映画レビュー0775 『ドリームハウス』

3月末大量削除映画の中から選びに選んで選んだのがこの一本。ずっと観たかったんですよね。ちょっと怖いのかなぁと思って尻込みしていたんですが、配信終了でそうも言ってられないということで観ました。

ドリームハウス

Dream House
監督
脚本
デビッド・ルーカ
音楽
公開
2011年9月30日 アメリカ
上映時間
92分
製作国
アメリカ・カナダ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

ドリームハウス

出版社を早期退職し小説を書くことにしたウィル。中古で購入した家で家族仲睦まじく穏やかに過ごそうとしていた矢先、家の周りで繰り返し怪しい出来事が起こる。

なんという話でしょう…。

8.5
引越し先の中古住宅はワケアリ物件だった…?
  • 単なるホラーかと思いきや思わぬ方向に展開
  • 予想していなかった展開のせいで感情の振れ幅が大きくなる嬉しい驚き
  • 主演の二人はこの映画での共演をきっかけにご結婚

出版社を早期退職した主人公が、これからは家族との時間を大切にしながら暮らすぞってことで劇的ビフォーアフターばりに自分たちで家を改装しようと意気込んでいた中古住宅がどうやら“曰く付き”だったようで…というホラー映画。のように見せかけて実はファンタジーサスペンスでした。

結構調べるとホラーとかサイコスリラーとか怖そげなジャンル付けをされていますが(ジャケットもちょっと「シャイニング」っぽいし)、実は全然そういう映画じゃなくてですね。もっとこうなんだ! って言いたいんですがネタバレになりかねないので自重しておきますけれども、ただジャンル的には間違いなくサスペンスに近いです。なので怖いのとかグロいのが苦手な人も安心です。もっと言えば…おっとやっぱりそのジャンルの名前は言えないぜ。

主人公のウィルは優秀な編集者だったようですが、退職金も満額頂きつつの早期退職でいわゆるセミリタイア的な生活を送ることにしたんでしょう。同僚たちに見送られながら会社を去るシーンからスタート。演じるのはご存知ダニエル・クレイグですよ奥さん。横分けでいつもとはちょっと違う雰囲気。ちょっとかわいい。

家に帰ると愛する妻&二人の娘がお出迎え。奥さんを演じるのは現実でも彼の奥さんであるレイチェル・ワイズ。娘二人もかわいい…けどお姉ちゃんどっかで観たことあるな〜と思って調べたら「マイ・ブラザー」のブサイクを気にする娘ちゃんでした。全然ブサイクじゃないよ! かわいいよ! ちなみに「マイ・ブラザー」は監督も一緒でした。

そんないかにも幸せそうな家族なんですが、ある日娘が窓の外に人影を見たと怯え、気のせいだと思っていたら今度は地下室で近所のヤンキーたちが騒いでいて、「何しとんじゃー!」と怒ったところ「空き家ジャネーノ?」「住んどるわボケ!」「えー、あんな殺人事件があった家に住んでるのかよ!」ということでどうやらこの家は事故物件らしいぞ、ということがわかります。

さらに人影の件を口にすると「やつが帰ってきたんだ…」とヤンキーたちは意味深な発言とともに逃走、気になったウィルはその事件について調べ始める…というお話です。ちなみに転んでウィルに捕まった女子ヤンキーはサラ・ガドンだった模様。気品溢れる女王様のイメージだっただけに全然わからんべや。

そんなわけで序盤は「事故物件に引っ越してきた一家が怪奇現象らしきものに惑わされる」部分が中心となっていて、なるほど確かにホラーっぽい感じだな…嫌だなー怖いなーと思って観ていたんですが、中盤以降ガラッとお話が変わって行って…おっとこれ以上は言えないぜ。

上記の通り、夫婦を演じるのは現実でも夫婦のお二人なんですが、「この映画がきっかけだったのかな?」と思って軽くWikipediaのこの映画の項目を見に行ったらですね、実はちょっと見ちゃいけないネタバレ的な情報をキャッチしちゃったんですよ。「ウワーこれ観ちゃいけなかったやつだウワー」って。

ところが。

そのネタバレ部分は、普通の映画であれば割と終盤のどんでん返し的な部分で使われるであろう設定なんですが、この映画では割と早めに、中盤の辺りで明らかになります。この辺すごく「月に囚われた男」っぽいなーと思って観ていたんですが。

その中盤で明らかになる、ある事実を経てからの後半戦は、序盤とはまったく見え方が異なる物語の様相を呈してきてですね…

これが…

なんとも…

言えない!!

ただこう書くと「なんやつまらんかったんかいなあんさん」と言われそうですがそんなことはなくてですね、簡単に感想を言えば面白かったです。「そういう話なのか…!」と。ですがその話に対する感情的な感想を漏らすと興を削ぐと思うので書きません。

その中盤の(ある種の)種明かしもそうですが、その後の展開のさせ方、演出の仕方も割と他にないタイプの映画のような気はします。ずっと珍しい映画だなぁと思って観ていました。「あの映画に似てる」と思った面もあったんですが、それもまた書くと興を削いじゃうのでネタバレ項の方にお席をご用意しておきます。

ってことでもうろくに書くことが無いわけですよ。なかなかにネタバレ回避となると縛りがキツイ映画だと思います。ただ上に書いた通り、他にちょこちょこ似たエッセンスがある映画が浮かびつつも演出やらつなぎやらはあんまり観ないタイプの面白い転がし方をするお話だと思うので、サスペンス好きであれば観て損はない一本ではないかと。

なお、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズの結婚は実際この映画がきっかけだったそうで、この映画のストーリーを知るとそれはそれでなかなか素敵な顛末じゃないかな、と思います。

ネタバレハウス

もうね、悲しすぎますよこの話。なんて悲しい話なんだ、って最後の方は泣いちゃいましたからね…。こんな切ない話はない…。

で、僕はラストシーンが余計だなーと思ったんですよ。「悲劇を乗り越えて夢の作家に」的な無理矢理ハッピー要素をぶち込みました感が余計だな、って。

ただ、他の方のレビューを読んでなるほどと唸ったご意見がありまして、ラストシーンのベストセラー作家になったくだり、あれは「この映画の物語は全部この本に書いた創作で、家に帰れば家族が待ってますよ」という意味のハッピーエンドなんじゃないか、という説を書いていた人がいたんですよね。なんなら最後に家族が出迎えるシーンを期待したけど無かった、ぐらいの感じで。

さすがに最後に家族が出てきて「創作でした」はやりすぎだと思うので、仮にこの説が正しければあの終わり方はすごく良い終わり方だろうなと思いますが。話としては確かに考えるとそうなのかもしれないという気がしないでもないんですよね。「普通あんな状況で自分の経験を本に書いて出版しようと思わない」って言うご意見も確かにそうだな、と。事実起こったことだったとしていきなりベストセラーに飛ぶのは飛躍しすぎな気もするし…。

実際のところはどうなんでしょうね。どっちにしても、そういう推測の余地のある映画は良い映画だと思います。それだけ観ている方にも希望を感じさせたいぐらい悲しいお話っていうのも大きいんでしょう。

あと(エンディングの本ではなくて)映画自体の「ドリームハウス」というタイトルもですね…悲しさに拍車をかけるタイトルですごく良いなと思いました。皮肉なニュアンスに聞こえがちなキラキラしたタイトルでもありますが、実際は文字通り「その家にいるときだけ夢を見る」…家族の幻を見てしまうという意味なのかなと。それがまた悲しすぎるじゃないですか…。実際ウィルが家に入ると過去の話が進んでましたからね。それ故の「ドリームハウス」と思うと…なんとも悲しいタイトルじゃないですか…。

不満としては、終盤で奥さんの霊的なものが空気を揺らすシーンが無くても良かったんじゃないかなーと思いました。あそこで一気にファンタジー感が強まっちゃうんですよね。アレさえなければ、すべては精神疾患を患ったウィル(ピーター)の脳内で構築されたお話として整合性が取れたと思うんですが…。ただあそこで「お、奥さん…!(泣)」ってなったのも事実なんだけど。

それと一つ疑問だったのが、中盤の種明かしで「君がピーターなんだよ」と言われるシーンで奥さんに電話してるじゃないですか。あれは何だったんでしょうね。精神衰弱状態故の妄想(電話の先は無音)っていう話なのかな…。

ちなみに上に書いた似ている映画というのは「シャッター アイランド」です。あの映画も悲しいお話だっただけに余計に似ていると感じたのかもしれません。

このシーンがイイ!

終盤すごく良いシーンがあったんですが当然書けないので、差し障りの無いところで言えばお隣さんの娘さんとウィルが会話をするシーンが良かったですね。なんか。グッと来た。

ココが○

安っぽい煽りのホラー…かと思いきや全然違う展開を見せる引力が良いですね。物語としてアラがないとは言いませんが、ただ無理のない話でもあると思うし、それなりにリアリティが感じられるのも良かったと思います。

それとすごく単純なタイトルですが、すごく良いタイトルだと思いました。理由は書けないけど。

ココが×

中盤以降は話がやや込み入ってくるのでわかりづらい面はあるかもしれません。一応髪型でアピールしてくれはするんですが、それも一時的だったりするので確実ではないし。

それと「リアリティを感じられる」と言いつつもですね、一応ベースはファンタジーと言っていいものなので、そこまで現実感があるわけでもないです。一点だけ「それはやらない方が…」っていうのがあって引っかかったのも事実。それが何かは書けないけど。

MVA

隣の奥さんがナオミ・ワッツっていうのがまたすごく良いんですよね。美人だけどなんか薄幸そうな雰囲気もあって。ワケアリ感が出て良いなと。

でもまあ…順当にこの人かなぁ。

ダニエル・クレイグ(ウィル・エイテンテン役)

主人公です。それ以外のことは言えません。

他で見る彼と髪型が違うので雰囲気がだいぶ変わって見えたのが良かったですね。彼のファンは必見の映画と言って良いと思います。

あとはいろいろと大変な役ではあるんですが、しっかり応えるいい演技を見せてくれたので文句ございませんということで。

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