映画レビュー1410 『ゴジラ-1.0』
ちょっとここのところ休みの日はぼんやりしてたら終わる感じで更新サボってました。
さて今回のこちらの映画、正直公開当時は特に観る気もなかったんですが、さすがにここまで話題になってくると観ないわけにも行かず…アマプラに来たのを良いことに観てみることにしました。
ゴジラ-1.0
さすがによくできてはいる。
- 元特攻隊員がゴジラに翻弄されながら戦後を生きる
- 若干センシティブな設定もうまく飲み込みつつ全体的に過不足ない作り
- ゴジラ登場場面はさすがの迫力ながら出演時間の少なさに不満も
- 良くも悪くも邦画らしい作り
あらすじ
正直「アカデミー賞のおかげで持ち上げられすぎ」な予感しかなかったのであんまり期待していなかったんですが、いやいやなるほど確かによくできているなと思います。(ドラクエの一件を端から見ていたこともあり)初の山崎貴作品でかなり身構えたんですが、不満もあれど全然良かったですね。
終戦直前、特攻隊員の敷島(神木隆之介)は零戦の故障と偽り小笠原諸島の基地に降ります。要は特攻したくないわけですが、そこの隊員たちに白い目で見られつつも滞在していると、その日の夜に島の伝説で語り継がれる巨大な生物が基地を襲ってきます。そう、ゴジラ…!
零戦に搭載されている機銃を扱えるのは敷島だけ…ということでゴジラに向けて撃てと頼まれますが敷島は恐怖で撃つことができず、そのせいで島の隊員たちは一人を除いて全員死亡してしまい、生き残った橘(青木崇高)に叱責されます。
そんな深い傷を背負ったまま終戦を迎え、東京へ戻ってきた敷島は闇市で見知らぬ他人から託された赤ん坊を抱えた女性・典子(浜辺美波)と出会い、行き場のない彼女に半ば強引に家に押しかけられ、共同生活開始。羨ましいったらないですがそんなことも言ってられず、やがて新しい職を得て徐々に生活を立て直していきますが、当然ゴジラはまた登場するわけで…あとはご覧くださいまし。
ドメスティックゴジラ
国内版ゴジラとしては「シン・ゴジラ」以来7年ぶり、記念すべき30作目のゴジラ映画となるそうです。海外版も入れれば「ゴジラvsコング」以来3年ぶり。
さすがにメインストリーム(というのかわかりませんが)の「ゴジラ」らしく、海外版のようなひどい解釈のゴジラではない、真っ当なゴジラ映画であったことにまずは安堵しました。寿司みたいなもんですね。ちゃんとした寿司でよかった、みたいな。まじでKOMのゴジラは一生許さないからな!!
「一生許さない」とか熱い言葉を吐きつつも例によってさしてゴジラに詳しいわけでもなく、また思い入れも特にないというどうでもいい一般観客ではありますが、それでもやっぱり文脈として逸脱しすぎるのは「それもうゴジラじゃないだろ」と醒めてしまうのでやっぱりここは重要なところです。
伝え聞くドラクエの一件により、もしかしたらワンチャン(悪い方で)やらかす監督ではないかとヒヤヒヤしていたんですが、どうやら良い方でやらかしてくれたらしく、それによって現在の絶賛評が固まっているよと。
ただこれもある程度予想はしていたものの、その「絶賛」自体はちょっと行きすぎなのも確かで、やっぱり物語の見せ方、展開のさせ方はいかにも邦画らしいチープな演出も目立ちました。チープというかわかりやすすぎるというか。これはきっと日本の映画読解度みたいなものの問題に関わってくる話なので結構大きい話だとは思うんですが。
特に終盤の最も盛り上がるべきある展開については、その前の晩にあからさますぎるぐらいにフリを入れてくれるので「まあそうだよね」と全然盛り上がらない流れになってしまっていたのが非常に残念でした。あれは騙し討ちっぽくなってもいいからフリ無しでやっちゃって良かったと思うんだけどな…。結局事後に「こういうことがありましたよ」ってシーンも入るわけだし。
少し話は戻りますが、この映画が公開されたまさに初週ぐらいのホットな時期に、現在某Xとか呼ばれているSNSでつながった映画好きたちでタコスを食おうぜとオフ会をやったんですが、その時点ですでにこの映画を鑑賞済みだった(映画の好みとしても見方としても信頼できる)2人が口を揃えて「ゴジラ“は”良かったよ」と言っていたので、よほどドラマパートがチープなんだろうなと身構えていたんですよね。
その先入観があったせいかもしれませんが、僕としては逆にドラマも全然悪くなかったので思っていたよりよほどいい出来だなと感じました。まず入口で主人公が「元特攻隊員」だったので、この設定は結構右の方の人たちにいろいろ言われるめんどくさいものなだけに、そっちのうるさい方に迎合してヒロイックな物語になっていくんじゃないかと危惧していたんですが、むしろ「特攻できなかった元特攻隊員」としてきっちりゴジラに向き合う動機付けも納得できるものになっていて、同時に懸念していたような無駄なヒロイックさもなく、話としては真っ当だったのが良かったなと。
ゴジラの出自の文脈も含め、戦後を舞台にした“終戦やり直し”がテーマであることからも、とことん「日本作である意味」を突き詰めた物語なのかなと感じたし、むしろこの内容でよく他国でもヒットしたなと感じたぐらいある意味ドメスティックなドラマだったと思います。まあもしかしたら(すごい偏見ですが)あまり深い文脈を考えず、「ゴジラの描写がすごいね!」だけで売れたのかもしれませんが。
とは言えこれも「偏見じゃねえか」と言えないぐらいにKOMのゴジラ描写がひどすぎたので、その前例のせいで永遠に「お前らはゴジラの文脈わかってねえだろ」と言われてしまうのもやむを得ないぐらいにKOMのゴジラはクソ、というのは改めて書いておきたいと思います。ラブ注入してんじゃねぇ!(余談ですがあのシーンを「あの“ラブ注入🫶”は許せない」と怒っていたのは前述の2人のうちの1人)
加えてこの2人は「ドラマのシーンは眠くなった」とも言っていたんですが、さすがに眠くなるは言い過ぎなものの、裏を返せば「ゴジラのシーンが見どころすぎる」せいで相対的に眠く感じるのもまたやむを得ないかなというのも事実です。というかゴジラの登場時間があまりにも少ない。
この辺は若干メタ的な話になりますが、当然予算との兼ね合いもあると思われるのでやむを得ないのもわかります。わかるんですが…やっぱり「もうちょっとゴジラ見せてくれよ」というのは思いました。比率として少なすぎるのでその分ドラマの比重が重くなるし、こっちはゴジラ見たさに観てるのに出てこないシーンが延々と続いてしまうので、そこで飽きちゃう人が出ても責められないと思うんですよね。その上アカデミー賞まで受賞しちゃったようにゴジラの出来も良いわけで。
ただ思い返すと「シン・ゴジラ」も比率としては似たようなものだったような気がしないでもないあやふやな記憶なんですが、ただあっちは「蒲田くん」を始め段階踏んで楽しませてくれたりもあったので、やはりこのマイゴジの「ゴジラ成分の少なさ」はどうしてもネックになってしまう部分ではないかなと思います。すごいかわいい女優さんのAV買ったんだけど絡みが1回しかなくてがっかり、みたいな感じ。(すべてを台無しにする例)
次のレベルに行ってほしい
そんな公開当時の評判で身構えていたのが逆に良かったのか、思いの外楽しめたのはラッキーでした。
なにせ映画そのものの不安以上に監督への不安もあっただけに、逆にちゃんとしすぎてて面食らったぐらい良かったです。これがギャップ萌え…?(違うと思う)
とは言えアカデミー賞受賞後の(海外含めた)絶賛評はちょっと行き過ぎ、物語は悪くないですが演出的には邦画の域を出ていないなと思います。ただVFXはさすがに文句なしですね。
偉業を成し遂げたことは間違いなく、実際内容も良かったので、あとは「邦画らしいベタな演出」の部分をもう少し昇華できればよりレベルの高い映画になるのではないか…とクソ素人が偉そうに言っておきます。
あとは演技の部分。佐々木蔵之介がちょっとクドすぎたよね…。
このシーンがイイ!
やっぱりゴジラのシーンなんですが、一番は銀座に来襲したところでしょうか。あの絶望感すごく良かった。
ココが○
やっぱりゴジラの(略)
ココが×
何度も書いてますがもっとゴジラが見たかった。しょうがないんだけどさ…時間も予算もかかるだろうし…でも出来が良いと欲張っちゃうのも当然でしょう。
MVA
神木くんはこの撮影時も家に帰ってはFF14でモンクやってたのかと思うと胸熱ですね。
彼もちょっと力入りすぎかなとは思いましたが良かったです。が、選ぶのはこちらの方にします。
浜辺美波(大石典子役)
神木くん宅に強引に同居した女子。
初登場時は汚い身なりでわかりづらいんですが綺麗になるとマジでかわいいねっていう。この子が強引に同居してくるなんて拾いもんですよ。(言い方)
演技も割とクド目の男性陣と違って自然だったと思うし良かったですね。