映画レビュー0863 『トランス・ワールド』

低い知名度の割になかなか評判が良さげだったので鑑賞。

ちなみにざっと調べたところ劇場公開日がわからなかったため、映画祭出展日を公開日にしています。この時点でかなりレアケースで、早い話が結構なB級映画的立ち位置っぽいですね。

トランス・ワールド

Enter Nowhere
監督
ジャック・ヘラー
脚本
ショーン・クリステンセン
ジェイソン・ドラン
出演
サラ・パクストン
ショーン・サイポス
クリストファー・デナム
音楽
ダーレン・モルゼ
公開
2011年10月22日 アメリカ
上映時間
90分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

トランス・ワールド

ある森の中にある小屋に、迷ってしまい森から出られずにいた男女3人が集まった。なぜ彼らはここにいるのか、そもそもなぜ彼らが集まったのか。そして彼らは無事、この森から脱出することができるのか…。

広げた風呂敷もしっかり畳んでくれる良質低予算サスペンス。

8.0
“出られない森”に集まった3人、なぜこの3人なのか?
  • 出口が見つからない森に偶然集まった3人の話
  • 性格もまったく違う3人ながら、どうやら必然的に集まったようで…
  • 低予算のワンシチュエーションサスペンスながらあまりそう感じさせないのがイイ

ほぼ3人でお送りする低予算っぽいワンシチュエーションサスペンス。

低予算のワンシチュエーションサスペンスっつーとどうしても屋内イメージが強いんですが、この映画は森が舞台で逆にあんまり低予算感が無いのが良いですね。言われてみれば、って感じ。

オープニングはDQNカップルがある店で強盗を働くシーンから。その後すぐこの映画の舞台である怪しい森に移り、どうも迷い込んできたらしき女性・サマンサ(キャサリン・ウォーターストン)が一つの小屋にたどり着くところに。

「これオープニングのカップルの話、なんかつながるんかな?」と思いつつ観ていると、その後同じく迷い込んできたと言うナイスガイ風のイケメン(スコット・イーストウッド)登場。お互い信用しきれない微妙な緊張感を携えつつ共に行動するようになると、今度はさらにもう一人、小屋の前に倒れる女性(サラ・パクストン)が。

なんだかんだありつつ脱出するため一緒に行動する3人、なぜ彼らはここに来たのか、なぜ脱出できないのか、そしてなぜこの3人なのか…いろんな「なぜ」を抱きつつ、果たしてどういう結末を迎えるのか…というお話です。映画が映画なのであまり詳細は書かないようにしておきましょう。

この3人のうち現在一番メジャーなのは間違いなくキャサリン・ウォーターストンだと思いますが、この映画はファンタビはもちろん、彼女の名前が売れるきっかけになった「インヒアレント・ヴァイス」よりも前の映画になるし、スコット・イーストウッドも失礼ながら「クリント・イーストウッドの息子」以上のウリがあんまりないような立ち位置だし、サラ・パクストンもあまりヒット作に恵まれている印象もないしで、この当時のキャスティングから見てもインディーズ感の強い映画っぽいですね。

ワンシチュエーションで低予算、キャスティングも「これから」の俳優さんたちを使い、アイデア勝負で作家性を認めさせてやるぜ的な映画という感じ。これ、外すと本当にクソ映画になりかねない環境なんですが、この映画はその狙いが良い方に作用したなかなかの映画だと思います。

振り返るといろいろ気になる点はありつつも、なんだかんだ嫌いじゃない。最終的には「なるほどそういう話か〜」と唸らされたし、90分という短さも相まってサクッと観られる良いサスペンスじゃないかなと思います。

序盤は結構煽り気味のシーンが多く、(安っぽい怖さオシなんじゃないか的な)嫌な予感を抱かせる映画ではあるんですが、実際は割と真っ当なお話でグロさも無いし、逆に安っぽい煽りをやめておけばもっと評価されたかもなぁというちょっともったいないぐらいの内容でした。

この手の「なぜ」がいくつも散りばめられた映画は、「まあ後でわかるんだろう」と我慢して観ていても大体は「いやあれどうなったんだよ」「あれどういう意味だよ」みたいに解消されずに終わっていって不満が残る映画が多い気がして、この映画も途中まではそのパターンじゃないかと半信半疑で観ていたんですが、途中のとあるシーンから「むっ? これはちょっと面白くなってきたな」と明確に(自分の中で)スイッチが入り、以降は「CG安っぽいなー」みたいな気になる点も若干ありつつ、それでも最終的にはなかなかの納得具合だったので、その「あれどうなったんだよ」が無いだけでも悪くなかったと思いますね。本当にそういうの気になっちゃうタイプなので。

この手の謎で惹きつけるしか無い一点勝負の映画の場合、そこって結構重要だと思うんですよ。謎を膨らませるだけ膨らませておいて最終的に拾わないでグッバイ、みたいなの最悪じゃないですか。花見客かよみたいな。ちゃんとゴミ拾って帰れよって。

この映画もそれがゼロではないと思いますが、でも大枠の部分ではちゃんと広げた風呂敷を畳んで終わらせてくれる気持ちよさがあるので、設定面での突拍子のなさみたいなファンタジー部分を除けば、確かにネット上のレビューで言われるような「隠れた良作」的な面白さがあると思います。

少なくともTSUTAYAはあのクソ忌まわしき「ディナーラッシュ」なんかよりこっちを発掘良品にするべき。言い続けますよマジで。あれ以来発掘良品は信用してないからな!!

あんまり詳しい内容を書いちゃうと面白くなくなっちゃうタイプの映画だと思うので、これ以上は控えましょう。

この手の謎膨らまし系映画は自分の中で外すことが多いだけに、意外とよく出来ていて嬉しかったですね。

ネタバレ・ワールド

僕はジョディが持っていた札束の発行年で“やってきた時代が違う”のがわかったところでスイッチ入りましたね。あそこで一気にSF感高まるじゃないですか。そこで「おっ、まじかそういう話か」ってちょっと盛り上がって。

オープニングとエンディングからもわかる通り、きっと主人公はジョディなんでしょうね。っていうかあの強盗したお店に来て金庫からご案内された人が主人公になる形というか。

店にやってきた誰かが金庫を開けた(もしくは店主を撃った)タイミングで、その開けた人物の前後の血縁が呼び出されて「キーになるイベント」の場所に放り込まれる、と。今回はそのイベントが空爆直前の森だったからこうなったけど、人によっては(エンディングのDQN女子とか)別の、その人にとってのキーになるイベントが起こる場所に転送される、と。

そんなようなことをいろいろ考えるとなかなか面白い、脳内で広がるお話だなぁと思います。

ちなみにBTTFを引用するまでもなく、未来が改変されちゃった以上「この映画に出てきた3人」は全員消滅、エンディングに出てくるジョディとサマンサはいわゆるパラレルワールドのジョディとサマンサ、ってことなんですよね。

だから一応はハッピーエンドに見えるんだけどよくよく考えるとそうとも言い切れない、そのなんとも微妙な感じもまた良いなと。

このシーンがイイ!

僕が一気に「おっ」と惹き込まれたあるシーン…なんですが、それ書いちゃうと面白くないのでネタバレ項に書きました。

シーン的にはすごく目立つシーンってわけでもないんですが、あのシーンでハッとする人は多そう。小道具の使い方がイイ。

ココが○

きちんとまとまった、閉じた話になっている点。

当たり前のようでいて、本当にこの手の映画では「ちゃんと閉じてない」映画って多いんですよね…。

「設定は良いんだけどなぁ」ってしょっちゅう言ってる気がしますが、そう言わせなかっただけでも十分合格点。

ココが×

特に序盤でちょっと煽るようなシーンが多い点。やりたくなるのはわかるんだけどすごくもったいない。

あとはリアリティが無いのも(こういう話なのでしょうがないんですが)人によっては気になるかもしれないですね。結局はファンタジーなので。

MVA

3人ともきっちりそのキャラクターらしくてとても良くてですね。キャサリン・ウォーターストンやっぱり良いなぁと思いつつ、この映画はこの人かな。

サラ・パクストン(ジョディ役)

育ちの悪いクソ女。

態度も最悪、本当に失礼で頭に来るタイプなんですが、その辺の演技がとても良かったですね。その他良い点は書くとアレなんで書きませんが、「いかにも」でやや面白みに欠けるキャサリン・ウォーターストンより役者感があったかなと。

どっちも(もっと言えばスコット・イーストウッドも)良かったんですけどね。

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