネタバレにならないようにボカして書きますが、終盤でケントがやってくるシーンは良いですね。ケント良い。
ココが○
上に書いた通り、SFの部分は良かったと思います。楽しめました。
ココが×
これまた上に書いた通り、ドラマの部分がちょーっと古いんですよね。流れというか…。「ああ、この感じね」ってピンときちゃうんですよね。本当に1990年代に多い気がする。こういう流れ。「どういう流れだよ」って言われても答えられないんですけどね。感覚です。雰囲気です。イキフン。
MVA
今回は迷わずこの人だなー。
ウィリアム・フィクナー(ケント・クラーク役)
エリーの同僚で視覚障害を持つ研究者。
この人もクセのある役が多いと思いますが、この映画では優秀かつ人間味のある研究者の雰囲気がとても良かったですね。