映画レビュー0300 『最強のふたり』

やー、やりました300本目。

ぜんっぜん途中も途中、最低でも500本は取り上げないと話にナランと思っているので、通過点以上でも以下でもないんですが、絶対続かないだろう(絵なんて特に)と自分自身思っていただけに、なかなか嬉しいもんです。

そして(約)300も恥ずかしい絵を描き続けてきた恥知らずっぷりに我ながらアッパレ。

相変わらず低空飛行のブログですが、僕自身が来てくれていることを把握している人も、把握していない人も、今後ともドウゾヨロシク。

さて、その記念すべき300本目は劇場で観て参りました。特に話題でも無いんだろうと高をくくって観に行ったらまさかの9割入場でびっくり。

観た日は映画の日(1日)だった、っていうのもあるんでしょうが、こういう地味そうな映画に人が入るのはなんか嬉しいですねー。

経験上、この手のフランス映画にはかなり期待しちゃうこともあって主戦場ではない劇場まで足を運んで観てきましたが、さて…。

最強のふたり

Intouchables
監督
エリック・トレダノ
脚本
エリック・トレダノ
オリヴィエ・ナカシュ
出演
オドレイ・フルーロ
アンヌ・ル・ニ
音楽
ルドヴィコ・エイナウディ
公開
2011年11月2日 フランス
上映時間
112分
製作国
フランス
視聴環境
劇場(通常スクリーン)

最強のふたり

首から下の感覚が麻痺している大富豪・フィリップは、新たな住み込みの介護人を雇うための面接をしていた。そこに“ワルガキ然”とした黒人青年・ドリスがやってきて、「就活している証拠」の記録が欲しいから適当な理由で不採用にしてくれ、と頼むのだが、ドリスの意に反して、なぜかフィリップは彼を雇うことに…。

期待通り、素敵な映画。

8.5

原題はいわゆる「アンタッチャブル」、ある種差別的な意味も込めての「触れられざる者」という感じでしょうか。

邦題では「最強のふたり」なんて激しいタイトルが充てられてますが、そこまで強烈でもなく、コメディに寄り過ぎることもなく、フランス映画らしい、適度に笑いがありつつも真面目な映画でした。

ほぼ満席に近いほどの劇場で、久々に観客たちの笑い声を聞きながら、最後はしっかりほっこり素敵な気持ちになって家路につく、映画ファンとしてはたまらない時間を過ごせましたね~。良かった。

首から下が麻痺している大富豪・フィリップは、当然のようにやや気難しい人のようで、やって来る介護人は大抵「1ヶ月以内に辞める」状態。そんな状態が続いていただけに、一度変わった男を使ってみるか…と思ったのか、ただ単に失業手当のための「就活証拠」をもらいに来ただけのガサツな男・ドリスを雇うことに決めます。

案の定、最初から文句タラタラ、おまけに困ったときに呼んでも大音量のヘッドホンでまったく聞こえてなかったりと、およそ「献身性」とはかけ離れた人物のドリス。ただ、その彼の良くも悪くも素直な生き方が、フィリップに対する差別のない、普通の友達のような接し方につながっていて、その姿勢に徐々にフィリップも心を通わせるようになり、男同士の友情を育んでいく…というお話です。

ちなみに実話が元になっているとか。

フランス映画の男の友情物語と言えば、僕はやっぱりパトリス・ルコント監督の「列車に乗った男」と「ぼくの大切なともだち」を思い出すわけですが、この2作品ほどの「フランス映画っぽさ」は無くて、良くも悪くも「普通の洋画」っぽい感じはしました。そこがきっと観やすさにもつながっているんだろうし、「普通の映画ファン」でも気軽に観られる良さになっている気がしますが、でもやっぱりところどころの“間”のとり方だったり、登場人物の距離感だったり、全体的に真面目で煽り過ぎない作りだったり、やっぱりトータルで観ると「ああ、フランス映画だな」って感じがします。

その「フランス映画らしさってなんやねん」と言われると答えに窮するのも事実なんですが、一つ思ったのは、やや不安を感じさせるような雰囲気を差しこみつつも、安易な方に逃れず、至って真っ当な流れで「いい話」にしておきながら、でもその不安感を差し込んでくれたおかげでうまく盛り上げてくれる感じというか、いくつかのエピソードを大げさすぎずに、でもしっかりそのエピソードの魅力を使ってコチラの感情に訴えかけてくる作り方のうまさっていうのは、今のアメリカ映画にはあんまり無い部分じゃないかなと思うんですよね。

それは反面、わかりにくさにもつながりかねないので、結構監督と脚本家の技量にも左右される部分があると思いますが、この映画はそのバランスがしっかり取れてるし、うまく笑いを挟むことで、感動方面に集中させ過ぎないようにしていて、そのおかげできちんと“感じる”べきところで感じられる、目線の逸らし方がすごくうまいな、と思いました。

きっとこれがアメリカ映画だと、もっとわかりやすくお涙頂戴な流れになってただろうし、わかりやすく反目する場面とかも入ってそうな気がします。勝手な想像ですが。

個々のエピソードも魅力的だし、オープニングの意味、つなぎ方も秀逸。ラストの展開も素敵でした。

ただなんとなく突き抜けた感じがなかったので、やや厳し目に8.5点にしましたが、でも映画として決定的な問題は無いと思います。

逆に入り込み過ぎる映画になっていると、この映画の良い意味での軽さがなくなるような気がします。その辺のバランス含め、こういう映画はいくらでも観られるし、観たいと思いますねー。

思ったほどコメディ過ぎることもなく、あざとい匂いもしない、優しい気持ちになれる素敵な映画だと思います。

このシーンがイイ!

いやぁ、良いシーンたくさんありましたねー。

コレ、って決めるのもなかなか難しいんですが、なんとなく「このシーン、いいな…」と思ったのが、早朝散歩の時にレストランに入った2人を、外から撮ったシーン。お店はガラガラで、2人だけで座ってるカット。なんとなくそのカットを観て、「あ、フランス映画っぽい」って感じたんですよね。なんでかよくわからないんですが。「なんかいいなー」と。

ココが○

結構深刻なテーマですが、でもうまく笑いを混ぜ込んで、すごく真っ当な友情を描いているところ。こういう映画って嫌いな人ほとんどいないと思う。

あとは“煽り”も含めて、劇伴も良かった。ひじょーに欠点の少ない映画だと思います。

ココが×

若干“男らしい”下品さはかいま見えます。会話だけですが。あんまりいないでしょうが、そういう部分が嫌いな人はダメかもしれません。

あとは相も変わらず、クスリ(マリファナ)の扱いが軽いこと。これはもう文化の違いなので仕方ないんですが、ちょっと日本人的には軽すぎるなぁ、と気になりました。

MVA

まあ、普通に考えて「最強のどっちか」って話だとは思いますが。どっちも良かったけど、こっちかなぁ。

フランソワ・クリュぜ(フィリップ役)

全編車椅子に乗ってほぼ動けない人なんですが、その分眼力がスバラシイ。「約束 ラ・プロミッセ」のミシェル・セローと同じ感じで良かった。役柄的にも、演技的にも。

おまけにいい男なんですよね。渋い顔してて。ヒゲも似合うし。嬉しそうなときは本当に嬉しそうに笑うし、すごく良かったです。

あとチラッとしか出て来なかったですが、画廊の女性がすごくかわいくて気になりました。いかにもフランス女優っぽいかわいさがあって。

にしてもレズもよく出てきますね、フランス映画。たまたまなのかもだけど。

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