映画レビュー0539 『トレヴィの泉で二度目の恋を』
この前借りたDVDに予告編が入っていまして、「アパートの鍵貸します」の衝撃醒めやらぬ今のうちに時間の残酷さを味わうか、とこれまた借りてきました。
トレヴィの泉で二度目の恋を
役者に頼り過ぎ感。
ともに1950年代から活躍する現役の俳優、クリストファー・プラマーとシャーリー・マクレーン、(当時)84歳 vs 80歳の恋愛映画。ちなみに元はスペインとアルゼンチンの同名(原題)映画らしいですが、当然ながらそちらは未見です。
映画ファンならばこのキャスティングにグッと来ない人はいないんじゃないでしょうか。頑固で家から出ようとしない偏屈爺さんと虚言癖がありつつも活発で魅力的な婆さんという設定は、“老人”という一点を除けば割と珍しくないと思いますが、残念ながら見終わってみるとその“老人”、そして演じる“名優”に頼りきったなんとも微妙な映画でした。
はっきり言えば、お目当てのこの二人が主役をやっていたから観られましたが、ストーリーとしては特に取り立てて光るものがあるわけではなく、深みもないので驚くほど感情に響いて来ませんでした。もっとヒューマン寄りのラブコメっぽいものを期待していたんですが、割とストレートに恋愛モノとして展開するし、本当に設定と役者の力(魅力)に頼りきった安易なストーリーだと思います。
もしかしたら、物語のキーとして登場する映画「甘い生活」を僕が好きではないせいもあるんでしょうが、観ていて終始乗りきれなかった印象。
感情の転換点もすごくあっさりしていて気付けばくっついてる感じだし、盛り上げて盛り上げてドン! とうまく引っ張ってくれる感じがまったくなく、スルリスルリと進んで「これ終わりこうなってアレ出てくるんじゃ…」という予想を見事にトレースして終わり。
結構楽しみにしていただけにそれを裏切られた感覚が強いせいかもしれませんが、正直このレベルのストーリーでは心揺さぶられる要素は皆無です。
やっぱり最近は恋愛モノもひとヒネりふたヒネりしてくるし、そこにあえて王道を、っていうのもわかるんですが、ただやっぱり「名優同士が老人の恋愛を演じました」っていうポイントだけに頼って作った感のある内容の薄さはちょっといただけません。
二人とも好きな役者さんだし、お二人に敬意を表して若干オマケしましたが、モノとしては5.0点もあればいい方かな、と思います。うーん、残念…。
このシーンがイイ!
病院で「羨ましい老夫婦」みたいなセリフが出てくるんですが、あそこはまったく同感、良いシーンだと思います。
ココが○
クリストファー・プラマーとシャーリー・マクレーンで恋愛映画を撮ろう、というその企画意図だけは素晴らしいと思います。映画ファンへのご褒美と言っていいキャスティング。
ココが×
散々書きましたが、一番はエンディングかな…。もうバレバレ過ぎてまったく感動も感涙もしませんでした。段々途中から「あれ? これちょっと…このまま行くのか?」と不安になってくる薄さなので、そこを挽回するほどの良いエンディングをあてて欲しかった…と思ったらやっぱりね、と見事なまでにがっかりさせられました。
MVA
密かにクリストファー・プラマーの娘役、マーシャ・ゲイ・ハーデンも地味ながら好きな役者さんなんですが、この人も良かったです、と褒めつつも、さてどっちにするか…でコチラの方。
シャーリー・マクレーン(エリサ・ヘイズ役)
時は残酷だなぁ、と当初の想定通り「アパートの鍵貸します」のかわいさを思い出してはなんとも言えない気持ちになっていましたが、しかしやっぱり歳をとってもチャーミングな演技は健在。こういう「かわいいお婆ちゃん」に憧れる人も多そうです。
演技としては申し分なし。ただストーリーが…という話でした。