映画レビュー1137 『恐怖人形』

今回は普通であれば絶対に観ないであろう映画なんですが、たまたま暇なときにみんなで観るよと言われたので参加して観ました。

こういう自分の選択肢の外にある映画が観られるのがウォッチパーティのいいところですね。ただこの映画自体が良いかどうかはまた別の話ですが…。

恐怖人形

Horror doll
監督

宮岡太郎

脚本

奥山雄太
青山悠希

原案

宮岡太郎

出演

小坂菜緒
萩原利久
黒羽麻璃央
水上京香
近藤雄介
石川瑠華
福島雪菜
黒沢あすか
粟根まこと
萩原聖人

音楽

兼松衆

公開

2019年11月15日 日本

上映時間

86分

製作国

日本

視聴環境

Netflixウォッチパーティ(iMac)

恐怖人形

突っ込んで良いのか悪いのか、突っ込みどころ多々。

6.0
賞金付きでキャンプ場に集められた面々を巨大人形が襲う!
  • お金欲しさにキャンプ場にやってきた面々、何らかのパーティが催されるらしいが…
  • 怪しすぎる管理人に見切れる人形、呑気に遊ぶヤングたちに恐怖が迫る…!
  • とにかくツッコミどころだらけで大爆笑、みんなで観るには楽しい
  • しかし展開は意外な面もあり馬鹿にできない

あらすじ

これは…なんとも評価の難しい映画と言うか…。

大真面目にサイコ・サスペンスホラーを作ろうとしているのか、それとも海外でもよくあるコメディホラーに仕上げたいのか、最後までその本意が汲み取れず悩みました。が、どっちにしても中途半端感は否めず、申し訳ありませんが「みんなでワイワイ観るには楽しいものの真面目に観る映画ではないかな」と言う結論。どちらかと言うと「プラン9」に近いジャンルかと思われます。

花のJD(今どき「花の」とか言うのか)、由梨(小坂菜緒)は幼馴染で友達以上恋人未満的な〜? 存在の真人(萩原利久)と半リア充な生活を送っておりましたが、ある日双方に「10万円差し上げますのでご参加ください」といかにも怪しい差出人不明のパーティの案内状が届き、ホイホイ参加することに決めます。

他にも同様の案内状が届いたメンバーと総勢8名で会場のキャンプ場に移動。到着早々、やたら睨み返してくる怪しさ満点の管理人(黒沢あすか)から10万円を受け取り、イヤッホーゥイ遊ぶぜーと陽キャ全開で遊ぶヤングたち&中年1人(萩原聖人)。

やがて参加者の一人が古い看板を発見、「ここ昔来たことがある」とみんなにご紹介すると、他のメンバーも同じく来たことがある場所ということが判明します。

“何らかの意図があって集められた”らしいことを察知した面々に、たまに見切れる日本人形…!

かくして血の宴が今、始まる…!

学生時代を思い出す映像

もう何から書けばいいのやら…まあ設定としてはよくあるパターンではあるかなと思います。ただそれが悪いわけではなく、ある程度は“お決まり”を踏襲しつついかにこの映画らしい“恐怖”を見せられるのか、がポイントでしょう。きっと。

そしてその恐怖こそがタイトルにもある「人形」、つまり日本人形なわけです。これまたアイテムとしてはベタですが、しかしこの映画の日本人形は一味違う。そう…巨大化するのです…!

最初は小さかった日本人形も、徐々に「大きくなってきた?」と違和感を感じた次のタイミングではすっかりチコちゃんレベルの巨大化を果たし大爆笑。急すぎるやん。

いきなりですが、ここでまったく関係のない話をします。

かつて僕が映像系の専門学校に通っていた頃、課題の一環で中華料理屋さんの取材VTRを撮影・編集してきたチームがいました。

そこはいかにも「昔ながらの町中華」と言ったお店で、その映像に登場する料理長的なおじさんは慣れた手付きでチャーハンを作っていました。

最初にお玉一杯分のご飯を中華鍋に放り込んで炒め始め、卵も入れてシャッシャッと炒めます。

次にまたお玉で傍らに置いてあるご飯をすくい、鍋に入れて炒めます。

次にまたお玉でご飯をすくい、鍋に入れて炒めます。

次にまたお玉で…と“おかわり”しながら延々と数分間もチャーハンを作り続け、最終的には中華鍋から溢れんばかりのご飯になっている映像のシュールさに段々面白くなってきてしまい、教室のあちこちからクスクス笑い声が聞こえてきたタイミングで、隣りに座っていた友達が聞いてきたんですよ。

「これさぁ、少しずつご飯が追加されていくのと、シーン切り替わってドカンといきなり大量のご飯で鍋が埋まってるのと、どっちが面白いかなぁ」

僕は悩みました。どっちも面白い。「いつまで続けるんだよwww」的な面白さのこの映像と、「うわいきなり増えたなwww」的な編集した映像。

以来、僕にとってずっとこの命題は重くのしかかり、いまだにどっちの方が面白いのか結論が出ていませんが、もう薄々お気付きのことでしょう。

そう、この映画は、このとき僕が観ることのできなかった「シーンが切り替わったらいきなり大量のご飯で鍋が埋まってる」面白さを実現してきたんですよ。いきなりの巨大化。「いきなりデケェwwww」と言う笑い。

あれから20年以上経ちましたが、僕は即座にあのときの中華料理屋さんの映像を思い出しました。そして笑いました。

今回に限っては、徐々に大きくなるよりもいきなり大きくなる方が面白いはずです。その通りに笑いました。一つの結論が出た気がしました。ありがとう、監督。

映画への愛情は感じるが圧倒的にリソースが足りてない

話をこの映画に戻しますが、これに限らずその他もいろいろとツッコミどころが満載でですね。

いきなり登場する謎のエロシーンとか。これはまあ良いでしょう。ホラー=エロ=死ぬ、はお約束ですからね。一番かわいいと思った子(石川梨華)のセクシーシーンが見られて満足です。ゾンビーバーのコートニー・パーム方式です。

しかしまあ問題はそれどころじゃないわけですよ。後半の話は書きにくいのでいちいち書きませんけども、突如としてバーター臭い曲が不自然に(しかもうっすら)流れてきたりとか、猛ダッシュしてたはずが次のシーンではピタッと止まってくれる親切設計だとか、まあその他本当に「いやいやwwww」というシーンが頻出してきて結構楽しませてくれます。それが本意なのか大真面目なのかはさっぱりわからないんですが。

ただ、作り的に監督は結構ホラー映画が好きなんだろうなと感じられて、「こういうことをやりたいんだろうな」と言うのはなんとなく伝わるし、決して「お手軽おふざけ映画」と言うわけではなく、むしろ映画への愛情が感じられる作品だったことはきちんと記しておきたいところです。

そのやり方に「もうちょっとうまく出来るでしょ」と言いたくなる根本的な力量不足は感じますが、ただ決して映画を軽く扱ったものには見えなかったので、散々ひどくて笑いはしたものの、それなりにちゃんとやろうとしているところは評価したいと思いましたね。

これはきっと監督の力量不足もあるんでしょうが、同時に予算不足も現場の経験不足辺りも存在していそうで、おそらくは監督の思い描く「こういうものにしたい」に届かせるには圧倒的に様々なリソースが足りていなかったんだろうと思います。それ故ちょくちょくおかしなシーンが出てきてしまうという。惜しい。

まとめると、「ホラー映画として観ると完成度は低いものの、笑えるのでヨシ」と言ったところでしょうか。不覚にも終盤の展開は予想外だったことも書いておきます。

一人で観るのはアレですが、まさにウォッチパーティのようにみんなで観るにはオススメです。

このシーンがイイ!

やっぱり最初に「いきなり巨大化」した人形が登場したシーンでしょうか。もうチコちゃんにしか見えなかった。

あと終盤なのでぼやかしますが、誰もが「なんでまた着てるんだよwww」と突っ込んじゃうシーンも最高です。めっちゃ笑った。

ココが○

最近ホラーはコメディに寄せているものが流行りな気がするので、その視点で言えばこの映画もその系譜に連なってそこそこいい線行っている…のかもしれません。

ココが×

逆に「ちゃんとしたホラーで怖がらせたい」のであれば大失敗も良いところで、その本意が伺いたいところ。と言うか映画観て本意がわからない時点で多分ダメなんですけどね。

まあ“怖い”、ホラーらしさとかスプラッタ感とかは期待するだけ無駄です。

MVA

この映画は、ある意味では映画初主演の小坂菜緒のアイドルムービーでもあると思われますが、その割に(と言ったら失礼ですが)毒にも薬にもならないくだらない映画でもなく楽しみどころがある分まだ良いのかなと思いますね。

彼女も初主演の割に頑張ってたしかわいいしで良かったんですが、一人異彩を放っていたこちらの方にしたいと思います。

粟根まこと(和田教授役)

呪いの研究者のおじさん。怪しさ満点。

一人オーバーな演技で気を吐き、よりコメディ感を増幅させていくある意味戦犯なんですが、ただもう強烈だったので選ばせていただきましたよ。「(人形に)触れちゃダメだ!」って言った次のシーンで部屋の中に持っていってるのも爆笑。

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