映画レビュー0540 『コードネーム U.N.C.L.E.』

個人的にですね、この年末から年明けにかけてひじょーに観たい映画が目白押しでございまして。

TOHOシネマズ値上げで話題のスター・ウォーズは言うまでもなく、「007 スペクター」を始め、どれも出来る限り劇場に行ってレビューしたいなと思っているわけですが、そんな中、まったくノーマークだったこの映画をたまたま知って気になったので行ってきました。

コードネーム U.N.C.L.E.

The Man from U.N.C.L.E.
監督
脚本
ライオネル・ウィグラム
ガイ・リッチー
原作
『0011ナポレオン・ソロ』
音楽
公開
2015年8月7日 イギリス
上映時間
116分
製作国
アメリカ・イギリス

コードネーム U.N.C.L.E.

舞台は冷戦下、ある組織が高性能の核弾頭を開発していることをキャッチした東西陣営は、その陰謀を潰すため、CIA・KGB合同でミッションを開始、その組織で核弾頭の開発に携わる教授の娘に接触する。

面白いのにもったいないガイ・リッチー臭。

7.5

もちろん僕は知りませんでしたが、1960年代に日本でも人気を博したアメリカのテレビドラマ「0011ナポレオン・ソロ」のリメイク映画とのことで、その頃の東西冷戦下が舞台。東西冷戦下と言えばアメリカCIAとソ連KGBはまさに犬猿の仲なわけですが、その2つの組織のそれぞれのトップエージェントがいがみ合いながらも協力して共通の敵を叩くためのミッションを進める、というスパイバディムービーと言ったところでしょうか。

CIAのトップエージェント、ナポレオン・ソロは「ナンパで手癖の悪い敏腕エージェント」。ピアース・ブロスナン時代のジェームズ・ボンドっぽい感じでしょうか。おまけにスリしまくりで犯罪歴があり、懲役を帳消しにする代わりにCIAで働かされている、というなかなか珍しい設定。

相棒のイリヤ・クリヤキンはKGBのトップエージェントで、ソロとは正反対の「堅物ストロングスタイル敏腕エージェント」。なーんかいかにもソ連KGB的なイメージのキャラクターです。

ソロもいかにもアメリカ人な感じだし、ステレオタイプなキャラクターが時代を感じる気もしますが、そこはさすがに今の時代の映画らしくその辺の古さをうまく個性に変えて楽しませてくれました。

今のスパイ映画の主流と言えば「ミッション:インポッシブル」シリーズか「007」シリーズか、って感じだと思いますが、この映画の二人はそのどっちとも少し違っていて、なんというか…あまり優秀とは思えない部分がチラホラ出てきます。もちろん優秀なんでしょうが、特にイリヤの方は感情が抑制できず、感情の赴くままに任務を危機に陥れることもあったりしてこれはちょっとどうなの…と思ったりもしそうですが、逆にそれが“主人公補正”がかかりすぎない方向に作用している気もして、僕はちょっと面白いなと思って観ていました。珍しいタイプのスパイ主人公だな、と。

そんな主人公だからか、任務も万事順調にサクサク進む…という感じではなく結構危うい感じで進んでいくので、最後までなかなか目を離せない感じで楽しめます。

もう一人の主役である、鍵を握る「教授の娘」ギャビーもこれまたなかなかキャラが立っていて、オープニングからどう見てもただの自動車整備士ではない、只者じゃないぜ感がハンパなく、ミステリアスさが上手にストーリーへの疑心暗鬼を膨らませてくれます。さらにうまく男二人のツッコミ役として機能している立ち位置もグッド。

彼女の存在、キャラクターが無かったら“ただの”バディムービーにしかならなかった気がするし、ストーリー的にもキャラクター的にも三人でバランスを取っているのがいいですね。

もちろんスパイモノは山ほどあるだけに、ストーリー的には既視感があるのは否めませんが、その中でも結構大胆な(予想を)裏切る展開があったりして、多分いろんな人が楽しめる、まさに大衆映画としての素質を備えたいい映画だと思いますが、しかし。

やっぱり不安ではあったんですよ。ガイ・リッチー監督。

でも「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」でだいぶ昇華された気がしたからまあ大丈夫かなと思ってたんです。

しかし、しかし。

もーね、本当に鼻につく「どうだ俺が監督してるんだぜ」感。無駄にオシャレだったり、めまぐるしく“絵作り”だけで見せたり。もっとサクサク進めていいだろ、ってところでもクドいほど余韻を残すシーン。

いやー、ほんとに久々にうんざりしましたね。ガイ・リッチーの「俺様アピール」。そこまでアピールしなくていいよ、ってぐらい思う存分ガイ・リッチー臭を漂わせてくれるので、彼のファンであればたまらないんでしょうが、僕のように彼の自己主張にうんざりするタイプの人には少々我慢が必要な映画だと思います。

ただ、そういう人でも「観るのが苦痛」とまでは言いません。面白かったから。でも、ガイ・リッチーでなかったら絶対もっと面白くなってたな、という気もします。まあ、彼は脚本も担当しているので、演出だけを観てそう言うのはフェアじゃないとも思いますが…。

イギリスって不思議な国ですよね。真面目で正面から立ち向かうような映画が主流かと思えば、こういうガイ・リッチーとか(同じく僕があまり好きではない)ダニー・ボイルみたいな「どうだ俺の演出カッコイイだろ」アピールがたくましい人がいたり。

やり過ぎは鼻につくだけ、だと思うんですが、僕自身この手の演出への嫌悪感が人より強いのは自覚しているので、気になる人は少ないのかもしれません。実際世間の評価も上々のようです。僕としても面白かったんですけどね。

ただ、ガイ・リッチーの「ガイ・リッチー感」がなければ、っていう残念感が勝ってしまった感じで。抑えめにすればすごく良い映画を作れる人だと思うので、さじ加減ひとつだと思うんですが。オープニングなんてすごく良かったし。上映時間の流れとともに徐々に染み出してきちゃった感じ。

ちなみにこの映画を観る目的としてかなりレアだとは思いますが、僕が観に行くのを決めた理由は「ヒュー・グラントが出てる…だと!?」でした。

観る前は彼の役どころもよくわからず、中盤まで進んでもチラッと出てくるぐらいだったので、所詮友情出演の類か…とガッカリしかけていたんですが、なんのなんの最後まで観たら「ヒュー・グラント見たさ」という意味では大満足でした。

さすがにもうかなりのオッサンになってしまいましたが、いつもの軽妙な佇まいは健在。“らしい”空気感で大層ニヤニヤさせて頂いたことをご報告させて頂き、締めと致しましょう。

このシーンがイイ!

オープニングの対決・カーチェイスシーンはテンションアゲアゲで素晴らしかったですね。タイトルロールもかっこよくて好きでした。このまま行ってくれー! と思ったのも束の間、徐々に漂うガイ・リッチー臭。無念。

それと、初日の夜にイリヤのチェスを踊りで邪魔するギャビーもグッド。笑えました。

あともう一つ、割と面白くて良いシーンで突然ヒロシがすべてをさらっていくシーンが出てくるので気をつけましょう。

ココが○

今の御時世、シリアススパイ主流の中であえて東西冷戦下に時代を戻しての「その頃っぽいスパイ映画」を今の作品として作り上げる、その感覚はとても好きです。「ああ、そうそう、こういうスパイ良いよね」みたいな。

正直、ガイ・リッチーっぽさが気にならない人にはまったく不満のない良作足り得る気がします。「豚骨臭が気にならない人には超うまいラーメンだよ」みたいな。そんな感じ。

ココが×

とは言え僕はくどいほど書いていますがガイ・リッチーの俺様アピールがうんざりなので、本当にもったいなくてもったいなくて「もっと抑えろや!!」と頭に来るぐらい嫌でした。中身がすごく良かっただけに。本当に惜しい。

MVA

まずヘンリー・カヴィル。

どうしてもまだ観たことある映画が「マン・オブ・スティール」だけなので、あのイメージからかなり離れる軽めのスパイっていうのは面白かったし、演技としても悪くなかったと思います。何より声がすごく良い。スイボーがブイシー。

相方のアーミー・ハマーは見た目的にはヘンリー・カヴィルよりもかっこよかったし、雰囲気的にもロシア人っぽくてよかったんですが、演技としてはまあ普通かな、と。

そして物語の鍵を握る女、アリシア・ヴィキャンデル。かわいいけど気が強そうで、キリッとかっこよさもあるしなかなか魅せてくれました。ということで主人公3人の中では彼女が一番だなぁ、と思いつつ今回はこの人だ!

ヒュー・グラント(アレキサンダー・ウェーバリー役)

多分に贔屓だということは理解していますが、それでも好きなんだからしょうがない。この役にキャスティングしてくれてありがとうとしか言えません。

彼のちゃんとした出番はもう終盤に近いぐらい遅いんですが、そこからまあ「ヒュー・グラントここにあり」感がたまりません。いや、多分好きじゃない人はまったく何も思わないと思うんですが。ただ、ヒュー・グラントファンとしてはもう「これこれ」って感じが最高なんですよね。

特に終盤、船長との掛け合いが最高でした。すんげー軽いの。適当な感じが。かぶせ気味の返事が最高。それをわかってサクサクつなぐガイ・リッチーの演出、ここだけは文句ありませんでした。

あと「スパイのくせに間抜けな質問だな」っていうセリフが最高。ああいうセリフを嫌味なく言える空気感、やっぱりヒュー・グラント最高です。

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